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周章
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あわ
ふりがな文庫
“
周章
(
あわ
)” の例文
が、気持ちがせかせかして
周章
(
あわ
)
ててばかりいた。人が一といっている時自分が二といっているようだ。何か
禍
(
あやま
)
ちをしそうな気がした。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「ハイ」と云ったが、
周章
(
あわ
)
てて止め、「ご迷惑でないようでございましたら、その手箱はもう少々お預かりなされて下さいますよう」
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
今竜が見え次第大声でその竜肉を
啖
(
く
)
いたいと
連呼
(
よびつづ
)
けよと
耳語
(
ささや
)
いて出で、竜を呼び込むと右の通りで竜大いに
周章
(
あわ
)
て、袋を落し逃れた。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「
我家
(
うち
)
の旦那が急に気がちがって、
化物
(
ばけもの
)
だ化物だと云って、奥様も、
坊様
(
ぼっちゃま
)
も斬りました、どうか早く来てください」と
周章
(
あわ
)
てて云った。
通魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お関は
周章
(
あわ
)
てて前をかき合せて恭の顔色をうかがいながら下を向こうとした時、土間の方で誰かが案内をたのんで居るのが聞えた。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
それは今、硬直している者の腰の辺から、破れた布切を解いてきて、
周章
(
あわ
)
てて自分の腰に巻きつけたばかりであるが、
澄
(
すま
)
し込んでいる。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
表へ出れば、表門からであろうが、勝手口からであろうが、待ち構えている渡辺刑事に直ぐ見つかって
終
(
しま
)
う。そう
周章
(
あわ
)
てるに及ばない。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
あいつらが
周章
(
あわ
)
てて騒いでるうちに家を飛び出しましたよ。
跣足
(
はだし
)
ですよ。そして最初裁判所だと思って飛び込んだのが海軍省でしてね。
豆腐買い
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
周章
(
あわ
)
てて着物を押しかぶせてやったが、押しかぶせてやってもやっても、わざとするもののように、その着物を引きはいでしまう。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と雪江さんが不審そうに
面
(
かお
)
を視る。私は
愈
(
いよいよ
)
狼狽して、又
真紅
(
まっか
)
になって、何だか訳の分らぬ事を口の
中
(
うち
)
で言って、
周章
(
あわ
)
てて頬張ると
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
一軒
殖
(
ふ
)
えりゃそいつが食って
行
(
ゆ
)
くだけ、
皆
(
みんな
)
が一杯ずつお
飯
(
まんま
)
の食分が減るように
周章
(
あわ
)
てやあがって、時々なんです、いさくさは絶えやせん。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼はみずから、それに気がついた時、驚きと羞恥とのために
周章
(
あわ
)
てて眼を他に転じた。しかし彼女は、そんな事を露ほども感じなかった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
慶三は耳を済ます間もなく、障子の音荒く
立出
(
たちいで
)
る気色に
周章
(
あわ
)
てて物蔭にひそむと、がらりと格子戸を明けて外へ出たのはかの葉山である。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ところがこの
周章
(
あわ
)
て者は僕の声などてんで耳に這入らないらしく尚も一散に弾となり水平線の向ふ側へ飛び去りさうに見えたものですから
木枯の酒倉から:――聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
土足のあとをみつけて
吃驚
(
びっくり
)
し、
周章
(
あわ
)
てて座敷の主人を起すと同時に茶の間の茶箪笥を調べたんですが、海水浴へ送るつもりで
あやつり裁判
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
と言ったら、
周章
(
あわ
)
ててしまいこんでしまったけれど……寛子は思い出したように急に立ちあがると、泥いじりしている啓吉へ
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そして、俯伏したままの野本氏を
後目
(
しりめ
)
にかけてすっと座敷から出た。何も知らぬ婆やが
周章
(
あわ
)
てて、彼の下駄を直しに出て来た。
