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老後
生來子を
持つたことのない
彼はお
品一人が
手頼であつた。お
品に
死なれて
彼は
全く
孤立した。さうして
老後は
到底勘次の
手に
託さねばならぬことに
成つて
畢つたのである。
留守には、
年寄つた
腰の
立たない
與吉の
爺々が
一人で
寢て
居るが、
老後の
病で
次第に
弱るのであるから、
急に
容體の
變るといふ
憂慮はないけれども、
與吉は
雇はれ
先で
晝飯をまかなはれては
予は
唯一箇人として四十余年、先生との
交際及び先生より受けたる
親愛恩情の
一斑を
記し、いささか
老後の
思を
慰め、またこれを子孫に
示さんとするのみ。