我輩わがはい)” の例文
彼等の言ひ分は重々もつともであると思ふが、また我輩わがはい善蔵君としても、震災以来のナンについてはやはり遺憾ゐかんに思つてゐるんだ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「ボートルレ君、我輩わがはいはまず君に、君が我輩の手紙を見て気持よく逢ってくれたことに、御礼を申し上げなければならない。」
空嘯そらうそぶける侯爵「金儲かねまうけのことなら、我輩わがはいの所では、山木、チト方角が違ふ様ぢヤ——新年早々から齷齪あくせくとして、金儲かねまうけも骨の折れたものぢやの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
我輩わがはいなぞは天下国家をどうするとかこうするとか、無闇むやみに粗大な迂闊うかつな問題にばかり空騒からさわぎをして自分の腹の中を治める事が出来なかったのです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こいつはひどい。我輩わがはいの足跡までこんなに深く入るというのは実際少しおそれ入った。けれどもそれでも探求の目的を
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「どのように我輩わがはいを誘惑したところで、我輩は決して誘惑されはしないよ」——といったようなところがあった。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
我輩わがはいは、もう君をすっかり信用しているからね、とでも言うように、桶のところへちょこちょこ近づいて来て、いっしょにえんどう豆をいく粒かついばんだ。
カシタンカ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
我輩わがはい建築けんちくもつと重要ぢうえうなる一れいすなは住家ぢうかとつこれかんがへてるに「ぢうなほしよくごとし」とかんがある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
我輩わがはいはこの一段に至りて、勝氏のわたくしめにははなはだ気の毒なる次第しだいなれども、いささ所望しょもうすじなきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
するとくだんの書生は、先生の序文で光彩を添えようというのじゃない、我輩わがはいの作は面白いから先生も小説が好きなら読んで見て、面白いと思ったら序文をお書きなさい
露伴の出世咄 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
我輩わがはい一昨日は、英国大使館の園遊会ガードンパーティに行きましたがね。とても、本日の盛況には及びませんね。もっとも、この名園を見るだけでも、来る価値ねうちは十分ありますからね。ハヽヽヽ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
聞く所によれば野蛮人は赤色せきしょくを愛すると云うが、我輩わがはい文明人にしてもなお野蛮の域に居る所の子供は赤色を好み、段々と大きくなるに従って、色の浅いものを好むようになる
猫と色の嗜好 (新字新仮名) / 石田孫太郎(著)
我輩わがはいは一家の御主人と思って頭の上へ載せんばかりにしてですね、大事にいたしますよ。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「球突随意ピヤノあり gay society, late dinner」これも珍らしくない。「レートジンナー」と云うのはこの頃の流行なのだ。我輩わがはいなどには至極しごく不便だ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いけないよ、ここで話そうよ、我輩わがはいは外に立っている、君はなかに居給え」
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「それこそ我輩わがはいのねがう所で、大慶この上もない」と、いった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「諸君! 我輩わがはいは……」
一老人 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
料理の事はその通りで我輩わがはいは今まで毎日西洋料理屋から二品三品ずつ取寄せて食べていたがどうしてこういう料理を作るかと研究した事もありません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「今度は我輩わがはいうたって見せよう。こら楽隊、In the good summer time をやれ。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
我輩わがはいかつてトルコにあそんだとき、その宮廷きうてい常用語ぜうようご自國語じこくごでなくして佛語ふつごであつたのをておどろいた。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この点については我輩わがはいも氏の事業を軽々けいけい看過かんかするものにあらざれども、ひとあやしむべきは、氏が維新のちょうきの敵国の士人と並立ならびたっ得々とくとく名利みょうりの地位にるの一事なり
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お小夜と珠太郎の媾曳あいびきをだね、築山の蔭から見ていたのは、我輩わがはいばかりではなかったのさ。館林様も見ていたのさ。それを互いに知ったものだから、大声で暴露し合ったのさ。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なさるには及びませんよ。どんな盲目めくらでも、いざりでも私はまもっていってあげます。我輩わがはいが人並みの身体に直してあげますよ。肥後一国の神仏は我輩の意志どおりに何事も加勢してくれますからね
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「よし、我輩わがはいも行こう」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我輩わがはいの家なぞは隣屋敷となりやしきに馬が飼ってあるためか蠅が多くて仕方しかたがありません。蠅のおらんのは何より心持こころもちがよい
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
近頃ちかごろ時々とき/″\我輩わがはい建築けんちく本義ほんぎなんであるかなどゝむづ質問しつもん提出ていしゆつして我輩わがはいこまらせるひとがある。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
れば当時積弱せきじゃくの幕府に勝算しょうさんなきは我輩わがはいも勝氏とともにこれを知るといえども、士風維持の一方より論ずるときは、国家存亡そんぼう危急ききゅうせまりて勝算の有無うむは言うべき限りにあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「坐っておいでになっても立っておいでになっても、我輩わがはいは我輩じゃないか。おっとよろしい。諸君は我輩のために乾杯しようというんだな。よしよし、プ、プ、プロージット。」
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
勿論もちろんこの問題もんだい專門家せんもんかよつ飽迄あくまで研究けんきうされねばならぬのであるが。我輩わがはいは、こゝにはふか哲學的議論てつがくてきぎろんにはらないで、きはめて通俗的つうぞくてきこれくわんする感想かんさうの一たんべてよう。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
う納まって見ると、我輩わがはいもさながら、洞熊ほらくまか、洞窟どうくつ住人だ。ところでもう寝よう。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しかして之を再生せしめたる恩人は神田氏にして、我輩わがはいの共に永く忘れざる所なり。
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)