何程いくら)” の例文
揃っていれば、勿論こんな店にあるべきものではないはずだが、それにしても何程いくらというだろうと、あたいを聞くと、ほんの端金はしたがねだった。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
知らん男ぢや無いですか。何程いくら、酒が嫌ひでも、飯が嫌ひでも、日本人の好誼よしみとして、殊に今夜の如きは一月一日、元旦のお正月だ!。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「鶯張は今の人が何程いくら工夫しても出来ないというが、建築家の意見は何うだね? 矢張り埃及エジプト木乃伊ミイラ見たいに堙滅いんめつした技術かしら?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
... 子爵が何程いくらでも資本を出すから世界人道のため来春を期して一大雑誌を起したらどうだとの事だ。無論君も同意だろうね」中川「勿論もちろんさ。 ...
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
金魚鉢の閼伽あかをかえること、盆栽の棚を洗うこと、蜘蛛くもの巣を払うこと、ようとさえ思えばることは何程いくらでも出て来た。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お前さん怒るなら何程いくらでもお怒り。今夜という今夜は私はどうあっても言うだけ言うよ」とお源は急促込せきこんで言った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
なし中にはかせぎ人がわづらひてくふや喰ずの極貧者ごくひんものには持合せの金を何程いくらか與へ慈善じぜんの道を好むのも掛替かけがへの無き兩親に不幸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
高原にて路に迷う すると広い原の中でどういう風にみちを失ったのか何程いくら行ってもその川のあるところに出ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
神様の嫁御よめごでは、物足らぬからではあるまいか、エ、長二、お前が何程いくら物識ものしりでも、わしの方が年を取つて居りますぞ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これならまず大丈夫勝利だが、今度はこれを拵えるに全部で何程いくら金が掛かるかこれが問題です。
母親は無けなしの巾着さげて出て駿河臺まで何程いくらでゆくと門なる車夫に聲をかくるを、あ、お母樣それは私がやりまする、有がたう御座んしたと温順おとなしく挨拶して、格子戸くゞれば顏に袖
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何程いくら急いでも只今の十時、其の頃の四ツ余程𢌞りました頃で、五日の宵月よいづきに傾きほのぐらく、庚申塚までは三町ばかり手前の所まで参りますと、馬は自然に主人の危難を悟ったものか
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
照子の顔をじろりとながめ、「おい、姉様ねえさん。こりゃ何程いくらだい。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
廻したくば何程いくらでも廻せ。
我は労働者よ (新字新仮名) / 根岸正吉(著)
「ねえさん、何程いくら
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
揃つて居れば、勿論こんな店にあるべきものでは無い筈だが、それにしても何程いくらといふだらうと、価を聞くと、ほんの端金だつた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
出たいと思えば、何程いくらでも出る方法は有りますがね——隣の娘なんか借着で見合をしましたあね、御覧なさい、それを
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この肋膜炎ろくまくえんからお礼が何程いくら貰えるなんてことはっとも考えていない。画家が絵を描いている時も同じことさ。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
残りの十五円から家賃も払い車賃も払い外の諸入費を払ったら食物の入費に向ける金が何程いくら残りましょう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それで、直段ねだん何程いくらかと聞くと、三円だというので、その安いのにはまた驚きました。
城富聞てハイ酒代は何程いくらでも上ますからくびは何卒私しへ下さりませと申に非人ひにん共夫ならば大負おほまけにして金二分もおかつしやい城富ハイ夫は御安いこと若し/\然樣ならば何卒富右衞門のくび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
母親は無けなしの巾着きんちやくさげて出て駿河台まで何程いくらでゆくとかどなる車夫に声をかくるを、あ、お母様それは私がやりまする、有がたう御座んしたと温順おとなしく挨拶して、格子戸かうしどくぐれば顔にそで