恐ろしき錯誤
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その頃はマダ葵の御紋の御威光が素晴らしい時だったから、町名主は御紋服を見ると
周章
(
あわ
)
てて
土下座
(
どげざ
)
をして
恭
(
うやう
)
やしく敬礼した。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「そんな訳のものじゃないよ」と云った津田は、自分の上に寸分の油断なく
据
(
す
)
えられたお延の細い眼を見た時に、
周章
(
あわ
)
てて後を付け足した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
周章
(
あわ
)
ててはがそうとすると、「無茶したらあかんぜ」ハガキをもったまま、台所へ行き金盥の水の中に浸して、切手をはがして戻って来ると
青春の逆説
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
ハッとして思わず前身を曲げて聞き耳を立てたところへ、手間どった丘田医師が洋服に着換えてヌッと出てきたので、これには私も
周章
(
あわ
)
てた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
我が一行の
扮装
(
いでたち
)
は猿股一つの
裸体
(
はだか
)
もあれば白洋服もあり、月の光に遠望すれば巡査の一行かとも見えるので、彼等は皆
周章
(
あわ
)
てて盆踊りを
止
(
や
)
め
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
ついさっき、お供のお人が
周章
(
あわ
)
てて、駈け込んでおいでだから、どうしたのかと、親方さんに
伺
(
うかが
)
ったら、なあに何でもない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
弟の眼は、秘密が露見した時に人がする眼であり、まあそんなことを云つて呉れてはと、
周章
(
あわ
)
ててゐる私を見た時に、弟の眼はタジ/\とした。
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
「貴郎、そんな事をして若しそれが、万一母さんの為に悪い事だったらどうしましょう」ビアトレスは
周章
(
あわ
)
てて押止めた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
謬
(
にべ
)
なく言ひ捨て立んとするに
周章
(
あわ
)
てし十兵衞、ではござりませうなれど、と半分いふ間なく、五月蠅、喧しいと打消され
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
妾が偶然に行き合わせた時に、
周章
(
あわ
)
てて隠しちゃったんですけど、そのハンカチにあの人の口紅のアトが残ってベタベタ附いているのが見えたわ
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「豊世——お前は私のことばかり心配なように言うが、自分のことも
少許
(
ちと
)
考えてみるが可い——そうまたお前のように
周章
(
あわ
)
てることは無いぞや」
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
係は
周章
(
あわ
)
てて、スウィッチをひねったり、機械をせわしく動かしたりした。が、それッ切りだった。もう打って来ない。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そこは少し離れてはゐたが、だん/\に危険が迫つて来て、皆んなは早くも
周章
(
あわ
)
ててゐた。やがてヴエスヴイアスのごく間近で大火焔が破裂した。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
道臣は盃を下に置き、千代松は眼鏡も帳面も算盤も一所に
懷中
(
ふところ
)
へ
捻
(
ね
)
ぢ込んで、京子の枕元へと急いだ。お駒は立つたり坐つたり、ただ
周章
(
あわ
)
ててゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
一人は、今、自分が伏していた所へ、弾丸がきて、土煙の上ったのを見ると、
周章
(
あわ
)
てて四つ這いに、引下った。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
もし再発したならば
周章
(
あわ
)
てないで、人のいない室に静かにねかせて鎮静するのを待つがいいと言われました。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
織田徳川勢の追撃急な上に、勝頼主従の退却も、しかも滝川に橋が沢山ないのであるから
頗
(
すこぶ
)
る危かった。余り
周章
(
あわ
)
てて居るので、相伝の旗を棄てたままにした。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その時
周章
(
あわ
)
てたところで仕方がありませんから……あなたは信じて下さいましょうが……あの田舎の優しい母親をこちらへ呼び寄せて一つ家に住みたいのです。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
