“心(こヽろ)” の例文
待給(まちたま)へ諸共(もろとも)にの心(こヽろ)なりけん、見(み)し忍(しの)び寐(ね)に賜(たま)はりし姫(ひめ)がしごきの緋縮緬(ひぢりめん)を、最期(さいご)の胸(むね)に幾重(いくへ)まきて、大川(おほかわ)の波(なみ)かへらずぞ成(な)りし。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうして少年(せうねん)のやぶれた心(こヽろ)はつくのはれたけれど、舞台(ぶたい)のうへで姫君(ひめぎみ)のきられたといふことは忘(わす)れられない記臆(きおく)であつた。また赤毛布(あかけつと)の裡(うら)をば、死(し)んだ姫君(ひめぎみ)が歩(ある)いたのも、不可思儀(ふかしぎ)な発見(はつけん)であつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
診察(しんさつ)せし窒扶斯患者(ちぶすくわんじや)に感染(かんぜん)して、惜(を)しや三十路(みそぢ)にたらぬ若(わか)ざかりを北海道(ほくかいだう)の土(つち)に成(な)しぬ、風(かぜ)の便(たよ)りにこれを聞(き)きしお園(その)の心(こヽろ)。
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
姉(あね)に妹(いもと)に數多(かずおほ)き同胞(はらから)をこして肩(かた)ぬひ揚(あ)げの幼(をさ)なだちより、いで若紫(わかむらさき)ゆく末(すゑ)はと寄(よ)する心(こヽろ)の人々(ひと/″\)も多(おほ)かりしが、空(むな)しく二八の春(はる)もすぎて今歳(ことし)廿(はたち)のいたづら臥(ぶし)
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
維新(いしん)の變(へん)に彼(か)れは靜岡(しづをか)のお供(とも)、これは東臺(とうだい)の五月雨(さみだれ)にながす血汐(ちしほ)の赤(あか)き心(こヽろ)を首尾(しゆび)よく顯(あら)はして露(つゆ)とや消(き)えし、水(みづ)さかづきして別(わか)れし限(ぎ)りの妻(つま)へ形見(かたみ)が此美人(このびじん)なり
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
散々(さん/″\)のお民(たみ)が異見(いけん)に少(すこ)し我(わ)が非(ひ)を知(し)り初(そめ)し揚句(あげく)、その人(ひと)は俄(にわ)かに別(わか)れといふ、幼(おさ)なき心(こヽろ)には我(わ)が失禮(ひつれい)の我(わが)まヽを憎(に)くみて夫故(それゆゑ)に遠國(ゑんごく)へでも行(ゆ)かれるやうに悲(かな)しく
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
令孃(ひめ)が部屋(へや)の戸(と)一枚(まい)を隔(へだ)てに、今宵(こよひ)かぎりの名殘(なごり)を惜(を)しまんとて、心(こヽろ)も空(そら)も宵闇(よひやみ)の春(はる)の夜(よ)、落花(らくくわ)の庭(には)に踏(ふ)む足(あし)の音(おと)なきこそよけれ、切(せ)めては夢(ゆめ)に入(い)れかしと忍(しの)びぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)