たお)” の例文
当地その同論者たる江藤氏は佐賀の乱にたおれ、後藤氏は政界を去りて実業に当たり、副島氏は東京にありて高談雅話に閑日月を送る。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
武蔵にも十三歳で有馬喜兵衛という剣豪をたおしたという話から始まって、晩年六十歳頃までの逸事は相当に残っていることはいる。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが先年の震災で大破損を受け、応急手当によって今日まで余命をつなぎましたが、もう気息奄々きそくえんえん、いつたおれるかも知れません
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人々は疲労困憊こんぱいその極に達してしまって、今そこを歩いていたかと思うとただちにバッタリとたおれてその貴い生命を落すと云う事は
現代語訳 方丈記 (新字新仮名) / 鴨長明(著)
口の裡で夫人から受けた高恩を謝した。涙がまた新しく頬を伝った。夫人は急激な尿毒症に襲われ、僅か五時間のわずらいでたおれたのであった。
大島が出来る話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
目前の敵を一人ひとりたおしたので、市郎は少しく勇気を回復した。敵もこれに幾分の恐怖おそれしたか、其後そのごは石を降らさなくなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恰も、台湾生蕃せいばんの、銃丸を惜むこと生命の如く、一丸空しく発せず、発せば必ず一人をたおすに似たり。実に、思えば思う程、男らしき釣なり。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
里人さとびとからそんなにまでしたってもらいましたわたくしが、やがてやまいめにたおれましたものでございますから、そのめに一そう人気にんきたとでももうしましょうか
アテナ女神の社に眠って金のたづなを授かり、そのつげに由って飛馬の父ポセイドンにいけにえを献じ、その助力でかの馬泉水を飲みに来たところを捉え騎りて鵺をたお
右の如くにして、伊東甲子太郎がせっかくの得意、これからという時、この途中にしてたおれてしまいました。
敵をたおすにはいかなる手段方法をも用いる、うそをついてもかまわぬというは、優勝劣敗あるいは生存競争ということを読み違えていると言わなければならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
引廻の男はいて入った。準平は奥の廊下から、雨戸を蹴脱けはずして庭に出た。引廻の男はまた尾いて出た。準平は身に十四カ所のきずを負って、庭のひのきの下にたおれた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ある人この事を評して、彼はその発見せる真理のあまりに大なるためたおれたのであるというた。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
私はほっと一息ついて砂利じゃりの上にたおれた。焼けつく熱さにも私は何の感じもしなかった。
今でも部落の人々は、不衛生的な生活をなしているにかかわらず、伝染病にたおれるものが比較的少いそうである。またその生産率に於いても、彼らは普通民より多かったに相違ない。
特殊部落の人口増殖 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
王は死なないで叫んで起きた。庚娘はまたそれに切りつけた。そこで王はたおれた。
庚娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
ついに叛将はたおしたものの矢疵やきずありありと鎧に残り、楯無しの威霊を損じたため、重代の宝器に矢の立つこと家運の傾くきざしならんと、信昌公には嘆じられたが、よしみずから試みんものと
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たおれる今日の日本のわれら、その生活を自分は描きたいと思うのであった。
広場 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これたまたまもって軍旅のえいぎ、貔貅ひきゅうたんを小にするに過ぎざるのみ、なりというからず。燕王と戦うに及びて、官軍時にあるいは勝つあるも、この令あるをもって、飛箭ひせん長槍ちょうそう、燕王をたおすに至らず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
われはそもそもいかにしてかかる不敵の振舞ふるまいをなせしかを疑いぬ。見れば、わが手は確かに出刃を握れり。その出刃は確かに男の胸を刺しけるなり。胸を刺せしによりて、男はたおれたるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また槍の穂や錫杖の頭は、登山者が紀念の為に残したものか、或は異変の為にたおれて、持物だけが暴風にさえも吹き飛ばされずに残ったものか、それらも到底判然する時期はあるまいと思われる。
越中劒岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「あッ!」胸を射貫いぬかれて、大男は、もろくも、甲板にたおれてしまった。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
えてたおれた鼠の数は多かったにちがいないけれども、もともと水を泳ぐ能力をもっているのだから、何か僅かの誘導があれば、群をなして海に飛びこみ、近くに上陸するところがあればしあわせ
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
狙いを定めて放った短銃の幾発は皇嗣と妃とを同時にたおした。
二人のセルヴィヤ人 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
