串戯じょうだん)” の例文
旧字:串戲
学円 ああ、うっかり泊りなぞお聞きなさらぬがい。言尻ことばじりに着いて、宿の御無心申さんとも限らんぞ。はははは、いや、串戯じょうだんじゃ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだん交りにいわれた事があり、そしてこの血圧の低い事と脈の柔かい事から推しますと、まず私は脳溢血に罹る事はないように思われます。
「いえ、串戯じょうだんじゃ有りませんよ、真実に見えないんですよ……洋燈の側なら何でも能く分りますが、すこし離れると最早何物なんにも分りません」
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
串戯じょうだんではないのですよ。この間もあなたに話した家持ちにしたいという一件……あれを是非実行したいといわれるのです。
「今日まで絵にも見た事のない美しい娘を見つけ出した。なろう事なら妻にもらい受けて、江戸へ同伴致したい」それが串戯じょうだんとも思われなかった。
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「え、何を言ッてるんだね。吉里さん、お前さん本気で……。ははははは。串戯じょうだんを言ッて、私をからかッたッて……」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
遠慮であったのと御邪魔してはならぬという考えから度々たびたびは参りませんでしたが、比較的に親しく御話を承り少しは串戯じょうだんも申しましたが、死なれて急に何となく物足らないような心地になり
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
が、串戯じょうだんではありません、容色きりょう風采とりなりこの人に向って、つい(巡礼結構)といった下に、思わず胸のせまることがあったのです。——
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最初はまるで串戯じょうだんのように話した話が、三週間目には、もう柱が建っている。実に気の早いことでありました。
今日私の血圧は低く脈は柔かくて若い人と同じであるので、医者は串戯じょうだん半分まずこの分ならばあと三十年は大丈夫ダといっていますが、しかしこれをお世辞と聞いてその半分生きても大したもんです。
どうかすると私は串戯じょうだん半分に家のものに向って
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ、人様のもので、義理をするんだよ、こんな呑気のんきッちゃありやしない。串戯じょうだんはよして、謹さん、東京こっちは炭が高いんですってね。」
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
話ははやく、四月八日釈迦の誕生日には中心になる四本の柱が立って建前というまでに仕事が運んでいました。最初はまるで串戯じょうだんのように話した話が、三週間目には、もう柱が建っている。
「不可いたって、可いたって、そんな身体からだで、あの中へ揉込まれて、串戯じょうだんじゃアありませんぜ。髪の毛でもつかまったらどうします。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんらしく言いながら、果敢はかないお蔦の姿につけ、なさけにもろく崩折くずおれつつ、お妙を中におもてを背けて、紛らす煙草の煙も無かった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わっしが、私が参りますよ、串戯じょうだんじゃない。てッて、飛出すのも余り無遠慮過ぎますかい、へ、」と結んだ口と、同じ手つきで天窓あたまを掻く。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だっておい四たび素帰すがえりをしたぜ、串戯じょうだんじゃあない。ほんとうに中洲なかずからお運び遊ばすんじゃあ、間に橋一個ひとつ、お大抵ではございませんよ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんじゃない。」と余りその見透みえすいた世辞の苦々にがにがしさに、織次は我知らず打棄うっちゃるように言った。とそのことばが激しかったか
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私あ何とも思やしない、串戯じょうだんさ。なぜね、そういうことを聞いたら、そりゃ可愛がってくれますとも、とこうお言いじゃないッて云うのさ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかにも伸々のびのび寛容ゆったりして、串戯じょうだんの一つも言えそうな、何の隔てもない様子だったが、私は何だか、悪い処へ来合せでもしたように、急込せきこんで
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんではなくってよ。貴郎あなたが持って来て、あそこへ据えてから、玄関のかたなんぞも、この間中種々いろんな事を言ってるんですよ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちょいと、串戯じょうだんじゃあないよ、お前様方まえさんがたはどうしたもんです。これお放し、あれさ、お放しというに、両方とも恐しい力だ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あら、真個ほんとうだ、串戯じょうだんじゃないわ、叔母さん、こたまだ、こたまだッて鳴いてるわね、中でも大きな声なのねえ、叔母さん。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜昼を分けるように、下の土は冷たく濡れて、黒くなって、裾が薄暗く見えたんで、いや、串戯じょうだんはよして余り艶麗あでやか過ぎる。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
言った方もたわむれに、聞くひと串戯じょうだんらしく打消したが、松崎は、かえって、うっかりしていた伝説いいつたえを、夢のように思出した。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんじゃありません。……(お手水……)の時のごときは、頭から霜を浴びて潟の底へ引込まれるかと思ったのさ。」
