晩食ばんめし)” の例文
きよんで、ぜんせとめいずると、きよこまつた顏付かほつきをして、まだなん用意ようい出來できてゐないとこたへた。成程なるほど晩食ばんめしにはすこがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
先日欧米漫遊に出かけて往つた京都大学の内田銀蔵博士が、出発ぜんのある日の事、晩食ばんめし卓子テエブルで夫人を相手に頻りと洋行の面白さを話してゐた。
けれども、もっと皿数の多い、従ってもっと楽しかるべき晩食ばんめしになると、彼は殆ど精神的な疲労さえ覚えた、猶悪いことには生憎これが降誕祭の晩ではないか。
或る日 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
まかないの食わせる晩食ばんめしあじわおうとして、二人は連立って食堂の方へ行った。黙し勝な捨吉は多勢の青年の間に腰掛けて、あの繁子に図らず遭遇でっくわしたことを思出しつつ食った。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
宿の主人は讃岐さぬきの人で、晩食ばんめしの給仕に出た女中は愛知の者であった。隣室となりまには、先刻さっき馬を頼んで居た北見の農場に帰る男が、客と碁をうって居る。按摩あんまの笛が大道を流して通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二度とも鎌倉のある病家びょうかへ往診に来たついでだという事であった。二度目の時竜子は母と先生と三人して海水を浴びに行った。晩食ばんめしをも一緒にすましてから先生は最終列車で東京へ帰る。
寐顔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「今日は吉川さんといっしょに食堂で晩食ばんめしを食べる事になってるんだよ。知ってるかね。そら吉川もあすこへ来ているだろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と好きな仏蘭西語で晩食ばんめしの事を考へてゐたところだつた。本野子は沢庵漬と武士道との外は、どんな仏蘭西語をでも知つてゐて、それで物を考へるといふ風な人だつた。
もなく三四郎は八畳敷の書斎の真中まんなかで小さい膳を控へて、晩食ばんめしを食つた。膳の上を見ると、主人の言葉にたがはず、かのひめいちがいてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのホフマンが(無論大人になつてからの事だ)ある時、きつけの料理屋で晩食ばんめしを食つた。
なるほど晩食ばんめしには少し間があった。宗助は楽々と火鉢のそば胡坐あぐらいて、大根のこうものみながら湯漬ゆづけを四杯ほどつづけざまにき込んだ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
トオマス嬢はある日の夕方ゆふかた美しく刈込まれた学校の校庭カムパスを散歩してゐた。晩食ばんめし消化こなれのいゝ物でうまく食べたし、新調のくつ繊細きやしやな足の裏で軽く鳴つてゐるので、女博士をんなはかせはすつかりいい気持になつた。
二人が風に耳をそばだてていると、下女が風呂の案内に来た。それから晩食ばんめしを食うかと聞いた。自分は晩食などを欲しいと思う気になれなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分は今に長蔵さんが恰好かっこうな所を見つけて、晩食ばんめしをしたために自分を連れ込む事と自信して、気を永く辛抱しながら、長い町を北へ北へと下って行った。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もうすこしのことで、その安井やすゐおな家主やぬしいへ同時どうじまねかれて、となあはせか、むかあはせにすわ運命うんめいにならうとは、今夜こんや晩食ばんめしすままでゆめにもおもけなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は晩食ばんめしはずに、すぐ又おもてへ出た。五軒町から江戸川のへりつたつて、かはむかふへ越した時は、先刻さつき散歩からの帰りの様に精神の困憊を感じてゐなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助は晩食ばんめしも食わずに、すぐ又表へ出た。五軒町から江戸川のへりを伝って、河を向うへ越した時は、先刻さっき散歩からの帰りの様に精神の困憊こんぱいを感じていなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして晩食ばんめしの時刻になって、細君から起されるまでは、首を切られた人のように何事も知らなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼が暗い所から出て、晩食ばんめしぜんに着いた時は、小六も六畳から出て来て、兄の向うにすわった。御米は忙しいので、つい忘れたと云って、座敷の戸をめに立った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かれくらところからて、晩食ばんめしぜんいたときは、小六ころくも六でふからて、あにむかふにすわつた。御米およねいそがしいので、ついわすれたとつて、座敷ざしきめにつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
晩食ばんめしの時、丸善から小包が届いた。はしいて開けて見ると、余程前に外国へ注文した二三の新刊書であった。代助はそれをわきの下に抱え込んで、書斎へ帰った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もう少しの事で、その安井と同じ家主の家へ同時に招かれて、隣り合せか、向い合せに坐る運命になろうとは、今夜晩食ばんめしを済ますまで、夢にも思いがけなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
晩食ばんめしとき、丸善から小包こづゝみとゞいた。はしいてけて見ると、余程前に外国へ注文した二三の新刊書であつた。代助はそれをわきしたかゝんで、書斎へ帰つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
昨夕は川崎造船所の須田君すだくんからいっしょに晩食ばんめしでも食おうと云う案内があったが、例のごとく腹が痛むので、残念ながら辞退して、寝室で肉汁ソップを飲んで寝てしまった。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はまた先生夫婦の事をおもい浮べた。ことに二、三日前晩食ばんめしに呼ばれた時の会話をおもい出した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
晩食ばんめしを食って行けと云うのを学校の下調があると云って辞退して誠太郎は帰った。帰る前に
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
晩食ばんめしつてけと云ふのを学校の下調があると云つて辞退して誠太郎は帰つた。帰る前に
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
袴を着けて、与次郎をさそひに、西片町へ行く。勝手ぐちから這入ると、茶のに、広田先生が小さな食卓を控へて、晩食ばんめしを食つてゐた。そばに与次郎がかしこまつて御給仕をしてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はかまを着けて、与次郎を誘いに、西片町へ行く。勝手口からはいると、茶の間に、広田先生が小さな食卓を控えて、晩食ばんめしを食っていた。そばに与次郎がかしこまってお給仕をしている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不思議に思ったのは、宿へ着いた時の取次も、晩食ばんめしの給仕も、湯壺ゆつぼへの案内も、床を敷く面倒も、ことごとくこの小女一人で弁じている。それで口は滅多めったにきかぬ。と云うて、田舎染いなかじみてもおらぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次に大通りから細い横町へまがつて、ひらと云ふ看板のある料理屋へがつて、晩食ばんめしを食つて酒を呑んだ。其所そこの下女はみんな京都弁を使ふ。甚だ纏綿てんめんしてゐる。表へ出た与次郎は赤い顔をして、又
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仕方がないから晩食ばんめしを済ましてその晩はそれぎり寝る事にした。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やがて晩食ばんめしの食卓でみんなが顔を合わせる時刻が来ました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)