敗者はたおれて、そしりは必ず下流に帰し
尚お一言附け加えて置きますが、もし諸君が不明の病症でたおれた場合は御遺族の方から御一報次第参上、執刀の労をおしまない積りであります
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
正親、政忠たおれ、光則まで傷ついたと云うから、その反撃のほどが察せられる。大将達がそんな風になったので士卒等は、たちまちにためらって退き出した。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
けれど、福富平左衛門、野々村三十郎、赤座七郎右衛門、篠川兵庫ささがわひょうごなど、みな彼のたてとなってはたおれて行った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
故にこの物棲むてふ地を旅する者、必ず雄鶏を携えた。いたち芸香るうだもまたその害を受けず。鼬これと闘うて咬まれたら芸香を以てその毒を治し、また闘うてこれをたおす。
近藤一派の手にたおされたのも、暴が正を制したとは言いきれない、近藤のために死ぬものと、伊東のために死ぬものとの、意気と意気との勝敗なのだ、意気と意気との戦いなのだ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
目前の敵をたおし得た忠一は、ずほッと一息くと共に、にわかかわきを覚えたので、顔に浴びたる血の飛沫しぶきぬぐいもあえず、軒の外へひらりと駈け出して、吹溜ふきだまりの雪を手一杯にすくって飲んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
諸君と共にになっております以上は、あくまで闘争の第一線にたおれる決意をもつ者であることを声明します。ついては、即刻闘争の具体的方法について忌憚きたんない大衆的討論にうつりたいと思います
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
今やたおれぬべく覚ゆるころ、高岡より一里を隔つる立野たてのの駅に来たりぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その矢は先に立っていた者をたおした。すると後の三人がえるように怒って、剣を抜いて弓を射た者を捜しだした。万は刀をかまえて扉の後にぴったりをくッつけて、すこしも動かずに待っていた。
五通 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
脚元に小さい蜻蛉が幾つともなくたおれている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あなどりがたい志摩の腕前に万一玄蕃がたおされでもしたら、野に虎を放したも同様、その場を去らせず斬り捨てねばならぬと、大刀を側へ引き寄せて、縁先まで座を進め
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野津少将の軍が来り援けた為、形勢は逆転して、高瀬川の南で、薩将西郷小兵衛をたおすに至った。
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
一八九〇年版クックの『淡水藻序説イントロダクション・ツー・フレッシュ・ウォーター・アルゲ』第十二章に一〇六六年英国最後のサクソン王ハロルド、ノルマン人とヘスチングスに戦いたおれた、そこに雨後必ず赤くなる地あり
妙に廻り合せ好く上役が逐年ちくねんパタリ/\たおれたので後の出世が速かった。曽谷君の理論が実現した次第だけれど、本人は死んでしまったから何にもならない。津島さん独り巧いことをした。
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
古英国メルリン物語に地下の赤竜白竜相闘って城を崩し、ガイ・オヴ・ワーウィック譚にガイ竜獅と戦うを見、獅に加勢し竜をたおし獅感じてガイに随うこと忠犬のごとしとある。
敵に対する怨みも憤りも、旅路の艱難に消磨せんとすることたびたびであった。が、非業にたおれた父の無念を思い、中川家再興の重任を考えると、奮然と志を奮い起すのであった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と後ろへってどうたおれた戸川志摩は、無念ッと最後の叫びを上げたまま息絶えた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「文学士田中謙一郎君慰労会」といったように覚えている。それくらい学問は苦しいものと思われていた。謙一郎君は町会の慰労にあたいするほど勉強した所為せいか、間もなく肺病でたおれてしまった。
首席と末席 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夫人が、それから受けた激動のために発熱し、その発熱のために衰弱して、ついにはそのためにたおれるようなことがあれば、かの盗賊は形式はともかく、明らかに夫人を殺したのです。
若杉裁判長 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ある都に到ると大悪象が日々一人ずつ食う、勇士出征するも皆生き還るを得ぬ、ファッツ聴きて我一たび杼を投げて七つの蚊を平らげた腕前で、この象一疋たおすは児戯に等しと合点し
うしろから脇腹を目がけて突っこんだ槍をその死力に握られたので、桜井佐吉は、槍の柄を離して、太刀をひき抜き、一打、二打、三打——相手がたおれるやいな跳びついて首を掻いた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お延を目がけて飛びかかった刹那——ブーンと風を切って上から飛んで来た一筋の投げ槍、あッと血飛沫ちしぶきが散ったと思えば、雨龍太郎は見事胸元を突き貫かれてどうと仰向けにたおされていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)