はっと
吃驚
(
びっくり
)
して下をむいたとたんに二人の警官はすばやくピストルを取り出し形勢逆転する。仮面の男は
周章
(
あわ
)
てて逃げ出す。二人はあとを追いかける。舞台空虚。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
すると木樵はだんだんぐるっと円くまはって歩いてゐましたがいよいよひどく
周章
(
あわ
)
てだしてまるではあはあはあはあしながら何べんも同じ所をまはり出しました。
土神と狐
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「御免下さい。」と
蓮葉
(
はすは
)
のような、無邪気なような声で言って、スッと入って来た。そこに腰かけて、得意先の帳面を繰っていた小僧は、
周章
(
あわ
)
てて片隅へ
避
(
よ
)
けた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それがこちらを睨んだように思われたので
周章
(
あわ
)
てゝ戻ろうとして足元の
芥箱
(
ごみばこ
)
に
躓
(
つまず
)
くと、それに驚いて屋根へ駈登った
白斑
(
しろぶち
)
の猫に、かえって貞之進の方が驚かされた。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
中田は、ぶつぶつと
悪口
(
あっこう
)
を
呟
(
つぶや
)
きながら、顔をそらすと、ハッキリした
当
(
あて
)
はないのだが、どうやら駅らしい方へ、どんどん歩き出した。それを見た男は、急に
周章
(
あわ
)
てたように
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しかし、そう云ってしまうと彼女は何だか怖ろしい気がしたので、
周章
(
あわ
)
ててこう附け加えた。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
チヨンは
周章
(
あわ
)
てゝ与兵衛の肩に這上つて、
其
(
そ
)
の
襟
(
えり
)
の所にピツタリ
頭
(
かしら
)
を押しつけてゐるのです。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
「ま、待て、待てと言ったら、少し待ってくれ!」と、小平太はすっかり
周章
(
あわ
)
ててしまった。「そういちがいに言われても、わしにはお前を手に懸けることはできそうもないわい」
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「氷が溶けるのは、当然ではないか。
周章
(
あわ
)
ててはいけない」老博士は、人々をかえり
見
(
み
)
て、こう
戒
(
いまし
)
めるが、刻々に迫る死を怖れて、人々は、なおも、右往左往して悲鳴をあげている。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
『間違いだったんですよ。
周章
(
あわ
)
て者が、人殺しだなんて云い出したもんで——。大騒ぎになっちゃいましたんですが——。なあにね、急病で死んだんですよ。何んでもなかったんです』
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
がそれは、その時九州が空襲されたため、少し
周章
(
あわ
)
てて警報が出たのだった。
昔の店
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ですから貴方は、それが僕を刺戟するのに気がついたので、すぐに
周章
(
あわ
)
てふためいて云い直したのでしょう。けれども、その復誦には、今も云った韻律法を無視しなければなりませんでした。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
丈
(
たけ
)
高い彼の身體を包んだ外套は、
氷柱
(
こほりばしら
)
のやうに眞白だつた。私は、まつたく、
周章
(
あわ
)
てゝしまつた。そんな夜に、雪に閉ざゝれた谷からお客があらうとは、殆んど思つてもゐなかつたのだから。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
此
(
この
)
ひびきに
動顛
(
どうてん
)
して関内まづ待つてくれよと、半分頭
剃
(
そ
)
りかけしを
周章
(
あわ
)
て立さはぎ天井の板の厚き所はないかと逃廻り脱捨し
単羽織
(
ひとへばおり
)
の有程引かぶり、桑原桑原と身を縮めかた隅に
倒臥
(
たふれふし
)
たるをかしさ
雷談義
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
溺れる者を救はうとする、といふよりも、自分自身溺れんとして
周章
(
あわ
)
てふためいてゐる者のやうな、一種本能的な懸命なものが感ぜられた。私はそれに圧倒されて、身動きも出来なかつたのであつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
“周章”の意味
《名詞》
周 章 (しゅうしょう)
あわてふためくこと。うろたえること。
(出典:Wiktionary)
周
常用漢字
小4
部首:⼝
8画
章
常用漢字
小3
部首:⽴
11画
“周章”で始まる語句
周章狼狽
周章者
周章気味
周章氣味