-
トップ
>
-
李
>
-
すもゝ
李は
庭から
背戸へ
續いて、
小さな
林といつていゝくらゐ。あの、
底に
甘みを
帶びた、
美人の
白い
膚のやうな
花盛りを
忘れない。
父さんは
自分の
子供の
時分と、あの
巴且杏の
生る
時分とを、
別々にして
思ひ
出せないくらゐです。
巴且杏は
李より
大きく、
味も
李のやうに
酸くはありません。
意志は人々のうちに
良花と咲けども、雨の止まざるにより、
眞の
李惡しき實に變る 一二四—一二六
菊と一緒に果物の競進会も開かれて居るが、
李より大きい
葡萄のあるのは日本の子供に見せたい。
油のあと島田のかたと
今日知りし壁に
李の花ちりかかる
李ちる京の夕かぜ又も
泌むひととせ見たる美くしき窓
室に、
玉鳳は
鈴を
啣み、
金龍は
香を
吐けり。
窓に
挂くるもの
列錢の
青瑣なり。
素柰、
朱李、
枝撓にして
簷に
入り、
妓妾白碧、
花を
飾つて
樓上に
坐す。
殊に
夜であつた。むかし
住んだ
家は
一寸見富が
着かない。さうだらう
兩側とも
生垣つゞきで、
私の
家などは、
木戸内の
空地に
井戸を
取りまいて
李の
樹が
幾本も
茂つて
居た。
下へ
行くと
學士の
背廣が
明いくらゐ、
今を
盛と
空に
咲く。
枝も
梢も
撓に
滿ちて、
仰向いて
見上げると
屋根よりは
丈伸びた
樹が、
對に
並んで
二株あつた。
李の
時節でなし、
卯木に
非ず。
いまだと
早速千匹屋へでも
卸しさうなものを、
彼の
川柳が
言ふ、(
地女は
振りもかへらぬ
一盛り)それ、
意氣の
壯なるや、
縁日の
唐黍は
買つて
噛つても、
内で
生つた
李なんか
食ひはしない。