)” の例文
「俺は今日浅草の観音様へ行ったのさ。思い切りお賽銭さいせんをあげて、半日拝んだ揚句、この縁談をうらなうつもりで御神籤おみくじいた——」
この互いにからみ合っている二匹の白猫は私をしてほしいままな男女の痴態を幻想させる。それからはてしのない快楽を私はき出すことが出来る。……
交尾 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
その一と包みを念のためにき出すと、それは可なりの目方があって、なんだか小砂利こじゃりでも包んであるかのように感じられた。
半七捕物帳:28 雪達磨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この魚に就いて書かれてある山海経せんがいきょう中の一章をいてみる=状如鯉魚、魚身而鳥翼、蒼文而首赤喙、常行西海、遊於東海、以海飛、其音如鶏鸞。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここに風邪かぜを引いた人があるとすると、その人の生涯しょうがいを通じて、風邪を引いた部分だけをいて書くのですから
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あのまま肩へ手をかけて肉をがすようにすと胸のき肉と称する処がともに離れて手の方へ着いて来ます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「胸算用はやめて、まず、頭に浮んだ一筋ずつを言って見給え、そうして、一筋ずつき出して、抽き尽した後に寄算をしてみれば容易たやすくしてくわしい」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仕事中我々は意識して俳優に何かをつけ加えることもあるが、この仕事の本質的な部分はつけ加えることではなく、き出すために費される手続きである。
演技指導論草案 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
彼をはじめとして、暗殺のくじいて別れ別れになった五ツ組の者は、その後、各〻目ざす方角へ向って、みな相応な飛躍をやっているだろうと思われる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしはもう、ドキドキしながら、まるで富籤とみくじでもく様な気持で、ソロソロと歩き出した。そして、穴蔵を半周したかと思う頃、冷い金属の棒が手に触れた。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
いい加減に述べて、引き出しをいて、たちまち彼奴かやつの眼前へ打ちかえすと、無数の小銭が八方へ転がり走る。
そこで、先ずわれ/\は、最初に自分の感じをき出す文字を、あれこれと選択しつゝ紙に書いてみる。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれほどの壮図を裏づけるだけの動機をこれらの言葉からき出すことは到底できない相談であろう。
葉と同じかぶから花茎かけいいて花が咲くのだが、花は茎頂けいちょうに一りんき、側方そくほうに向こうて開いている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
も一つくと階下したは外の先生の出る画室アトリエで、朝の生徒が三十人程一人の男のモデルの裸を囲んで画架を立てて居る。引返して二階へあがつた。其処そこがロオランスの画室アトリエだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
お蔭で妙子は前より一層自由気儘きままな境遇に置かれているのであったが、それだけに、雪子に貧乏くじかせて自分ひとりうまいことをしているような、済まない気がしていたので
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
文芸の批評は単に作家の為に方角を示すのみならず、我々の生命に深さと新しさとをき出して来ねばならぬ。その上、我々の生活の上に、進んだ型と、普通の様式とを示さねば、意義がない。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
事務長の置き忘れて行ったパイプや帳簿のようなものは丁寧にしに隠した。古藤ことうが木村と自分とにあてて書いた二通の手紙を取り出して、古藤がしておいたように、まくらの下に差しこんだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
人間関係の調整と協同という側面だけは、たしかに政治と似たところがないではないが、それだからといって今度はその一側面だけをき出して、それが政治だというのは、思考の遊戯ゆうぎにすぎない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
私は、米国の辻馬車屋がするように、彼等もまた揃って私の方に馳けつけるかなと思っていたが、事実はそれに反し、一人がしゃがんで長さの異った麦藁を四本ひろい、そしてくじくのであった。
われは兜兒かくしの中に猶盾銀たてぎん二つありしを記したり。而るに我手に觸れたるは、重みある財布なりき。き出して見れば、手組てあみの女ものなるが、その色は曾てアヌンチヤタが媼の手にありしものに似たり。
一番長いのをいたものが、金の使に立つといふ定めになつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「おいき出しの銃はだいじょうぶか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
