あたひ)” の例文
殊に一人稱の敍述に似もやらず、作中の人のすべてが、何れも截然とした特色を持つ個々の性格として躍動してゐるのは敬服にあたひする。
とにかく初期微動繼續時間しよきびどうけいぞくじかんはじめとして、發震時はつしんじ其他そのたかんするあたひ計測けいそくし、これを器械觀測きかいかんそく結果けつか比較ひかくすることすこぶ興味きようみおほいことである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
で、高尾たかを薄雲うすぐも芳野よしのなど絶世ぜつせい美人びじん身代金みのしろきんすなは人參にんじん一兩いちりやうあたひは、名高なだか遊女おいらん一人いちにん相當さうたうするのであるから、けだ容易よういなわけのものではない。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おつぎは仕事しごとにかゝるときには半纏はんてんはとつてえだける。おつぎの姿すがたやうやむら注目ちうもくあたひした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれ今更いまさらながらかれ級友きふいうが、かれ侮蔑ぶべつあたひする以上いじやうのある動機どうきから、貴重きちよう時間じかんをしまずに、相國寺しやうこくじつたのではなからうかとかんがして、自分じぶん輕薄けいはくふかぢた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大童おほわらはとなつて必死にたゝかふ間に、頼朝めは杉山まで逃げ込んだ。高綱も幸ひに命をまつたうした。つゞいては宇治川先陣の功名、それだけでも二ヶ國三ヶ國のあたひはあらう。
佐々木高綱 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
自らおもへらく、吾夫わがをつとこそ当時恋と富とのあたひを知らざりし己を欺き、むなしく輝ける富を示して、るべくもあらざりし恋を奪ひけるよ、と悔の余はかかる恨をもひとせて、彼は己をあやまりしをば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
自分じぶん觀測所かんそくじよとの間隔かんかく一二里以内いちにりいないであるならば、兩方りようほう時刻じこくならび時間じかんとも大體だいたいおなあたひるべきはずである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その上に、兎角綺麗事になりたがる嫌ひのある此作者としては、きび/\と力に充ちてゐる事も感歎にあたひする。けれどもそれは物語に特有の面白さである。
とまりにてゐて、ころんで、たれかのほんんでゐた雅量がりやうは、推服すゐふくあたひする。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この急に乗じてこれを売る、一杯の水もそのあたひ玉漿ぎよくしようを盛るに異る無し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すなは初期微動繼續時間しよきびどうけいぞくじかん秒數びようすうはちといふ係數けいすうけると、震原距離しんげんきよりおよそのあたひきろめーとるるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さばを、さば三番叟さんばそう、とすてきに威勢ゐせいよくる、おや/\、初鰹はつがつをいきほひだよ。いわし五月ごぐわつしゆんとす。さし網鰯あみいわしとて、すなのまゝ、ざる盤臺はんだいにころがる。うそにあらず、さばぼらほどのおほきさなり。あたひやすし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なかなかここにはその寒さを忍ぶあたひあらぬを、彼はされども少時しばし居て、又空をながめ、又冬枯ふゆがれ見遣みやり、おなじき日の光を仰ぎ、同き羽子の音を聞きて、おさへんとはしたりけれども抑へ難さのつひに苦く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)