餌食ゑじき)” の例文
よるになると方々ほう/″\あるまはつて、たけのこ松茸まつたけいもいね大豆等だいずなど農作物のうさくぶつをあらしたり、ひ、野鼠のねずみうさぎなどもとらへて餌食ゑじきにします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
はやこの上はこの身を以て親の餌食ゑじきとならんものと、いきなり堅く身をちゞめ、息を殺してはりより床へと落ちなされたのぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
おれの妻の生んだ粟津子あはつこは、罪びとの子として、何処かへ連れて行かれ、山野のけだものの餌食ゑじきになつたのだらう。可愛さうな妻よ。哀なむすこよ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
今度の事件はたゞ單に普通の處女むすめが老人の餌食ゑじきになるといふよりも、更に一種烈しい苦痛であるに相違ない。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
野外やぐわいさら雨露あめつゆうたれて鳶烏とびからす餌食ゑじきと成こと我が恥よりは先祖せんぞ恥辱ちじよくなりかへす/″\も口惜くちをしき次第かな女房おみねさぞかなしなげくらんと五ざうしぼる血の涙に前後正體無りけるやゝ有て心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くらうちには彼奴あいつの様ないやなものがる。此のうちの者は皆彼奴あいつ餌食ゑじきなんだ。』
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
言へなかつたら、貴様の片羽へし折つて、ねずみ餌食ゑじきにしてくれるから。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
マーキュ おい、ベンヺーリオー、何處どこうちなかれてってくれ、はやうせぬと氣絶きぜつしさうぢゃ。畜生ちくしゃう兩方りょうはう奴等やつら! とう/\おれ蛆蟲うじむし餌食ゑじきにしてしまひをった。まゐった、しっかりまゐった。
それ人間も、鱶鮫ふかざめも、殘害ざんがいの徒も、餌食ゑじき等も
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
餌食ゑじきとならばなかなかに心安かるこの日かな
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
千仭深き淵めがけ、魚の餌食ゑじきと抛げ飛ばす。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
わたくしを老いぼれの餌食ゑじきにさせない。
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
あへなくも泡立あはだつふみ落入おちいりて、鰐魚わに餌食ゑじき
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
沢山のかにの殻は、そやつが今まで餌食ゑじきにしてゐたものだつたのです。
動く海底 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それ人間も、鱶鮫ふかざめも、残害ざんがいの徒も、餌食ゑじき等も
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
所持せし故にや加田かだうらにて切害せつがいされ死骸しがいは海中へいれ申候しか相見え申さず此浦このうらには鰐鮫わにざめすみ候故大方はさめ餌食ゑじきと相成候事と存られ候衣類いるゐならびかさは血に染り濱邊に打上うちあげ是有候故濱奉行へ御屆に相成候かつ村中不便ふびんに存じ師匠ししやう感應院のはかそば塚標はかじるし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幾千萬の昆蟲が、うなりてつど餌食ゑじきかな。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
身に付ゐたるが天神丸の巖石に打付うちつけられし機會はずみはるかの岩の上へ打上られしばし正氣しやうきも有ざりけるやゝときすぎて心付ほつと一いきつきゆめの覺し如くさるにても船は如何せしやとかすかにてら宵月よひづきの光りにすかし見ば廿人の者共は如何にせしや一人もかげだになし無漸むざん鯨魚くぢら餌食ゑじきと成しか其か中にてもわれひとりからくいのちたすかりしは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幾千万の昆虫が、うなりてつど餌食ゑじきかな。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)