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散々
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ちりぢり
ふりがな文庫
“
散々
(
ちりぢり
)” の例文
一門は
散々
(
ちりぢり
)
だし、義朝様始め、その後、縁につながる奴等は、毎日のように河原で首斬られるし——いやもう生きた空はなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
七時になるとプラスビイユの連中はアンリ・マルタン街の方へ
散々
(
ちりぢり
)
になった。するとまもなく邸の右側の小門が開いてドーブレクが出て来た。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
御大
(
おんたい
)
はあの通り苦しんでいる、我々はみな
散々
(
ちりぢり
)
バラバラになっているのに、ツイぞ今まで、福はどうしているかと、お見舞にあずかった
例
(
ためし
)
がない
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
乱箱
(
みだればこ
)
に
畳
(
たた
)
んであった着物を無造作に
引摺出
(
ひきずりだ
)
して、上着だけ
引剥
(
ひっぱ
)
いで
着込
(
きこ
)
んだ
証拠
(
しょうこ
)
に、
襦袢
(
じゅばん
)
も羽織も
床
(
とこ
)
の
間
(
ま
)
を
辷
(
すべ
)
って、
坐蒲団
(
すわりぶとん
)
の
傍
(
わき
)
まで
散々
(
ちりぢり
)
のしだらなさ。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それはほんの
寸刻前
(
いましがた
)
のことで、今はもうこの店の間には、捕り方も湯治客もいなかった。捕り方は奥へ走り込み、湯治客たちは
散々
(
ちりぢり
)
に逃げたからであった。
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
総隊は、さて列を解き
散々
(
ちりぢり
)
となって所定の位置に着くと、第一の牛が放される。牛は暗闇から急に
眩
(
めくら
)
むような明るい砂地に引き出されてはなはだ当惑の
体
(
てい
)
。
ノンシャラン道中記:06 乱視の奈翁 ――アルル牛角力の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彰義隊は苦戦奮闘したけれども、とうとう勝てず、
散々
(
ちりぢり
)
に落ちて行き、昼過ぎには
戦
(
いくさ
)
が
歇
(
や
)
みました。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
その船
行方
(
ゆくえ
)
なくなりて
後
(
のち
)
は、家に残る人も
散々
(
ちりぢり
)
になりぬるより、絶えて人の住むことなきを、この男のきのうここに入りて、
漸
(
やや
)
して帰りしを
奇
(
あや
)
しとてこの
漆師
(
ぬし
)
の
老
(
おじ
)
が申されし
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
一、上野介殿十分に討取候とも、
銘々
(
めいめい
)
一命
遁
(
のがる
)
べき覚悟これなき上は、一同に申合せ、
散々
(
ちりぢり
)
に
罷成
(
まかりなり
)
申まじく候。
手負
(
ておい
)
の者これ有においては、互に
引懸
(
ひっかけ
)
助け合い、その場へ集申べきこと。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
騒ぎ
疲
(
くた
)
ぶれて
衆人
(
みんな
)
散々
(
ちりぢり
)
に我家へと帰り去り、僕は一人桂の
宅
(
うち
)
に立寄った。黙って二階へ上がってみると、正作は「テーブル」に向かい
椅子
(
いす
)
に腰をかけて、一心になって何か読んでいる。
非凡なる凡人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
此の家三とせばかり
前
(
さき
)
までは、
村主
(
すぐり
)
の何某といふ人の、
一八九
賑
(
にぎ
)
はしくて住み
侍
(
はべ
)
るが、
一九〇
筑紫
(
つくし
)
に
商
(
あき
)
物
積
(
つ
)
みてくだりし、其の船
行方
(
ゆくへ
)
なくなりて後は、家に残る人も
散々
(
ちりぢり
)
になりぬるより
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
三年の月日を姉と呼び妹と呼んで一棟の寄宿舎に
起臥
(
おきふし
)
を共にした間柄、校門を辞して
散々
(
ちりぢり
)
に任地に就いてからの一年半の
間
(
うち
)
に、身に心に変化のあつた人も多からうが、さて相共に顔を合せては
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
浄音寺から水門尻へわたる捕手明り半円の灯の陣は、今、三枚橋と下谷の二手へ列を乱して、吹かるる螢の如く
散々
(
ちりぢり
)
に追って行きます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
散々
(
ちりぢり
)
