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叱責
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しっせき
ふりがな文庫
“
叱責
(
しっせき
)” の例文
文楽や
歌舞伎
(
かぶき
)
に精通した一部の読者の
叱責
(
しっせき
)
あるいは微笑を買うであろうという、一種のうしろめたさを感じないわけにはゆかない。
生ける人形
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
祭壇に近い人々は、
遉
(
さすが
)
に振向きもしなかった。が、会葬者の
殆
(
ほとん
)
ど過半が、此無遠慮な
闖入者
(
ちんにゅうしゃ
)
に対して
叱責
(
しっせき
)
に近い注視を投げたのである。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
村重様が中国から信忠卿に
従
(
つ
)
いて帰るや否、安土へ召されて、信長公から烈しいご
叱責
(
しっせき
)
をうけたとか
面罵
(
めんば
)
されたとかいうことです。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お美代は、磯五に
叱責
(
しっせき
)
されて、しおしおと台所口のほうへ帰って行ったが、着物を濡らすまいとして、裾を引き上げて歩いていた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と激しく
叱責
(
しっせき
)
されたが、その時に乳母が眼を真赤に
脹
(
は
)
らして、オイ/\泣声を上げたので、野村は之は大へんな事が起ったのだなと思った。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
▼ もっと見る
クリストフは疾風のように飛び込んで彼の両腕をとらえ、憤然と彼を揺すぶりながら、激しい
叱責
(
しっせき
)
の言葉を浴びせかけ始めた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかも渠は交番を
出
(
い
)
でて、路に一個の老車夫を
叱責
(
しっせき
)
し、しかしてのちこのところに来たれるまで、ただに一回も
背後
(
うしろ
)
を振り返りしことあらず。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ミミイ嬢はタヌの
叱責
(
しっせき
)
に廉恥心を感じ、一
夕
(
せき
)
、五合余りの牛乳と一〇〇
瓦
(
グラム
)
のバタを
嚥下
(
えんか
)
して、山のように積んだ臓品のそばで自殺してしまった。
ノンシャラン道中記:08 燕尾服の自殺 ――ブルゴオニュの葡萄祭り――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それよりも青年が今までに見たこともないような、
烈
(
はげ
)
しい
叱責
(
しっせき
)
を加えている姿といった方が、この場の光景にふさわしい言葉だったかも知れません。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
数か月にわたる議論と
懇願
(
こんがん
)
と、
叱責
(
しっせき
)
と
慰撫
(
いぶ
)
とが続いた後、父親もとうとうわが子の熱心に動かされずにはいなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
弓矢奉行などがじかに呼びつけられる例は
稀
(
まれ
)
なことなので、丹後守は
叱責
(
しっせき
)
されるものと思ったのであろう、平伏した額のあたりは紙のように白かった。
日本婦道記:箭竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
聞くにたえぬ叫声や
叱責
(
しっせき
)
などにみちた家庭にいる時分から、彼女の真髄ともいうべき秘密をなしていたに相違ない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
弁信は、火の方に
面
(
おもて
)
を向けながらこう言いましたけれど、それはお銀様の
狼狽
(
ろうばい
)
を、
叱責
(
しっせき
)
するの言葉でもありません。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
深遠さを装い、実は皮相にのみ止まり、原因にさかのぼることなく結果をのみ考察するこの一派は、半可通の学説の高みから、街頭の
騒擾
(
そうじょう
)
を
叱責
(
しっせき
)
する。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
親父
(
おやじ
)
には絶えず
怒
(
おこ
)
られて
叱責
(
しっせき
)
され、
親戚
(
しんせき
)
の年上者からは監督され、教師には
鞭撻
(
べんたつ
)
され、精神的にも行動的にも、自由というものが全く許されてなかった。
老年と人生
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
科学というものは、整理された常識なのである。もっともこんなことをいっては、この方面の議論をしておられる一部の文学者の
叱責
(
しっせき
)
を買うかも知れない。
科学と文化
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
