四角よつかど)” の例文
るな、るな、で、わたしたちは、すぐわき四角よつかどたゝずんで、突通つきとほしにてんひたほのほなみに、人心地ひとごこちもなくつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日比谷ひびやには公園いまだ成らず銀座通ぎんざどおりには鉄道馬車の往復ゆききせし頃尾張町おわりちょう四角よつかど今ライオン珈琲店コーヒーてんあるあたりには朝野ちょうや新聞中央新聞毎日新聞なぞありけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その時修験者は四角よつかどを曲がった。その角を広太郎がまがった時、やはり修験者は数間のあなたを、同じように人波を分けながら、悠々として歩いていた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これ位で諦らめて鋏を返してしまおうか知らんと胸算用をしいしい来るともなく、市内でも一等繁華な四角よつかど交叉点こうさてんへ来てて、ボンヤリ立っているうちに、居た居た。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある四角よつかどへ来て彼と別れるときただ「お兼さんによろしく」と云ったまままた元の路へ引き返した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
トある四角よつかどに立つて居て、小さいながらも、ツイ此頃落成式を擧げた許りの、新築の煉瓦造、(これが此社に長く居る人達の北海道に類が無いと云ふ唯一つの誇りであつた。)
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お酒をべて居りますとは清水助右衞門は少しも存じませんから、四角よつかどへまいりまして見ると、西洋床というのは玻璃張がらすばり障子しょうじが有って、前に有平あるへいのような棒が立って居りまして
藤子は軽い雨のなかを、黒蛇くろじゃの目をさして、四角よつかどに待っていた。彼女は久しく庸三のところへ出入りしている美貌びぼうの未亡人で、いつも葉子に関する庸三の話のよきき手の一人であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お先供はどこまでも、宮川べりをのぼりつくすかと見れば、国分寺通りの四角よつかどへ来て、火の番の拍子木を聞くと急に右へ折れて花岡の方へと真向きに行く——ここをふらっと行き尽せば灘田圃なだたんぼだ。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四角よつかどへ巡査が群がり自動車の一斉検閲がはじまった。
歩む (新字新仮名) / 戸田豊子(著)
四角よつかどにも往来にも
戸外おもてには風の音、さらさらと、我家わがいえなるかのかえでの葉をならして、町のはずれに吹き通る、四角よつかどあたり夕戸出ゆうとでの油売る声はるかなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四角よつかどを曲りかけた時、向から座敷着のつまを取り、赤い襦袢じゅばんすそを夕風に翻しながら来かかる一人の芸者。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、真砂町へ抜ける四角よつかどから、黒い影が現れた。ブラリブラリと俛首うなだれて歩いて来る。竹山はじつと月影に透して視て居たが、どうも野村らしい。帽子も冠つて居ず、首巻も巻いて居ない。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
四角よつかど近くへ来ると左右に本屋と雑誌屋がたくさんある。そのうちの二、三軒には人が黒山のようにたかっている、そうして雑誌を読んでいる。そうして買わずに行ってしまう。野々宮君は
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ四角よつかどなるつじ夜警やけいのあたりに、ちら/\とえるのも、うられつゝも散殘ちりのこつた百日紅ひやくじつこう四五輪しごりんに、可恐おそろし夕立雲ゆふだちくもくづれかゝつたさまである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四角よつかどを通越して浦見町が、米町になる。二町許り行くと、右は高くなつた西寺と呼ぶ眞宗の寺、それに向合つた六軒長屋の取突とつつきの端が渠の宿である。案の如く入口も窓も眞暗になつて居る。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
さて足駄あしだ引摺ひきずつて、つい、四角よつかどると、南寄みなみよりはうそら集團しふだんひかへて、ちかづくほどはゞひろげて、一面いちめんむらがりつゝ、きたかたすのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
四角よつかどを通越して浦見町が、米町になる。二町許り行くと、左は高くなつた西寺にしでらと呼ぶ真宗の寺、それに向合つた六軒長屋の取突とつつきの端が渠の宿である。案の如く入口も窓も真暗になつて居る。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこを通って、両方の塀の間を、鈍い稲妻形にうねって、狭い四角よつかどから坂の上へ、にょい、と皺面しわづらを出した……
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてモウ社が見えない所に來ると、渠は遽かに顏を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
麹町かうぢまち番町ばんちやう火事くわじは、わたしたち鄰家りんか二三軒にさんげんが、みな跣足はだし逃出にげだして、片側かたがは平家ひらや屋根やねからかはら土煙つちけむりげてくづるゝ向側むかうがは駈拔かけぬけて、いくらか危險きけんすくなさうな、四角よつかどまがつた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてもモウ社が見えない所に来ると、渠はにはかに顔を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もそっとこれへ、ちょっと向うへ。あの四角よつかどの処まで、手前と御同道が願いたい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(水道はその四角よつかどの処にあります。)って丁寧に教えられて、困ったんです。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……うかといつて、どこへもどところもないのである。すこしでもひろい、中六なかろくへでもすかと、すと、ひとをおどろかしたにもない、おとなしいうまで、荷車にぐるまはうあばれながら、四角よつかどひがしく。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)