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憂慮
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きづかひ
それでも
五人や十人ぐらゐ
一時に
渡つたからツて、
少し
揺れはしやうけれど、
折れて
落つるやうな
憂慮はないのであつた。
……
其の
憂慮さに、——
懷中で、
確乎手を
掛けて
居ただけに、
御覽なさい。
何かに
氣が
紛れて、ふと
心をとられた
一寸一分の
間に、うつかり
遺失したぢやありませんか。
一人放り
出して
置いた
處で、
留守に
山から
猿が
來て、
沸湯の
行水を
使はせる
憂慮は
決してないのに、
誰かついて
居らねばと
云ふ
情から、
家中野良へ
出る
處を、
嫁を
一人あとへ
殘して
「いや、さまでに
憂慮あるな、
君御戲に
候はむ、
我等おとりなし
申すべし」といふ。
道中——
旅行の
憂慮は、むかしから
水がはりだと
言ふ。……それを、
人が
聞くと
可笑いほど
気にするのであるから、
行先々の
停車場で
売る、お
茶は
沸いて
居る、と
言つても
安心しない。
今は
然る
憂慮なし。
大塚より
氷川へ
下りる、たら/\
坂は、
恰も
芳野世經氏宅の
門について
曲る、
昔は
辻斬ありたり。こゝに
幽靈坂、
猫又坂、くらがり
坂など
謂ふあり、
好事の
士は
尋ぬべし。
留守には、
年寄つた
腰の
立たない
與吉の
爺々が
一人で
寢て
居るが、
老後の
病で
次第に
弱るのであるから、
急に
容體の
變るといふ
憂慮はないけれども、
與吉は
雇はれ
先で
晝飯をまかなはれては
鱗は
光つても、
其が
大蛇でも、
此の
静かな
雨では
最う
雷光の
憂慮はない。
最う
此の
上は、とお
秋は
男のせり
詰めた
劍幕と、
働きのない
女だと
愛想を
盡かされようと
思ふ
憂慮から、
前後の
辨別もなく、
着て
居た
棒縞の
袷を
脱いで
貸すつもりで、
樹の
蔭ではあつたが、
垣の
外で