バラバラ逃げ去ってしまったということでございますね、どこへ行ってもその評判で持ちきりでございますよ。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
……昔は同じ夜働き、三甚内と謳われた我ら、今は
散々
(
ちりぢり
)
バラバラの、目明しもあれは女郎屋もある。
三甚内
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
果ては人波に押され
揉
(
も
)
まれしている中に三人は
散々
(
ちりぢり
)
バラバラになってしまいました。
幕末維新懐古談:14 猛火の中の私たち
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
時しも一面の
薄霞
(
うすがすみ
)
に、処々
艶
(
つや
)
あるよう、月の影に、雨戸は
寂
(
しん
)
と
連
(
つらな
)
って、朝顔の葉を吹く風に、さっと乱れて、鼻紙がちらちらと、
蓮歩
(
れんぽ
)
のあとのここかしこ、夫人をしとうて
散々
(
ちりぢり
)
なり。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の妻子、老少を始め、糜竺、糜芳、趙雲、簡雍そのほかの将士はみな何処で別れてしまったか、ことごとく
散々
(
ちりぢり
)
になっていたのである。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
往来にある屍体は、田の中へ叩き込み、そうして、六七名の者は、そのまま
散々
(
ちりぢり
)
に姿を隠してしまいました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こうしてほとんど小半刻あまり、人と猛獣との格闘が雪の山路で行われたが、白毛を冠った狼が、若者の太刀下に
斃
(
たお
)
れると同時に狼の群は山奥を目掛けて
散々
(
ちりぢり
)
に散って見えなくなった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
あとは
散々
(
ちりぢり
)
である。代診を養子に取立ててあったのが、成上りのその
肥満女
(
ふとっちょ
)
と、
家蔵
(
いえくら
)
を売って行方知れず、……下男下女、薬局の
輩
(
ともがら
)
まで。勝手に
掴
(
つか
)
み取りの、
梟
(
ふくろう
)
に枯葉で散り散りばらばら。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
麾下
(
きか
)
三軍の兵は、めどを失い、
散々
(
ちりぢり
)
逃げ帰りもしたろうが、彼とすれば「何でおめおめ、この面さげて都へ」という感慨だろう。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その前後に神尾に召使われたものは
散々
(
ちりぢり
)
になって、いつか知らぬうちに神尾家は全く甲府から没落してしまい、
躑躅
(
つつじ
)
ヶ
崎
(
さき
)
の古屋敷も売り物に出てしまいました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
六
(
む
)
ツになり、
散々
(
ちりぢり
)
にちらめいて、
忽
(
たちま
)
ち
算
(
さん
)
無
(
な
)
く、
其
(
そ
)
の
紅
(
くれない
)
となく、紫となく、緑となく、あらゆる色が
入乱
(
いりみだ
)
れて、上になり、下になり、右へ飛ぶかと思ふと左へ
躍
(
おど
)
つて、前後に
飜
(
ひるがえ
)
り、また飜つて
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
敵は頑強に手向かったが間もなく
散々
(
ちりぢり
)
に逃げてしまった。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かくて味方とも
散々
(
ちりぢり
)
にわかれて後、義経の
足跡
(
そくせき
)
は、四天王寺までは見た者もあるが、そこを
立退
(
たちの
)
いた先は、まったく
踪跡
(
そうせき
)
を
晦
(
くら
)
ましてしまった。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いよいよ、これらの一味の者が
散々
(
ちりぢり
)
になって、或る者は伊勢路へ、或る者は紀州領へ、或る者は大阪方面を指して、さまざまに姿を変えて落ちた後のことであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
振返ると、まだそこに、掃掛けて
廃
(
よ
)
したように、
蒼
(
あお
)
きが黒く
散々
(
ちりぢり
)
である。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「四方に
散々
(
ちりぢり
)
に散っている友船を
悉
(
ことごと
)
く集めねばならぬ」
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
で、常から睨まれていた山手組は、否応なく十手の雨の的となって、たちまち二、三人はそこに召捕られ、残る者は皆
散々
(
ちりぢり
)
に逃げ失せてしまった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十文字に攻めたりける、四郎左近太夫