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これは日本の結納ゆいのうとは違う。もちろん何程いくらという内約も何もない。そこで娘と息子の両親は例のごとく卜筮者うらないしゃあるいは神下かみおろしに聞いて吉日を択んで、いよいよ結婚の礼式を行う準備よういをするのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「はッはッお何程いくらで遣わされまする。」と震い声。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを相手の女に寄せさせたことが数々しばしば有った、実に頼もしい有難いおっかさんで、坊ちゃん挙周はお蔭で何程いくら好い男になっていたか知れない。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
乃公おれは子供を叱りたくないが、仕方なしに叱るのだ。叱られるお前よりか叱る乃公の方が何程いくら苦しいか知れない。ちっと気をつけて叱らせないようにしろ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何程いくら私ばかり焦心あせつて見たところで、肝心かんじんうちひとなんにも為ずに飲んだでは、やりきれる筈がごはせん。其を思ふと、私はもう働く気も何も無くなつてしまふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
母親はゝおやけなしの巾着きんちやくさげて駿河臺するがだいまで何程いくらでゆくとかどなる車夫しやふこゑをかくるを、あ、お母樣つかさんそれはわたしがやりまする、ありがたう御座ござんしたと温順おとなしく挨拶あいさつして、格子戸かうしどくゞればかほそで
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私は下谷北清島町に生まれ、光明氏もやはり下谷で、北清島町からは何程いくらもない稲荷町の宮彫師石川家に生まれた人です(稲荷町は行徳寺ぎょうとくじの稲荷と柳の稲荷とふたつあるが、光明氏は柳の稲荷の方)
何程いくらいふても此方こつちが知らぬ事なればかまいは無けれど御かみ御前ごぜんをつとの手前私しは面目めんぼくないぞへと云へば長庵大聲おほごゑあげ此女め今と成て御上の前夫の手前のはゞかるもよく出來できつれにげくれろの一しよに殺して呉ろのと言た事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
向うでも笑って何程いくら何程いくらと言う。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それからまた、何程いくら詰らぬ人にだつて、鼎の足を折つたために身を投げて貰つたりなぞしたくは有るまい。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
『はい、立つようにさえして貰えば何も申しません』と勘六は最早もう何程いくらにかなったと思ったようでした。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あの時」と森彦は火鉢の上で両手をんで、「Mさんが郷里くにの総代で俺のところへ来て、小泉、貴様はこの事件の為に何程いくらつかった、それを書いて出せ、と言うから、 ...
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
狆なら鳥屋へ行っても何程いくらもあるが好いものはまれです。
何程いくら儲かるにしても唯成金共の用足しを勤めるだけのことで決して正業じゃありませんな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何程いくら襤褸でも仕方ない刺子絆纏さしこばんてんも上に被ておいでなされ、と戸棚がた/\明けにかゝるを、十兵衞不興気の眼でぢつと見ながら、あゝ構ふてくれずともよい、出ては行かぬは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
もとより何程いくらでも好いから引取つて貰ふ気。直に話はまとまつた。あゝ書物ばかりは売るもので無いと、かねて丑松も思はないでは無いが、然しこゝへ持つて来たのは特別の事情がある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
誤植だらけの活版本で何程いくら万葉集を研究したからとて、真の研究が成立たう訳は無い理屈だから、何様も学科によつては骨董的になるのがホントで、ならぬのがウソか横着かだ。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
過度の疲労に刺激されて、かへつてく寝就かれなかつた。例の癖で、頭を枕につけると、またお志保のことを思出した。尤も何程いくら心に描いて見ても、明瞭あきらかに其人が浮んだためしは無い。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
那麽あんな鬼のような手をして不恰好なってありゃしない。家作かさくが何軒あるの地所を何程いくら持っているのって外、何一つ碌な口も利けない芸無しの癖に。年甲斐もなくまあの赤いネクタイは何でしょう。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其壁を何程いくらも余さない位な大きな古びた画の軸がピタリと懸つてゐる。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「仙台は好かったよ。葡萄ばたけはある、梨畠はある……読みたいと思う書籍ほん何程いくらでも借りて来られる……彼処あすこへ行って僕も夜が明けたような気がしたサ……あれまでというものは、君、死んでいたようなものだったからね」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)