彼奴きやつ)” の例文
これはひとつ、真直ぐに新聞社へ駆けつけて、いち早く、彼奴きやつの特徴を詳細に書いた広告を出すことにしようと肚をきめたのである。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
だから良し費消したところで、民事の制裁を受くべきものであるに、彼奴きやつ為にするところあつて、突然と予審廷へ告訴したんです。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
かうあばれてるうちにも自分じぶんは、彼奴きやつ何時いつにチヨークぐわならつたらう、何人だれ彼奴きやつをしへたらうとればかりおもつゞけた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まま、おかげでおれも、いやな殺生せっしょうを一つせずに済んだというもの。また彼奴きやつとても命拾い、こりゃいっそ両得かもしれぬ
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
然るに自分は東京に寝て居て、少しばかり新聞でお茶を濁してるんぢや無いか、僕は最初から彼奴きやつが嫌ひだ、耶蘇ヤソばかり振り廻はしやがつて——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それからまた、中隊長殿、きのう鉄工卒のアルチェーミエフが泥酔しましたので、中尉殿が彼奴きやつを予備砲車の前車へ乗せるように命令されました。
接吻 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一体、巡査先生の方がびく/\して居るんで御座ごわすア、だもんだで、彼奴きやつア、好い気につて、始めからでは、もう十五六軒もツン燃やしましたぜ
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
のこらず私しへ仰付おほせつけられ下され候へば有難く存じ奉つり候と言葉ことばたくみに申立ければ此時大岡殿彼奴きやつ此場のへん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勝田君かつだくんく。『彼奴きやつだ/\』と、みなくす/\わらふ。自分じぶんのことをわらつたのかと、なきだに無愛想ぶあいさうかほをしたモンゴリアがう事務長じむちやうは、ます/\むづかしいかほをする。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
彼奴きやつが黄巾賊の討伐に南下していた頃、潁川えいせんの陣営で、おれが董卓を殺そうとしたのに、兄貴たちが止めたものだから、今日こんなことになってしまった。——あの折、おれに董卓を
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あいつが出てきたら、一層あなた達を愉しくはしやがせただらうに、とうとう彼奴きやつは見參に及ばなんだ。いつものことながら、おれの天使栗鼠の奴の、氣のきかないのには呆れる。……
牧歌:恩地三保子嬢に (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
貞盛は親王様に御目にかゝつて、残念なることには今日郎等無くして将門を殺し得ざりし、郎等ありせば今日殺してまし、彼奴きやつは天下に大事を引出すべき者なり、と申したといふ事である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
『恐ろしい感覚だ。少くとも彼奴きやつはすばらしい神童だつたに違ひない。』
神童の死 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何等の目的も無く生むで置きながら、せがれがやくざだと大概たいがい仲違なかたがひだ!其處が人間のえらい點かも知れんが、俺は寧ろ犬ツころの淡泊たんぱくな方を取るな。彼奴きやつ子供を育てたからつて決しておんを賣りはしない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
顔がでたえびのやうに赤くなつて、彼奴きやつは叫んだ。
昨霄ゆうべ飯田町を飛出して、二里ばかりの道を夢中に、青山の知己しるべまで便たよつて行けば、彼奴きやつめたいがい知れとる事に、泊まつて行けともいはないんだ。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
なんだと畜生ちくしやう!』と、此時このときイワン、デミトリチはきふにむツくりと起上おきあがる。『なん彼奴きやつさんとはふがある、我々われ/\こゝ閉込とぢこめてわけい。 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「ぢや、吾妻、彼奴きやつが山木のむすめを誘惑して、其の特別財産を引き出す工夫してると云ふのは、ありや真実ほんたうどうだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
どうかして彼奴きやつの正体を見届けて呉れようと思つたのですが、亡者のはりつけにつかふ釘をつ悪魔そつくりに、顔ぢゆうを煤で塗りたくつてをりますのでして。
これは面白おもしろい、彼奴きやつうつしてやらうと、自分じぶん其儘そのまゝ其處そここしおろして、志村しむら其人そのひと寫生しやせいりかゝつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何者にか聞れし一向蹤跡あとかたなき事なり拙者毛頭もうとう左樣さやうの事存じ申さずと虚嘯そらうそぶにも不束ふつつかなる挨拶なるにぞ六郎右衞門はむつとし彼奴きやつ多分の金子を掘り出しながらすこしの配分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ふうむ。彼奴きやつか。あの男なら識っとる。それくらいのことはいかさまやりかねんやつじゃて」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それが、彼奴きやつが実行するのなら、無論見付けない事は無いだすが、彼奴の手下にあまが一人居やして、そいつが馬鹿に敏捷すばしつこくつて、丸で電光いなづまか何ぞのやうで、とても村の者の手には乗らねえだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「オイ/\飛んだことを言ふ——デ、彼奴きやつに一杯、酒を飲ませてやらうと思ふんだが、我々の手では駄目だから、こゝおいてか花吉大明神の御裾におすがり申すのだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼奴きやつる、どうして彼奴きやつ自分じぶんさきさきへとはるだらう、ま/\しいやつだとおほいしやくさはつたが、さりとて引返ひきかへすのはいやだし、如何どうしてれやうと
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
付居たりしに十日ばかり立と博奕ばくちに廿兩かちたりとて家の造作を始しが押入おしいれ勝手元迄かつてもとまで總槻そうけやきになし總銅壺そうどうこ光輝ひかりかゞやかせしかば偖こそ彼奴きやつに違ひなしと思ふうち小間物屋彦兵衞と云者いふもの隱居いんきよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『それがいけないです。彼奴きやつ為にするところがあるからです』
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「それア、もう彼奴きやつきまつて、居るんだが……」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)