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閂
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かんぬき
ふりがな文庫
“
閂
(
かんぬき
)” の例文
馬耳は
沓脱
(
くつぬぎ
)
へ降り、戸に
閂
(
かんぬき
)
をおろした。尨大な夜の深さが、馬耳の虚しい寂寥を漂白するために、ひえびえと身体を通過していつた。
麓
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
あの
葡萄酒
(
ぶどうしゅ
)
や酒の豊富な貯えには、錠や、
閂
(
かんぬき
)
や、秘密の穴蔵などは、あまり大して保護をしてくれる物にならないのが普通であった。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
間もなく——もう雀の声が聞かれる頃、ガタン、蔵屋敷の
閂
(
かんぬき
)
が鳴る、寝不足そうな
仲間
(
ちゅうげん
)
が
箒
(
ほうき
)
を持って
掃
(
は
)
く、用人らしい男が出てゆく。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その平馬がいま
打割羽織
(
ぶっさきばおり
)
に
野袴
(
のばかま
)
、
手馴
(
てな
)
れの
業物
(
わざもの
)
を
閂
(
かんぬき
)
のように差し反らせて、鉄扇片手に春の野中の道をゆらりゆらりと歩いて行くのだ。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と約束したが、やがて夜が明けると直ぐに
閂
(
かんぬき
)
を外して、馬を出して、その背中に飛び乗って王宮の御門の処へ来た。門番は驚いて
猿小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
萠円山人
(著)
▼ もっと見る
前に言ったように、石段もなくすぐに会堂の広場に出られる食堂の戸口は、昔の
牢屋
(
ろうや
)
の戸口のように錠前と
閂
(
かんぬき
)
とがつけられていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
窓は内部からしまりができていたし、入口の唯一のドアは内部から鍵がかけられ、鍵は鍵穴にさしたままで、その上
閂
(
かんぬき
)
までかかっていた。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私がすぐさま
閂
(
かんぬき
)
をさし、私たちは、船長の死体のある家の中にただ二人きりで、
暗闇
(
くらやみ
)
の中でちょっとの間はあはあ喘ぎながら立っていた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
ふと一等墓地の中に松桜を交え植えたる
一画
(
ひとしきり
)
の
塋域
(
はかしょ
)
の前にいたり、うなずきて立ち止まり、
垣
(
かき
)
の小門の
閂
(
かんぬき
)
を
揺
(
うご
)
かせば、手に従って開きつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それを実地に役立てさえすれば、大きい錠前を
扭
(
ね
)
じ切ったり、重い
閂
(
かんぬき
)
を外したりするのは、格別むずかしい事ではありません。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「外から入る時は、手を突つ込んで
閂
(
かんぬき
)
を外すだけですから、わけはありませんが、
慣
(
な
)
れないと呼吸がわからないから、ちよいと面倒ですよ」
銭形平次捕物控:232 青葉の寮
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分の刀は腰に
閂
(
かんぬき
)
に差し、それだけはよいが、どういうものか木綿のしごきで真中をキュッとしばった砥石を、肩から背中の方へ下げている
斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
どうやら
閂
(
かんぬき
)
を下ろしたらしい。サラサラサラサラと風が渡った。ポタポタと八重桜の花が落ちた。そのほかには音もなかった。
銅銭会事変
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
儂
(
わし
)
どもに寝室の扉に
閂
(
かんぬき
)
を下させたり、またそれを、要塞のように固めさせるに至った原因というのは、けっして昨今の話ではないのですよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
日本人が正直であることの最もよい実証は、三千万人の国民の住家に錠も鍵も
閂
(
かんぬき
)
も戸鈕も——いや、錠をかける可き戸すらも無いことである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
この扉を開くには、まず潜り戸の輪、
懸金
(
かけがね
)
の
錠
(
じょう
)
を
外
(
はず
)
して中に入って
閂
(
かんぬき
)
を除いて、それから扉を左右に開くようになっている。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
早速部屋の中にあった丸太棒を
閂
(
かんぬき
)
の代りに扉にあてがったり、ありったけの椅子や卓子を扉の内側に積み重ねて入口のつっかい棒にしたりして
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
再び、か
細
(
ぼそ
)
い手で、重い
閂
(
かんぬき
)
をゆすぶる。閂は
錆
(
さ
)
びついた
鎹
(
かすがい
)
の中で
軋
(
きし
)
む。それから、そいつを溝の奥まで
騒々
(
そうぞう
)
しく押し込む。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
家畜小屋の
閂
(
かんぬき
)
のような、非美術的極まる留置室の扉が、此の上なく野蛮な音をたてて、ごりごりときしみながら開いた。
犠牲者
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「どうぞお入りやして」といって、私のつづいて入ったあとを
閂
(
かんぬき
)
を差してかたかた締めておいて、また先きに立って入口の
潜戸
(
くぐり
)
をがらりと
開
(
あ
)
けて入った。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
何処
(
どこ
)
から手を出して掛金を外すのか、
但
(
たゞ
)
し
栓張
(
しんばり
)
を取って
宜
(
い
)
いか訳が分りません、
脊伸
(
せいの
)
びをして上から
捜
(
さぐ
)
って見ると、
閂
(
かんぬき
)
があるようだが、手が届きません。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その晩、夕飯をすますとドーブレクは疲れたと云って十時に帰宅し、いつになく庭の
扉
(
と
)
に
閂
(
かんぬき
)
を差してしまった。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
今にも
窒息
(
ちっそく
)
せんず思いなるを、警官は
容赦
(
ようしゃ
)
なく
窃盗
(
せっとう
)
同様に
待遇
(
あし
)
らいつつ、この内に
這入
(
はい
)
れとばかり妾を
真暗闇
(
まっくらやみ
)
の室内に突き入れて、また
閂
(
かんぬき
)
を
鎖
(
さ
)
し固めたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
やがて手探りで
扉
(
と
