“李(すもゝ)” の例文
李(すもゝ)は庭(には)から背戸(せど)へ續(つゞ)いて、小(ちひ)さな林(はやし)といつていゝくらゐ。あの、底(そこ)に甘(あま)みを帶(お)びた、美人(びじん)の白(しろ)い膚(はだ)のやうな花盛(はなざか)りを忘(わす)れない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
父(とう)さんは自分(じぶん)の子供(こども)の時分(じぶん)と、あの巴且杏(はたんきやう)の生(な)る時分(じぶん)とを、別々(べつ/\)にして思(おも)ひ出(だ)せないくらゐです。巴且杏(はたんきやう)は李(すもゝ)より大(おほ)きく、味(あぢ)も李(すもゝ)のやうに酸(す)くはありません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
意志は人々のうちに良花(よきはな)と咲けども、雨の止まざるにより、眞(まこと)の李(すもゝ)惡しき實に變る 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
菊と一緒に果物の競進会も開かれて居るが、李(すもゝ)より大きい葡萄(ぶだう)のあるのは日本の子供に見せたい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
油(あぶら)のあと島田のかたと今日(けふ)知りし壁に李(すもゝ)の花ちりかかる
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
李(すもゝ)ちる京の夕かぜ又も泌(し)むひととせ見たる美くしき窓
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子、増田雅子、与謝野晶子(著)
室(しつ)に、玉鳳(ぎよくほう)は鈴(すゞ)を啣(ふく)み、金龍(きんりう)は香(かう)を吐(は)けり。窓(まど)に挂(か)くるもの列錢(れつせん)の青瑣(せいさ)なり。素(しろき)柰(からなし)、朱(あかき)李(すもゝ)、枝(えだ)撓(たわゝ)にして簷(のき)に入(い)り、妓妾(ぎせふ)白碧(はくへき)、花(はな)を飾(かざ)つて樓上(ろうじやう)に坐(ざ)す。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
殊(こと)に夜(よる)であつた。むかし住(す)んだ家(いへ)は一寸(ちよつと)見富(けんたう)が着(つ)かない。さうだらう兩側(りやうがは)とも生垣(いけがき)つゞきで、私(わたし)の家(うち)などは、木戸内(きどうち)の空地(あきち)に井戸(ゐど)を取(と)りまいて李(すもゝ)の樹(き)が幾本(いくほん)も茂(しげ)つて居(ゐ)た。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
下(した)へ行(ゆ)くと學士(がくし)の背廣(せびろ)が明(あかる)いくらゐ、今(いま)を盛(さかり)と空(そら)に咲(さ)く。枝(えだ)も梢(こずゑ)も撓(たわゝ)に滿(み)ちて、仰向(あをむ)いて見上(みあ)げると屋根(やね)よりは丈(たけ)伸(の)びた樹(き)が、對(つゐ)に並(なら)んで二株(ふたかぶ)あつた。李(すもゝ)の時節(じせつ)でなし、卯木(うつぎ)に非(あら)ず。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
いまだと早速(さつそく)千匹屋(せんびきや)へでも卸(おろ)しさうなものを、彼(か)の川柳(せんりう)が言(い)ふ、(地女(ぢをんな)は振(ふ)りもかへらぬ一盛(ひとさか)り)それ、意氣(いき)の壯(さかん)なるや、縁日(えんにち)の唐黍(たうきび)は買(か)つて噛(かじ)つても、内(うち)で生(な)つた李(すもゝ)なんか食(く)ひはしない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)