寿命じゅみょう)” の例文
旧字:壽命
それもまあ寿命じゅみょうなら致し方ないのでございますが、当人がいよいよ息を引き取ります時、廻らない舌で何か申しましたそうで……
半七捕物帳:13 弁天娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「間違いなく、左脚がちょん切れている。当人は虫の息だ。なまぐさい血の海。——あと二三十分の寿命じゅみょうだろう。南無阿弥陀仏なむあみだぶつ
どうかわたしの寿命じゅみょうを延ばして下さい。たった五年、たった十年、——子供さえ成人すればいのです。それでもいけないと云うのですか?
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そなたもわかいのに歿なくなって、まことにどくなことであるが、なかはすべて老少不定ろうしょうふじょう寿命じゅみょうばかりはんとも致方いたしかたがない。
「なるほど、乙姫おとひめさまが、人間のいちばんだいじなたからを入れておくとおっしゃったあれは、人間の寿命じゅみょうだったのだな」
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「一体あの甘木さんが悪うございますよ、あんまり三毛を馬鹿にし過ぎまさあね」「そう人様ひとさまの事を悪く云うものではない。これも寿命じゅみょうだから」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
家康としては、これが、寿命じゅみょうの毒になるほどな、強い心の傷手いたでであったことは、その、常にない容子ようすでも察しられた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三十年一日の如く生徒に仕え、これも寿命じゅみょう旦夕たんせきに迫っていますが、差当り何うすることも叶いません。諸君、腰掛が臀部の筋肉にこたえるでありましょう。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「しかたがない。なんにでも、寿命じゅみょうというものが、あるからな。」と、さびしそうに、いいました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちよりも、かえって寿命じゅみょうはみじかいくらいです。わたしたちは三百年まで生きられます。
「が、しかし、そなたの寿命じゅみょうばかりではない。相手の寿命ということも考えねばならぬ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
幅三十町、長さ五十町ほどの荒れ野原のっぱらの一部分だった。萩とかや野茨のいばらばかりのくさの中に、寿命じゅみょうを尽くして枯れ朽ちた大木を混ぜて、発育のいい大葉柏がまばらに散在していた。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
咲耶媛さくやひめだけをおとめになつて、石長媛いわながひめをおかえしになったうえは、あなたも、あなたのご子孫のつぎつぎのご寿命じゅみょうも、ちょうど咲いた花がいくほどもなく散りはてるのと同じで
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ちょいと、寿命じゅみょうをのばしてやったのさ。息がつまって死んでしまっちゃあ、おもしろくないからね。息ぬきの穴をこしらえてやったのさ。どうだ、おれの声がよく聞こえるだろう?
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ハハハ、そうよ、おつ後生気ごしょうぎになったもんだ。寿命じゅみょうきる前にゃあ気が弱くなるというが、おらアひょっとすると死際しにぎわが近くなったかしらん。これで死んだ日にゃあいい意気地無いくじなしだ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「私なぞは、叔父さん、すくなくも十年寿命じゅみょうが縮みました」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
寿命じゅみょうなら死ぬも仕方がない」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
有王 でも寿命じゅみょうのある限りは。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
するとある人がおかあさんに、子供こどもみじか名前なまえをつけると、その子のいのちみじかいし、なが名前なまえをつけるほど、その子の寿命じゅみょうながいものだといってかせました。
長い名 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、いかにたのまれましても人間にんげん寿命じゅみょうばかりはうにもなりませぬ。随分ずいぶんしん不乱ふらんになって神様かみさま御縋おすがりするのでございますが、ぬものは矢張やはんでしまいます。
「ああ、もうこのふね寿命じゅみょうきた。わたしも、航海こうかいをやめよう。」と、父親ちちおやはいいました。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのあいだの短い期間に、いかに寿命じゅみょうのちぢまるような艱難辛苦かんなんしんくをなめたかは、その姿にもあらわれていた。あかは襟につみ、顔は真っ黒にけ、眼のくぼの肉すら薄くなっている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
っと元気を出し給え。出世は寿命じゅみょうの問題だ。寿命は食えるか食えないかによってきま
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかしふと気がついたのは、僕の寿命じゅみょうは、あの婦人が僕に会いに来るすこし以前に終ったのではなかろうか。しかもそれはあの海底都市ではなく、他の場所で終焉しゅうえんを迎えたのではなかろうか。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
現に昨日きのう安倍あべ晴明せいめい寿命じゅみょうは八十六と云っていました。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まあ、寿命じゅみょうがあって、またかえってることがあったら、そのときかえしてもらえばいい。またこうでくなってしまったら、そのまま、このいえをおまえさんのものにしてください。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むかしことはモーなんともっしゃってくださいますな。あたにおわかれしてからのわたくしは、おはかまいりがなによりのたのしみでございましたが、矢張やは寿命じゅみょうえて、じきにおあとしたうことになりました。
おおきなはねをはばたいて、にわさきにりようとした刹那せつな真紅まっかなばらのはなは、もう寿命じゅみょうがつきたとみえて、おともなく、ほろりほろりと、金色きんいろびた夕日ゆうひひかりなかくだけてるところでありました。
ちょうと怒濤 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やはり人工のものにとりかえると、また寿命じゅみょうがのびるそうだよ
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それなら大丈夫だろう。六十ぐらいまで寿命じゅみょうが続く」
首切り問答 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
やはり人工のものにとりかえると、また寿命じゅみょうがのびるそうだよ
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)