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剥出
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むきだ
ふりがな文庫
“
剥出
(
むきだ
)” の例文
此返事
(
このへんじ
)
を
聞
(
き
)
いて、むつと
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つた。
頭巾
(
づきん
)
の
下
(
した
)
に
歯
(
は
)
を
剥出
(
むきだ
)
して、
血色
(
けつしよく
)
の
好
(
い
)
い
頸元
(
えりもと
)
に
伸
(
の
)
し
掛
(
かゝ
)
ると
向
(
むかう
)
は
後退
(
あとすざり
)
もしない。また
質
(
き
)
いて
見
(
み
)
た。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
と云いさして源次は、眼を真白く
剥出
(
むきだ
)
したまま、ユックリと唇を噛んで、
獣
(
けもの
)
のようにみっともなく流れ出る
涎
(
よだれ
)
をゴックリと飲み込んだ。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
剥出
(
むきだ
)
し是サ此子は
怖
(
こは
)
い事はない此伯父と一所に
歩行々々
(
あゆめ/\
)
と
引摺
(
ひきずり
)
行を娘はアレ/\
勘忍
(
かんにん
)
して下されませ
母樣
(
かゝさま
)
が待て居ますと
泣詫
(
なきわび
)
るを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
こんな所へ来てまでも、野侍を
剥出
(
むきだ
)
しに物をいう久米之丞の身ごなしが、一緒に来た月江には、ひどく不快に感じられます。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渋沢は、眼球を
剥出
(
むきだ
)
して、顔中を
痙攣
(
けいれん
)
させながら、
膝
(
ひざ
)
を突いて、土方へ倒れかかった。土方が避けたので、打伏しに
転
(
ころ
)
がると、動かなくなった。
近藤勇と科学
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
或
(
ある
)
学生さんが買物をするとて、お札を
剥出
(
むきだ
)
しに
掴
(
つか
)
んで、そこの窓の方を見ぬようにして通り過ぎたのですが、気が附いたらその札がありません。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
茂吉は胸を大きく波打たせ、
剥出
(
むきだ
)
された眼で相手を鋭く
睨
(
にら
)
みつけていたが、やがてくるりと
踵
(
きびす
)
をかえし、逃げるように裏手へ出て行ってしまった。
蛮人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
立会いに相手を
傲慢
(
ごうまん
)
で
呑
(
の
)
んでかかってから
軽蔑
(
けいべつ
)
の歯を
剥出
(
むきだ
)
して、意見を
噛
(
か
)
み合わす無遠慮な談敵を得て、彼等は
渾身
(
こんしん
)
の力が出し切れるように思った。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
遊牧民は非常に粗野で人と物をいうにも
剥出
(
むきだ
)
しで実に荒々しい風ですが、もうこの地方の住民は遊牧民とはすっかり違って言葉の使い方も幾分か都風になって居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
だが、そのかわり今度は更に
錯綜
(
さくそう
)
した視線の下に彼は
剥出
(
むきだ
)
しで
晒
(
さら
)
されるのであった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
一男の
鳥打帽子
(
とりうちぼうし
)
がさっと風に
捲
(
ま
)
きあげられて、いがぐり頭が
剥出
(
むきだ
)
しになった時には、熱心な見物人たちは我しらずうめいた。帽子は鉄骨にぶつかりぶつかり長くかかって落ちて行った。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
余り飲まない三造に、そう無理に勧めるでもなく、一人で盃を重ねる中に、M氏はその赤い鼻をますます赤くして脂を浮出させ、しかも絶えず黄色い歯を
剥出
(
むきだ
)
してニヤニヤし続けている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
御意
(
ぎょい
)
に
叶
(
かな
)
わぬとなると
瑣細
(
ささい
)
の事にまで眼を
剥出
(
むきだ
)
して御立腹遊ばす、言わば自由主義の圧制家という御方だから、哀れや属官の人々は
御機嫌
(
ごきげん
)
の取様に
迷
(
まごつ
)
いてウロウロする中に、独り昇は
迷
(
まごつ
)
かぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
道々
(
みち/\
)
も一
分
(
ぷん
)
の
絶間
(
たえま
)
もなく
喋
(
しやべ
)
り
續
(
つゞ
)
けて、カフカズ、ポーランドを
旅行
(
りよかう
)
したことなどを
話
(
はな
)
す。
而
(
さう
)
して
大聲
(
おほごゑ
)
で
眼
(
め
)
を
剥出
(
むきだ
)
し、
夢中
(
むちゆう
)
になつてドクトルの