大勢
(
たいぜい
)
なりと雖も、一時に破られて
散々
(
ちりぢり
)
に、鎌倉をさして
引退
(
ひきしりぞ
)
く
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
散々
(
ちりぢり
)
になった中に、しなやかに
肱
(
ひじ
)
をついて新聞を読む後姿。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いや金吾のみならず、あの関所の人数が暴風のように千鳥ヶ浜を襲った後は、みな
散々
(
ちりぢり
)
ばらばらになッて、八方へ敗走せざるを得なかったでしょう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
散々
(
ちりぢり
)
になって、このあたりの村々で亡くなった、それを神に祭って「
后
(
きさき
)
の
宮
(
みや
)
」と
崇
(
あが
)
めてあること、帝が
崩御
(
ほうぎょ
)
あそばした時、神となって飛ばせ給うところの山を「
天子
(
てんし
)
ヶ
岳
(
たけ
)
」と呼び奉ること
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蜘蛛の子は、糸を切られて、驚いて
散々
(
ちりぢり
)
なり。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「何をいうかご家老。われわれ宿将たちが、
散々
(
ちりぢり
)
に主君のお側を離れてよいものか、われらは城門と君側を固く守る。姫路の急援には他の人があろう」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お君が入って来た軽業の一座は、あれから
散々
(
ちりぢり
)
になってしまって、またも旅廻りをしているか、江戸へ帰ったか、それさえ
消息
(
たより
)
がないということで、お君は
落胆
(
がっかり
)
しました。兵馬も困りました。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、それは、ここにいる者のすべての
希
(
ねが
)
いだったが、頼朝も、他日を期して別れてくれと云い渡したので、人々は、やがて
散々
(
ちりぢり
)
に、思い思いに、落ちて行くしかなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帰ってゆく百姓たちも、声をかけ、礼拝して、
散々
(
ちりぢり
)
に、
宵暗
(
よいやみ
)
の中へ消えて行く。と——そこへ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
安兵衛の家にも、宵から討入りの祝宴があり、やがて、それの片づく頃には、
矢倉
(
やのくら
)
に集まった人々や、その他、
散々
(
ちりぢり
)
に今宵を待っていた
輩
(
ともがら
)
が後から後からとここへ来て落ち合っていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちに、わしを追いかけて来た賊が、反対にまたここへ、
散々
(
ちりぢり
)
に逃げて来るにちがいない。その時は、お前たちがわっと声をあげ、不意に横から衝け、足を払え、真っ向を
撲
(
なぐ
)
りつけろ。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
元の岩井一座なら、とうに厚木か四日市で
散々
(
ちりぢり
)
になっている一座じゃないか。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
おたがいに明るい話題を持って会おうじゃないかと約束して
散々
(
ちりぢり
)
に分れた。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、身を伏せ、やがて
散々
(
ちりぢり
)
になって来る賊を見ると、再び、わっと包んで
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それにゃあ
先
(
ま
)
ず、今度の変事の
経緯
(
いきさつ
)
からお話し申さなくちゃお分りになりますめえが、実は貴方が小野の道場へ行ってから、生不動
一
(
ひと
)
まきが
散々
(
ちりぢり
)
ばらばらになるような大変が起ったのでごぜえます
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
村重もまた、毎日、
散々
(
ちりぢり
)
に脱軍する部下を恨むこともならなかった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『いいえ、それは、この身から云うことじゃ。主従の縁も、はや薄らいで、
散々
(
ちりぢり
)
に、行方も知らぬ人すらあるに——いやそうした事が世の常なのに——。内蔵助、そなたとは、まだ、主従と思うて居りますぞ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ちょうどよい。われらも、
散々
(
ちりぢり
)
に参りましょう」
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
散
常用漢字
小4
部首:⽁
12画
々
3画
“散々”で始まる語句
散々原
散々腹
散々手古摺