)
の
閂
(
かんぬき
)
をおろすと、少し安心して、
衣嚢
(
かくし
)
から小さな懐中電燈を出して
四辺
(
あたり
)
を照らしたが、闇を貫くその
燈影
(
ほかげ
)
は、胸の動悸に震えてちらちらした。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
閂
(
かんぬき
)
に錠がかけてなく、引くとすぐ開いたのに、Hさんはちよつと小首をかしげたやうな様子でした。……
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
門の扉の
頂
(
いただき
)
より表と裏に振り分けて、若人の
濡
(
ぬ
)
れ髪を干すやうに
閂
(
かんぬき
)
の辺まで
鬱蒼
(
うっそう
)
と覆ひ掛り垂れ下る
蔓
(
つる
)
葉の盛りを見て、たゞ涼しくも茂るよと感ずるのみであるが
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
また細君のみと子夫人が、背中の上の方に
閂
(
かんぬき
)
のかかった薄鼠色の看守服の良人を門口まで送って出て
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
家の中は豪奢な感じが全然なくて、ハイランド出身の先生の好みが、火炉の山家風な姿や、戸のハンドルや
閂
(
かんぬき
)
に金属を使わず全部木で作ったような所によく出ていた。
英国の物理学界と物理学者
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
閂
(
かんぬき
)
が外れた。戸が引かれた。上の姉の綱手が上り口に立って、手燭をかざしていた。深雪が
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
重吉は夢中で怒鳴った、そして門の
閂
(
かんぬき
)
に
双手
(
もろて
)
をかけ、総身の力を入れて引きぬいた。門の
扉
(
とびら
)
は左右に開き、喚声をあげて突撃して来る味方の兵士が、そこの
隙間
(
すきま
)
から遠く見えた。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そして私の
襟髪
(
えりがみ
)
を
掴
(
つか
)
んで、地べたをずるずると裏門のところまで引きずって行って、門の外に突き出したかと思うと、荒々しく
閂
(
かんぬき
)
を掛け、自分はさっさと庭の方へ歩いて行った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
半蔵はその会所の見回りを済まし、そこに残って話し込んでいる隣家の伊之助その他の宿役人にも別れて、日暮れ方にはもう
扉
(
とびら
)
を閉じ
閂
(
かんぬき
)
を掛ける本陣の表門の
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
をくぐった。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
わたしは国家を代表する者ども以外の誰からもわずらわされることはなかった。わたしの書類を入れてある机以外には錠も
閂
(
かんぬき
)
ももたず、掛金または窓にさす釘一本ももっていなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
然し彼女は家庭がたとへ工場の如く大きな牢獄でないとしても一層堅固な戸と
閂
(
かんぬき
)
を有してゐることを学ぶのである。家庭はどんなものでも脱れることが出来ない忠実な番人を持つてゐる。
結婚と恋愛
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
そして彼はしきりに、西部地方で起きた盗難事件のことを話し、滑稽なほど昂奮して、どうしても私たちも二三日のうちに、窓や扉へ丈夫な
閂
(
かんぬき
)
をつけなくてはならないと主張するのでした。
入院患者
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その間からお酒に
胸
(
むな
)
焼けのしている皮がはみだすのを、招き猫のような手附きで話をしながら、時々その手で、
衣紋
(
えもん
)
を押上げるのだった。羽織の
紐
(
ひも
)
が
閂
(
かんぬき
)
のように、一文字に胸を渡っていた。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
表門が閉された……裏も脇も、通用口も、みんな厳重に
閂
(
かんぬき
)
が入れられた。
三十二刻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
堀尾君は相手を引っ張り込むが早く、門を締めて
閂
(
かんぬき
)
を下してしまった。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
外へ出るには鉄の
閂
(
かんぬき
)
があって、外から鉄の閂に錠が下してある。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
門に青錆びた
閂
(
かんぬき
)
のいたさ。十字にかけた罪障の烙印……
希臘十字
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
「すると、
閂
(
かんぬき
)
が外れていたというんだな」
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
到れば長き
閂
(
かんぬき
)
は引かれず、其戸閉されず
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
「そうだろう、俺が
閂
(
かんぬき
)
を
下
(
おろ
)
したからな」
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
例えば
雷電
(
らいでん
)
の
閂
(
かんぬき
)
とでもいう。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
小頭に
閂
(
かんぬき
)
をかけさした。
坑鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
閂
(
かんぬき
)
ぬけば
夏海
(
なつうみ
)
の
全都覚醒賦
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
一方の厚戸の
閂
(
かんぬき
)
を
外
(
はず
)
すと、仏具入れの
長櫃
(
ながびつ
)
がある。位置が変だ。二人がかりで横へ移す。——と、たしかに下へ降りられる穴倉の口。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
慌
(
あわ
)
てふためいた老人は、何を考える暇もなく、いきなり
閂
(
かんぬき
)
をはずして板戸をひらき、火焔を
揉
(
も
)
み消すために、室内に
駈
(
か
)
け込んだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
自分の刀は腰に
閂
(
かんぬき
)
に差し、それだけはよいが、どう言うものか木綿のしごきで真中をキュッとしばった砥石を、肩から背中の方へ下げている。
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
表門、裏門、くぐりの戸、そいつを押しても見たけれど、内から
閂
(
かんぬき
)
でも下ろされているのか、貧乏ゆるぎさえしなかった。
染吉の朱盆
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
閂
漢検1級
部首:⾨
9画
“閂”を含む語句
閂子
下閂
閂下
閂差
閂木
閂止
首閂