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久女八が土蜘蛛をやっている、能がかりで評判なあの糸が、破風はふか、棟から抜出したんだろう。そんな事を、串戯じょうだんでなくお思いなすったそうです。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一の烏 いや、串戯じょうだんけ。俺は先刻さっきから思う事だ、待設けの珍味もいが、ここに目の前に転がった餌食はどうだ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一の烏 いや、串戯じょうだんけ。俺は先刻さっきから思ふ事だ、待設まちもうけの珍味もいが、こゝに目の前に転がつた餌食はうだ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
じょう串戯じょうだんをいっちゃ不可ません。誰がそんな、だってお前さん、火の玉の一件じゃありませんか。ええ、おかみさん。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんを云っちゃ困る……これから行って逢えるようなら、橋の上で巡査につかまる、そんな色消しは見せやしない。……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ほんとうに串戯じょうだんではないわ! 一家の浮沈と云ったような場合ですからね。私もどんなに苦労だか知れないんだもの。御覧なさい、せたでしょう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんにも、にょの字へ、紅をつけたろうなぞッてお話でした。塔婆は包んでありません。婦人の裸もおなじです。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
招いたような形だが、串戯じょうだんじゃあない、人が行ったので閉めたのさ。あとで思ってもまったく色が白かった、うつくしい女の手だよ——あ、どうした。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何、串戯じょうだんなものか。」と言う時、織次は巻莨まきたばこを火鉢にさして俯向うつむいて莞爾にっこりした。面色おももちりんとしながらやさしかった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、串戯じょうだんはよして、その貴女あなた、恋しい、したわしい、そしてどうしても、もうえない、とお言いなすった、そのかたの事を御覧なさるでしょうね。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんじゃありませんぜ。ね、それ、何だかうっすりと美しい五色の霧が、冷々ひやひやかかるようです。……変にすごいようですぜ。亀が昇天するのかも知れません。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや、師匠、串戯じょうだんは止してさ、蝶吉が帰りさえすりゃ、是非その御一統が一杯ありつこうという寸法があるんでさ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実際、串戯じょうだんではない。そのくらいなんですもの。仏教はこれから法燈ほうとうの輝く時です。それだのに、何故なぜか、貴下あんたがたが因循いんじゅんして引込思案ひっこみじあんでいらっしゃる。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんにしてもと、私は吃驚びっくりして、ことばも出ぬのに、女はすぐに幅狭はばぜまな帯を解いた。膝へ手繰たぐると、そでを両方へ引落ひきおとして、雪を分けるように、するりと脱ぐ。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんじゃあがあせん、わっし一期いちごで、ダーだと思ったね、つちん中へ顔をうずめておさん、ずるずると引摺ひきずられたから、ぐらぐらと来て気が遠くなったんで。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その嬰児あかんぼが、串戯じょうだんにも、心中の仕損いなどという。——いずれ、あの、いけずな御母堂から、いつかその前後の事を聞かされて、それで知っているんだね。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
親身に心配して下さるのを私、串戯じょうだんを云って済みません。まったく身でも投げそうに、それは見えましたでしょうとも。一人で、こんな処にぼんやりして。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
串戯じょうだんに瓶の底を傾けて、一つ医師せんせいが振った時、底の沈澱よどみがむらむらと立って、けむのように蛇身をいたわ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云ってな、どっかり知らぬうち店頭みせさきへ腰を落込おとしこんで、一服無心をした処……あすこを読むと串戯じょうだんではない。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一船のせよう。あいかわらず女の出来ない精進男に、すじか、竹輪か、こってりとした処を食わせたい。いや串戯じょうだんはよして、内は柳町やなぎちょう、菎蒻閻魔のすぐわきだ。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「音がしましたわ、串戯じょうだんではありません。さぞお痛かったでしょうねえ。怪我をしたんじゃありませんか。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれ、串戯じょうだんじゃねえ。これが嘘なら、わっしてえ場違ばちげえだ。ええ、旦那、河野の本家は静岡で、医者だろうね。そら、御覧ごろうじろ、河野ッてえから気がつかなかった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は串戯じょうだんだけれどもね、うっかり、人を信じて、生命いのちの親などと思っては不可いけません。人間は外面そとづらに出さないで、どういう不了簡ふりょうけんを持っていないとも限りません。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ほんとうに夫人おくさん、気を落着けて下さらんでは不可いけません。突然いきなり海へ飛込もうとなすったりなんぞして、串戯じょうだんではない。ええ、夫人おくさん、心がたしかになったですか。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)