手懸てがか)” の例文
それから白山から原町、林町のへんをぐるぐる廻って歩いたがやはり何らの手懸てがかりもない。その晩は疲労のため寝る事だけはよく寝た。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし別に手懸てがかりになるようなものも見えません。台をして上の方もよく見ました。だんだんと反対の側を下の方へ見て行きましたが
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たつた一人ひとりきりでくらしていたというのだからそういう特徴とくちょうから判断はんだんしてみて、捜査そうさ手懸てがかりは、かえつてつけやすいほどのものであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
調べれば調べるほど、いよいよ混沌として、手懸てがかりがつかめぬ。厳密な検査を施してみたが、くび飾りの偽物にせものからは何の異なった指紋も現れぬ。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「うム、それは疑問であるが、何となく予感がする——お蝶のことが分らねば、夜光の短刀の手懸てがかりでもありそうな……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
救いにきたった人々に仔細わけを話して、七兵衛も共々に其処そこらを尋ね廻ったが、何分にも暗黒くらがりと云い、四辺あたりには森が多いので、更に何の手懸てがかりも無かった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はじめ村中のこらず存じ申さずとのこたへなれば少しも手懸てがかりはなきに次右衞門の思ふ樣是は村中申合まをしあはせ掛り合を恐れて斯樣かやうに申立るならんとせきあらため威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「昨日一日必死の探索をいたしたが、誰の仕業ともわからず、何處へ持去られたものか手懸てがかりもない、——恥を忍んでお願ひに參つたのは斯ういふわけだ」
現在はるほど夢に近いかすかな手懸てがかりではあろうが、ただ試みに心づいたことを述べておくと、宮崎県の西端、霧島山きりしまやまふもと日向ひゅうが真幸郷まさきごうの小さな或る部落では
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
多くの場合、二人が別れる時に言い交わす、次の逢う瀬の打合わせが、彼の尾行の手懸てがかりとなった。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが、母と弟の消息は、ほんの手懸てがかりさえつかめない。一体あれだけの人間が何処へ行ってしまったのだろう。翌日も、又その翌日も彼は血走った眼をして捜し歩いた。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
たゞこゝひとつの研究けんきゆう手懸てがかりが出來できたといふのは、地球ちきゆう表面ひようめんちかくからはふつた斥候せつこう
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それどころか、庸三は今葉子の手懸てがかりを一色に求めようとさえしているのだった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、何だか手懸てがかりがありさうに言つた。
探偵の手懸てがか
あるいは寂光院事件の手懸てがかりが潜伏していそうだ。白状して云うと、余はその時浩さんの事も、御母さんの事も考えていなかった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
早いところ地上との通信連絡を回復しておかないと、気球がどこへ流れていったか、皆目かいもく手懸てがかりがなくなるおそれがあるのである。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鎌倉勢は、その詮議せんぎに、手をやいた。翻弄ほんろうされているようだった。躍起やっきになって、探しぬいたが、手懸てがかりもない。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
委敷くはしく申立且昌次郎の鼻の下にくろ黒子ほくろありと云ければ越前守殿二人ども多分存命ぞんめいにてあらん其方に手懸てがかりはなきやとのことなれども一同さらに手懸りなきむね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この小娘のような若夫人から、何らかの手懸てがかりが得られようとは、思われぬ。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「で、手懸てがかりは少しもないとおっしゃるのですか」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかしピポスコラ族が何ものであるかは、遂に手懸てがかりがなかった。私は更にそのまま、次の日暦にちれきの領域に入っても、調べを続けることにした。
屈竟くっきょう手懸てがかりに、くだけよとばかり尾をくわえながら左右にふると、尾のみは前歯の間に残って胴体は古新聞で張った壁に当って、揚板の上にね返る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「妙な方角から、思いがけない手懸てがかりがつきまして、近いうちには、きっと、お手元に戻るだろうと存じます」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後の手懸てがかりにもと存じ拾ひとり能々よく/\あらため見る處同宿にて同商賣を仕つる杉戸屋富右衞門と申者所持しよぢの品にして又其煙草入たばこいれの下には主人平兵衞より送りたる手紙が之あり候とて其節そのせつの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「そんな筈はないんだが……もし、蓄音機が暗号に無関係だとすると、これはもう簡単に手懸てがかりを発見することは不可能だ」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御母さんも知らず、余も知らぬ、あの女の事があるいは書いてあるかも知れぬ。よしあからさまに記してなくても一応目を通したら何か手懸てがかりがあろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遺憾いかんながら、はやここへ来てからみな半歳の余になるが、いま以て、伊丹城内へ忍び入って獄中の主君に近づくべき方策や手懸てがかりは、まったく見出せないのであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにしろ早朝のことだったから、目撃した市民も意外にすくない。手懸てがかりを探したが、一向に有力なのが集らない。事件は全く迷宮めいきゅうに入ってしまった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何の手懸てがかりもなく引っ返して来たところを、万太郎様に呼びとめられたのでございました
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は四郎の屍体の口腔こうくうを開かせ、その中に手をグッとさし入れると咽喉の方までぐってみたのが、果然かぜん手懸てがかりがあって、耳飾の宝石が出てきた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私はおどろきを思わず声に出した。辻永が急に活発に歩きだしたのだ。どうやら何か又新しい手懸てがかりをつかんだものらしい。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長さ二尺ばかりの杉角材が四本と古新聞紙が詰めありたるほかめぼしきものも、手懸てがかりとなるものも見当らず。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手袋の繊維をすくなくとも数十本はわえこんでいる筈だ、それから手懸てがかりが出るかも知れなかったのだ。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さあ、これでと安心です。警察隊と医者の来るのを待つばかりです。その間に私は現場げんじょうしらべて、事件の手懸てがかりを少しでも多く発見して置きたいと思ったのでした。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
遅くなりそうだったら、途中から電話か使いかを寄越よこはずだった。それが何も云って寄越さないのだから不審だった。といって須永を探しにゆくにも手懸てがかりがなかった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「必ず、この附近に、何かの手懸てがかりが残っているはずだ。それを探しあてないうちは、われわれは、いつまでも、ここから引上げない決心だ。さあ、しっかり探してくれ」
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
正に奇想天外の一大事件がもちあがったのだ。それは如何なる大事件であろうか? ところがその後が難解だ。残っているタッタ一つのものは、曰く『獏鸚!』こいつが手懸てがかりなのだ。
獏鸚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
然しお由の死後七日までは、これぞと思う手懸てがかりは何等得ることが出来ずにいた。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ナニ脳髄にかびが生えてはたまらんと思ったからネ。ちょっと外へ出て、冷していたんだよ。しかしこの病院の外壁がいへきと来たら、手懸てがかりになるところがなくて、下りるのに非常に不便にできている。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
矢走千鳥やばせちどり誘拐事件ゆうかいじけんは、なんの手懸てがかりもなく、それから一日過ぎた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ふうん。一つの有力なる手懸てがかりだ」
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
新しい手懸てがか
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
重大な手懸てがか
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)