小間使こまづかひ)” の例文
姿すがた婀娜あだでもおめかけではないから、團扇うちは小間使こまづかひ指圖さしづするやうな行儀ぎやうぎでない。「すこかぜぎること」と、自分じぶんでらふそくにれる。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『はゝゝゝゝ。きみはまだわたくし妻子さいし御存ごぞんじなかつたのでしたね。これは失敬しつけい々々。』といそがはしく呼鈴よびりんらして、いりきたつた小間使こまづかひ
新納武蔵に可愛がられてゐた若い小間使こまづかひがあつた。ある日雨の徒然つれ/″\に自分の居間で何だかしたゝめてゐると、丁度そこへ武蔵が入つて来た。
左側に続いた赤い煉瓦塀の家の中でづピヤノの音がする。主人達が避暑に行つたあとを預かつた用人ようにんの娘か小間使こまづかひの手すさびの音とも聞かれる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
梅子はう答へて、すぐ新聞をひざからおろすと、手を鳴らして、小間使こまづかひを呼んだ。代助は再びちゝざい不在ふざいたしかめた。梅子は其とひをもう忘れてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
身は桜町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくどの出替り、小間使こまづかひといへば人らしけれど、御寵愛ごてうあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがす物ぞかし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平常ふだんの儘のまつたく質素な黒いメリノの外套と羅紗らしやの帽子、どちらも小間使こまづかひの半分も立派ではなかつた。私が何をしてゐるかを判定しかねてゐる模樣だつたので私は口を添へた。
ひさしぶりで、うしてかせたまゝ、りの小間使こまづかひさへとほざけて、ハタとひらきとざしたおとが、こだまするまでひゞいたのであつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま珈琲カツヒーはこんで小間使こまづかひかほにもそのいそがしさがへるので、しや、今日けふ不時ふじ混雜中こんざつちうではあるまいかと氣付きづいたから、わたくしきふかほ
十六七の小間使こまづかひけてかほを出した。あの、旦那様が、奥様に一寸ちよつと電話ぐち迄と取りいだなり、黙つて梅子の返事を待つてゐる。梅子はすぐ立つた。代助も立つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
暫時しばしがほどもまじはりし社會しやくわいゆめ天上てんじやうあそべるとおなじく、いまさらにおもひやるもほどとほし、櫻町家さくらまちけ一年いちねん幾度いくど出替でがはり、小間使こまづかひといへばひとらしけれど御寵愛ごちようあいには犬猫いぬねこ御膝おひざをけがすものぞかし。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は小間使こまづかひとして働いてくれる、小さな孤兒みなしごにオレンジを一つ心づけに遣つて歸した。それからたつた獨りで私は、爐邊ろべりに腰掛けてゐる。今朝、村の學校は始まつたのだ。生徒は二十人であつた。
北八きたはちかへりみて、日曜にちえうでないから留守るすだけれども、いた小間使こまづかひるぜ、一寸ちよつとつてちやまうかとわらふ。およしよ、とにがかほをする。すなはちよして、團子坂だんござかおもむく。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
代助は一人ひとりちゝへやへ行く勇気がなかつた。何とか蚊とか云つて、あに夫婦を引張つてかうとした。それがうまく成功しないので、とう/\其所そこすはり込んで仕舞つた。所へ小間使こまづかひ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)