宰相は、新クレムリン宮を
後
(
あと
)
にするに際して、委員の一人をしてネルスキーに
叱責
(
しっせき
)
の言葉を伝達せしめられた。
地軸作戦:――金博士シリーズ・9――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今日民間に見るところの、
天狗憑
(
てんぐつ
)
きのごときこれなり。例えば、ある寺の小僧が和尚の
叱責
(
しっせき
)
をこうむりて、夕刻家より追い出だされ、自ら行く所を知らず。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そして、厳しく自分を
叱責
(
しっせき
)
する眼付きで端座し、間髪を入れぬ
迅
(
はや
)
さで再び静まりを逆転させた。見ていて梶は、鮮かな高田の手腕に必死の作業があったと思った。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし、今日どこにでもある東京の
握
(
にぎ
)
りを
真似
(
まね
)
したいかがわしいものは、江戸前が残念がる。みだりに「江戸前寿司」と看板に
標榜
(
ひょうぼう
)
する無責任さは
叱責
(
しっせき
)
せねばなるまい。
握り寿司の名人
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
たいていのご婦人ならばそういって、少なくも右門の失礼至極な無作法を
叱責
(
しっせき
)
するはずなのに、ところが青まゆのそれなる彼女にいたっては、いかにも奇怪でありました。
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
が、結局、あとからはなにを言ってもはじまらない。これらパッカアの失態にたいする
叱責
(
しっせき
)
のすべては、いわば
溢
(
あふ
)
れた牛乳の上に追加された無用の涙にしかすぎなかった。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
艶子はやっと気づいた様に、低い
叱責
(
しっせき
)
の声と共に、握られた手を引込めて、併しまだ逃げ出そうともせず、鉛筆を動かしていた。その調子が、妙に
軟
(
やわら
)
かく、
隙
(
すき
)
だらけに見えた。
五階の窓:01 合作の一(発端)
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その
復讐
(
ふくしゅう
)
か
否
(
いな
)
かそこまでは知らないが、人夫の一人の労働の割合に賃金が不足だというて、前夜白井に
叱責
(
しっせき
)
された男が、今朝になって急に病気になったから帰えるといい出して
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
しかし、かれにそそがれる目つきは、なかばは卑しげなものを見下すひかりで、なかばは、こういう界隈はあなたがたのくるところでないという
叱責
(
しっせき
)
さえも加わっているようであった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
けれども、どうにも、気が重い。私は口が
下手
(
へた
)
だから、そんないかめしい役所へ出て、きっと、へどもどまごついて、とんちんかんのことばかり口走り、意味なく
叱責
(
しっせき
)
されるであろう。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
幼時、煙草畑の草取りがいかに苦しかったか、一晩中、
叱責
(
しっせき
)
され、土間に立たされていて、蚊に責められた思い出なぞを私に語ったこともある。男や金のことでも、時々、嘘をついていた。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
屡〻
(
しばしば
)
自分の夢のなかにまで現はれたこともある。自らの乱行に
懶
(
ものう
)
く疲れはてた彼の夢の中で、この微笑は彼を
柔
(
やさ
)
しく
叱責
(
しっせき
)
した。あの微笑だ。彼はそれがモナ・リザの微笑であることに気づいた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
両親の
機嫌
(
きげん
)
見る見る変りて、不孝者よ、恩知らずよと
叱責
(
しっせき
)
したり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
‘かれの眼は常に論者の
怯懦
(
けふだ
)
を
叱責
(
しっせき
)
す。’
呼子と口笛
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
傷は、日にまして
快
(
よ
)
くなって行ったが、お信も、それを心に
病
(
や
)
むらしかった。兄に対して、何か、
悔悟
(
かいご
)
と、
叱責
(
しっせき
)
を、
恟々
(
おどおど
)
と待つ気ぶりも見える。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嘘
(
うそ
)
をついてるときには嘘にたいする
叱責
(
しっせき
)
をひどく怒ったくせに、今はその叱責の色を母の眼の中に見つけようとした。そのうちにもはや疑えない時が来た。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
我子の嫁には鬼のごときも、他人の妻には仏のごとく、動物憐護を説く舌は、かえって
奴婢