柔和にゅうわの心は相手の柔和の心をき出す
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
之をいて すでいとぐちを見る
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「俺は今月淺草の觀音樣へ行つたのさ。思ひ切りお賽錢さいせんをあげて、半日拜んだ揚句、この縁談をうらなふつもりで御神籤おみくじいた——」
女は座席にくと悠々小田島のシガレットケースから煙草たばこき出してふかし始めた。そして胡散臭うさんくさそうに女を見乍らあつらえを聞く給仕男へ横柄に
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
横にころがして貝のなかを覗くと、奥にはなにか紙のようなものが押し込んであるらしいので、すぐにき出してあらためると、それはたしかに百両包みであった。
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
骨を截るのでありません、両方から合せてある骨を離すのです。骨が離れると肉も一緒に離れます。そこで料理人は胸の肉へたてに庖丁を入れて肩の処をきました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
(この折半という所に値打がある。相手方も大枚たいまいのお金を支出するのだ)二度目からは同じ相手方を選ぶとも、新らしいくじいて見るとも、そこは各自の自由である。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
水仙すいせんの花は早春に咲く。すなわち地中の球根きゅうこん(球根は俗言ぞくげんで正しくいえば襲重鱗茎しゅうちょうりんけい)から、葉ととも花茎かけい(植物学上の語でいえばてい)をいて直立し、茎頂けいちょうに数花をけて横に向かっている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たった一人貧乏鬮びんぼうくじいたのんお梅どんで、「そんなことになってたのんに、お前附いてながら主人に知らさんいう法あるもんか」いわれて、ひま出されてしもて、えらアい私ら恨んでて、——そら
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私はその晩の事を記憶のうちからき抜いてここへくわしく書いた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頻りに良人に対して親身や情味を欲した。始めは有頂天になって、こりゃくじき当てたと思った。しかし
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もつとも御神籤所で訊くと、奧方のいたお神籤は凶でなくて吉だつたさうで、少し變ぢやありませんか
その内から比較的重要でない書類をき出して、破り捨て忘れ去ることが彼の最も大きな仕事の一つとなっていた。でなければ、更に重要な新らしい書類の入れ場所がないからである。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
カキツバタは水辺、ならびに湿地しっち宿根草しゅっこんそうで、この属中一番鮮美せんびな紫花を開くものである。葉は叢生そうせいし、鮮緑色せんりょくしょくはば広く、扇形せんけい排列はいれつしている。初夏しょかこう葉中ようちゅうからくきいて茎梢けいしょうに花をける。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
通俗音楽の中から気高い良さをき出すことと、難しいものを一般人の趣味に引き下げて聴かせてくれるという二つの違った方面に対して、不思議な才能を恵まれている。
壁虎やもりが鳴く、夜鳥が啼く。私にも何となく甘苦い哀愁がき出されて、ふとそれがいつか知らぬ間に海の上を渡っている若い店員にふらふらと寄って行きそうなのに気がつくと
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
通り一ぺんの形容詞けいようしで片付けられる種類の女ではなく、人間の女性から五濁五惡の血肉をき去つてその代りに、天人の玉の乳鉢にゆうばちで煉つた、眞珠の露を入れ換へたと言つた感じです。
しかし、彼女が彼女に出来なくて自分にさせようとしていることなぞは、彼女とて自分とて、またいかに運の籤のよきものをいた人間とて、現実では出来ない相談のものなのではあるまいか。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「その通りだ。幇間の善八は飛んだ貧乏くじいて、利三郎の道具になつたのだよ」
しかし、彼女が彼女に出来なくて自分にさせようとしていることなぞは、彼女とて自分とて、またいかに運の籤のよきものをいた人間とて、現実では出来ない相談のものなのではあるまいか。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
従ってシゲティーの一枚物から、代表作をき出すことは甚だむずかしい。
生れて始めての極度の緊張感を彼からき出した。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
生れて始めての極度の緊張感を彼からき出した。
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)