風聞ふうぶん)” の例文
途々みちみち風聞ふうぶんによれば、司馬都督には、洛陽へのぼるともっぱら沙汰いたしておるが、何故いま、みかどもおわさぬ都へわざわざお上りなさるのか
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちまた風聞ふうぶんにも聞き及んだが、そやつは日頃予に恨みを含んで、あわよくば予が命を奪おうなどと、大それた企てさえ致してると申す事じゃ。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一揆いっきの内部のことには知識がなく、外部の日本人は特に切支丹キリシタン宗門の内情に不案内であるし、外国人も間接的な風聞ふうぶんを書きとめている程度にすぎない。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
かつて山の娘の間から一人の悪い風聞ふうぶんを伝えたものがないということが、山の娘の一つの誇りでありました。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
かゝ風聞ふうぶんきこえなば、一家中いつかちうふにおよばず、領分内りやうぶんない百姓ひやくしやうまでみななんぢかんがみて、飼鳥かひどり遊戲あそび自然しぜんむべし。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さぐられけるに幸手宿其外そのほかの評判には權現堂の人殺しは富右衞門にては有まじとの風聞ふうぶんゆゑ六月廿六日より七月四日迄七日のあひだ富右衞門がとまりし所を詮鑿せんさく有に左の通り
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されば櫻木大佐さくらぎたいさふたゝ日本につぽんかへつたものとすれば、その勳功くんこう日月じつげつよりもあきらかにかゞやきて、如何いかわたくしたびからたびへと經廻へめぐつてるにしてもその風聞ふうぶんみゝたつせぬことはあるまい
たとい母のことについて悪い風聞ふうぶんがあったとしても、そんなことを記す訳はないが、こゝでは暫く彼の日記を信用して、母は左大臣のわす形見がたみの敦忠の成長を楽しみに
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
而已のみならず私が亜米利加旅行中にも、郷里中津の者共が色々様々な風聞ふうぶんを立てゝ、亜米利加にいっの地で死んだと云い、はなはだしきに至れば現在の親類の中の一人ひとりが私共の母にむかっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
北清事件の取沙汰 そうすると都は都だけでシナの戦争についての風聞ふうぶんも余程高い。これはシナから帰った商人あきんど、あるいはネパールから来た商人らが持ち来ましたところの風聞であろうと思われる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ふっつりと風聞ふうぶんをきかなくなった。
それからまた、都での風聞ふうぶんとして、義経の行装の豪奢、禁中の羽振り、日常の花奢かしゃなど、問われないことまで告げた。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
東へお立ちなされ候大名衆の人質ひとじちをとられ候よし、もつぱ風聞ふうぶん仕り候へども、如何いかが仕るべく候や、秀林院様のお思召おぼしめしのほども承りたしとのことに有之候。
糸女覚え書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大佐たいさかたところによると、海賊島かいぞくたう云々うんぬん風聞ふうぶん實際じつさいことで、その海賊かいぞく仲間なかまある強國きようこくとのあひだに、一種いつしゆ密約みつやくそんしてことも、海事かいじくわしき船員せんゐん社會しやくわいには、ほとん公然こうぜん秘密ひみつとなつてよし
政府は市中の拝借地をその借地人または縁故ある者に払下げるとの風聞ふうぶんが聞える。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
お梶様変死の風聞ふうぶん、加代子さんのお母さんの変死のこと、珠緒さんの身持のこと、すべてが報告され、ここに資料がととのって、土居先生は変装して当地へ旅行してメンミツに地理を調べあげる
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これは昨夜の折助おりすけ狼藉ろうぜきと女軽業の美人連の遭難、その血のあとというのはムク犬の勇猛なる働きの名残なごりであることは申すまでもありませんが、その風聞ふうぶんは兵馬の耳へはまだ入っていませんでした。
「かねてから、江戸表のほうにも、しきりと風聞ふうぶんされていた。——たびたび、将軍家より老公へいちど出府あるようにと、慫慂しょうようされておらるる由を」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、家々みな戸をあけると、用のない者まで辻にあふれ出し、あちこちの風聞ふうぶんを耳に拾って歩くのであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それだ。このごろやたら暴徒の数がふえ、おだやかならん風聞ふうぶんもある。移動もそのおかげらしいよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都に風聞ふうぶんの立ったとき、その在所ありかをしらべよとはおいいつけになりましたが、罪人ざいにんあつかいにして、桑名に護送ごそうすることなどは、まッたく、秀吉公のごぞんじないこと。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という風聞ふうぶんが洩れ、家康方の、小牧を中心とする鉄壁の防禦ぼうぎょに、大きな動揺がみえはじめた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、秀吉の方から急にその話を逃げて——「途上、淀川よどがわや京都あたりの風聞ふうぶんは、どうじゃな」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあんばいでは、やがてきたしょう柴田勝家しばたかついえも、近いうちには秀吉ひでよし軍門ぐんもんにくだるか、でなければなまくびをしおづけにされて凱旋がいせん土産みやげになってしまうだろうと、もっぱら風聞ふうぶんしております
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越後の上杉家にも、やがて風聞ふうぶんが伝わって来た。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、いったような臆測まじりの風聞ふうぶんだった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などという風聞ふうぶんもしきりに聞えて来るので
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)