(
ぬひ
)
を
叱責
(
しっせき
)
せずや。乞食に米銭を
擲
(
なげう
)
つ
仁者
(
じんしゃ
)
、悩める親に滋味を供せず。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
前に言ったとおり、本来ジルノルマン氏はマリユスを偶像のように大事にしていた。ただ彼は、
叱責
(
しっせき
)
と時には
打擲
(
ちょうちゃく
)
さえ交じえる自己一流の仕方で愛していた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
女性が男性を弄ぶと貴君方男性は、
直
(
す
)
ぐ妖婦だとか毒婦だとか、あらん限りの悪名を浴びせかける。貴君などは、眼の色を変えてまで、
叱責
(
しっせき
)
なさろうとする。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それが小者の口から城中へ知れたので、かれは直政に呼びつけられてきびしく
叱責
(
しっせき
)
された。
青竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
警官たちの冷淡な身振りのなかに、無言の
叱責
(
しっせき
)
がこもっているのを、サト子は感じる。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
初代の
変心
(
へんしん
)
を
気遣
(
きづか
)
う理由は少しもなかったからである。初代も今はたった一人の母親の
叱責
(
しっせき
)
をさえ気にかけなかった。彼女は私以外の求婚に応ずる心など
微塵
(
みじん
)
もなかったからである。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それを
折悪
(
おりあ
)
しく来かかったTコオチャアに見つけられ、みんなはその場で
叱責
(
しっせき
)
されたばかりでなく、Tさんは主将の八郎さんに告げたので、八郎さんがまたみんなを呼びつけて
烈火
(
れっか
)
のように
怒
(
いか
)
り
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それが自分への
叱責
(
しっせき
)
であった事は温かい慈愛の
相
(
そう
)
の中に
秋霜
(
しゅうそう
)
のようなきびしい素振りを時々見せたのでも考えられた。
梅颸の杖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかしそういう抵抗のために、人々はいっそう激しく意地悪くせがんだ。あまり彼の反抗が横着になると、両親の
叱責
(
しっせき
)
まで加わって、
頬
(
ほお
)
を打たれることさえあった。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
マリユスが目の
叱責
(
しっせき
)
を彼女に与え終わるか終わらないうちに、一人の男がその道に現われた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
『お前は時計を返す
為
(
ため
)
に、あの夫人に
逢
(
あ
)
いたがっているのではない。時計を返すのを口実として、あの美しい夫人に逢いたがっているのではないか。』と
云
(
い
)
う
叱責
(
しっせき
)
に似た声を
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それは「どうしてあなたはそうお悪いんですの」という、やわらかな
叱責
(
しっせき
)
で幕があく。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
相川操一氏が、珠子を失った恨みをもこめて、三笠探偵を
叱責
(
しっせき
)
するように云った。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「余の儀でもありませんが、じつはこの清高、鎌倉へ
召喚
(
めしよ
)
ばれて、このたび、きついご
叱責
(
しっせき
)
をうけて帰りました」
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最も
辛辣
(
しんらつ
)
な
叱責
(
しっせき
)
も、これほど残忍ではなかったろう。クリストフはもう手段がないのを覚った。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
要するに彼は、手紙のことについては少し心苦しい点があって、マリユスの
叱責
(
しっせき
)
を恐れていた。でその苦境をきりぬけるために、最も簡単な方法を取って、ひどい
嘘
(
うそ
)
を言った。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
と
叱責
(
しっせき
)
するように訊ねた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
という
叱責
(
しっせき
)
が、家臣
菅屋
(
すがや
)
九右衛門、
長谷川竹
(
はせかわたけ
)
の両人から
厳
(
おごそ
)
かにここへ沙汰され、楽屋中の者は、色を失って、打ち
顫
(
ふる
)
えながら詫び入っていたところなのである。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
叱
部首:⼝
5画
責
常用漢字
小5
部首:⾙
11画
“叱責”で始まる語句
叱責的