)” の例文
「ハハ。恐れ入りまするが手前も昔取った杵柄きねづか……思い寄りも御座いまするでこの場はおかせ下されませい。これから直ぐに……」
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『ボズさん!』とぼくおもはず涙聲なみだごゑんだ。きみ狂氣きちがひ眞似まねをするとたまふか。ぼくじつ滿眼まんがんなんだつるにかした。(畧)
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
決して殺す気はないが、れは大参事にかしてあるから、大参事さえ助けると云う気になれば、私には勿論もちろん異論はないと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ここにその足名椎の神をしてりたまはく、「いましをば我が宮のおびとけむ」と告りたまひ、また名を稻田いなだ宮主みやぬし須賀すが八耳やつみみの神と負せたまひき。
「だが君の厄介になるのは気の毒だな。僕は実は宿のこともBさんにかせっきりになっているんだが、………」
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから眼をつむって、草の軟かな香りを嗅ぎながら何か心を整えて呉れる考えに自分をかせたかった。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それも東京にでも居ることならば氣やすさにかせて、もとより奉公などゝいふでは無く奧樣に細工ものでも習ふ了簡にて行くも宜けれど、今が今田舍へこもりて
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
り候実はただ今すぐにても御面会致し親しく懇願致度いたしたき事件出来しゅったい候が何分意にかさず候故手紙にて申上候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ただただ天命にかし、自分は自分の義を守り、生涯を潔く送るまでの事と覚悟致しておりました。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
それをわたしは眺めやりましたが(あれにかせて置けば大丈夫さ)と、こう心中で思いまして、そのまま先へ進んで行きました。足場のよいところまでやって来ました。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし、ふのをしんじないで、わたしかせることを不安心ふあんしんおもふなら、提灯ちやうちんうへ松明たいまつかずふやして、鉄砲てつぱう持参じさんで、たいつくつて、喇叭らつぱいておさがしなさい、それ御勝手ごかつてです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼はいきなり男の腰を力かせに突いた。男の身体はゆらゆらと蹌踉よろめいたと思ったら、そのまま欄干を越えて、どさりと一階の客席の真中に墜落してしまった。わーっ! という叫び声。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
力の不足、自分一人ではどうしようもない力の不足——りすがることのできるものに何もかも打ちかしてりすがりたいあこがれ、——そしてどこにもそんなもののない喰い入るような物足らなさ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
何がなおもしろい職を得たいものと、まず東京じゅうを足にかして遍巡へめぐり歩いた。そして思いついたのは新聞売りと砂書き。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
學校がくかうかよひにからぬともでも出來できてはならず、一さいれにかせてまあてくれと親切しんせつおつしやつてお師匠しヽようさまから毎日まいにちのお出稽古でげいこ月謝げつしやしてとヾけして御馳走ごちそうしてくるまして
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なあに、正体を見れば、閑古鳥にしろ、じきそこいらの樹の枝か葉隠れに、翼を掻込かいこんだのが、けろりとした目で、ひまかして、退屈まぎれに独言ひとりごとを言っているのであろうけれども、心あって聞く者が
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天皇、ここに阿知の直を、始めてくらつかさ二二けたまひ、また粮地たどころ二三を賜ひき。またこの御世に、若櫻部わかさくらべの臣等に、若櫻部といふ名を賜ひ、また比賣陀ひめだの君等に、比賣陀の君といふかばねを賜ひき。
けれどしようことなしにねむるのはあたら一生涯しやうがいの一部分ぶゝんをたゞでくすやうな氣がしてすこぶ不愉快ふゆくわいかんずる、ところいま場合ばあひ如何いかんともがたい、とづるにかしていた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)