中心ちうしん)” の例文
平岡は其時かほ中心ちうしんに一種の神経を寄せてゐた。かぜいても、すなんでも、強い刺激を受けさうなまゆまゆ継目つぎめを、はゞからず、ぴくつかせてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今晩こんばん——十時じふじから十一時じふいちじまでのあひだに、颶風ぐふう中心ちうしん東京とうきやう通過つうくわするから、みなさん、おけなさるやうにといふ、たゞいま警官けいくわんから御注意ごちういがありました。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中心ちうしんに一ぽん青竹あをだけてられて先端せんたんあをあかとのかさねた色紙いろがみつゝんである。周圍しうゐにはれも四ほん青竹あをだけてられてそれにはなはつてある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
米國經濟界べいこくけいざいかい全般ぜんぱんには何等なんら懸念けねんすべき状態じやうたいみとめざるも、人氣にんき中心ちうしんたる證劵市場しようけんしぢやう大變動だいへんどうきたしたことであるからいきほ生糸相場きいとさうばにも波及はきふして十ぐわつ初旬しよじゆんより低下ていか趨勢すうせいとなり
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
光沢つやふかき葉の中心ちうしんにぢつととどまる。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さらぬだに、地震ぢしん引傾ひつかしいでゐる借屋しやくやである。颶風ぐふう中心ちうしんとほるより氣味きみわるい。——むね引緊ひきしめ、そであはせて、ゐすくむと、や、や、次第しだい大風おほかぜれせまる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勘次かんじ藁俵わらだはらへて、さうしてはししばつたちひさなわらたばまるひらいて、それをあしそこんでかゝと中心ちうしんあしとを筆規ぶんまはしのやうにしてぐる/\とまはりながらまるたはらぼつちをつくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ始終論理に苦しめられてゐたのは事実である。それから時々とき/″\あたま中心ちうしんが、大弓だいきうまとの様に、二重にぢうもしくは三重さんぢうにかさなる様に感ずる事があつた。ことに、今日けふあさから左様そんな心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぶくろ取付とりついた難破船なんぱせんおきのやうに、提灯ちやうちんひとつをたよりにして、暗闇くらやみにたゞよふうち、さあ、ときかれこれ、やがて十二時じふにじぎたとおもふと、所爲せゐか、その中心ちうしんとほぎたやうに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
地獄ぢごくぶやうにすべむと、あを火鉢ひばち金色きんいろひかつて、座布團ざぶとん一枚いちまい、ありのまゝに、萌黄もえぎほそ覆輪ふくりんつて、しゆとも、とも、るつぼのたゞれたごとくにとろけて、燃拔もえぬけた中心ちうしんが、藥研やげんくぼんで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)