顏
(
かほ
)
へはふツ/\と
息
(
いき
)
を
吐掛
(
ふつか
)
ける、
耳許
(
みゝもと
)
で
高笑
(
たかわらひ
)
する。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
牙と舌を
剥出
(
むきだ
)
して、犬ですね、
狆
(
ちん
)
か
面
(
つら
)
の長い洋犬などならまだしも、尻尾を
捲上
(
まきあ
)
げて、耳の
押立
(
おった
)
った、痩せて
赤剥
(
あかはげ
)
だらけなのが
喘
(
あえ
)
ぎながら
掻食
(
かっくら
)
う、と云っただけでも浅ましさが——ああ、そうだ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
剥出
(
むきだ
)
しの曲りくねった垂木には一寸程も埃が積もっていた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
剥出
(
むきだ
)
し
叱
(
しか
)
り付ればヘイ如何樣に申上ましても御取
上
(
あげ
)
御座らず九助儀は
無實
(
むじつ
)
の
災難
(
さいなん
)
に陷ります事見るに堪兼候と云を理左衞門大音上げ
默止
(
だまれ
)
此方は善惡を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
大助の手を振るようすが可笑しいといって、女中は歯を
剥出
(
むきだ
)
しにして笑いこけた。……食事が終ってから、どちらが云いだすともなく泊ることになった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
義歯をクワット
剥出
(
むきだ
)
した正木博士の笑い顔が、五寸四方位の大きさに目の荒い
粗
(
あら
)
い写真版で刷り出してあった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
生々しい木肌を
剥出
(
むきだ
)
して、裂かれた琵琶の胴は胴の中の構造を、明らさまに
燈
(
ひ
)
の下に
晒
(
さら
)
している。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
曾川の従者が、左右から、縁側から首を伸ばして、眺めていた。右源太は、油紙を一枚一枚
剥
(
は
)
いで、布をとり、綿をとって、
蒼白
(
あおじろ
)
くふくれて、変色している首を
剥出
(
むきだ
)
した。
三人の相馬大作
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
道々
(
みちみち
)
も一
分
(
ぷん
)
の
絶間
(
たえま
)
もなく
喋
(
しゃべ
)
り
続
(
つづ
)
けて、カフカズ、ポーランドを
旅行
(
りょこう
)
したことなどを
話
(
はな
)
す。そうして
大声
(
おおごえ
)
で
眼
(
め
)
を
剥出
(
むきだ
)
し、
夢中
(
むちゅう
)
になってドクトルの
顔
(
かお
)
へはふッはふッと
息
(
いき
)
を
吐掛
(
ふっか
)
ける、
耳許
(
みみもと
)
で
高笑
(
たかわらい
)
する。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
叔母が
面
(
つら
)
を
脹
(
ふく
)
らしても眼を
剥出
(
むきだ
)
しても、それしきの事なら忍びもなる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
下廊下を、元気よく玄関へ出ると、女連の手は早い、二人で
歩行板
(
あゆみいた
)
を
衝
(
つ
)
と渡って、自分たちで下駄を揃えたから、番頭は
吃驚
(
びっくり
)
して、長靴を
掴
(
つか
)
んだなりで、金歯を
剥出
(
むきだ
)
しに、世辞笑いで、お
叩頭
(
じぎ
)
をした。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なぞと挨拶にでも云う者が居るとオナリ婆さんは、きまり切って
乱杙歯
(
らんぐいば
)
を
剥出
(
むきだ
)
してイヤな笑い方をした。片足を敷居の外に出しながら、すこし勢込んで振返った。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして船長が急いで抱き起すと、——彼は恐怖で
剥出
(
むきだ
)
された眼を海の方へ向けながら
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と詫びようとした時、相手の男は
凄
(
すさま
)
じく歯を
剥出
(
むきだ
)
したと思うと、いきなり
扉口
(
ドアぐち
)
へ飛鳥のように
跳
(
とび
)
ついた。そしてスイッチの音がしたとみる刹那、部屋中の電灯がぱっと消えて
四辺
(
あたり
)
は真暗闇になった。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
鬚男は黄色い健康な歯を
剥出
(
むきだ
)
しながら、
工場
(
こうば
)
の上の青空を凝視した。
老巡査
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
三好が白い歯を
剥出
(
むきだ
)
して笑い笑い又野の前に
立塞
(
たちふさ
)
がった。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
剥
部首:⼑
10画
出
常用漢字
小1
部首:⼐
5画
“剥”で始まる語句
剥
剥製
剥落
剥奪
剥身
剥取
剥脱
剥離
剥啄
剥繰