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趨
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はし
ふりがな文庫
“
趨
(
はし
)” の例文
今のやうに作家が社会的な低い標準に向つて
趨
(
はし
)
つてゐる時代には、とても優れた作を期待することは不可能である。何うも為方がない。
野の花を
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
〔譯〕民の
義
(
ぎ
)
に因つて以て之を
激
(
げき
)
し、民の
欲
(
よく
)
に因つて以て之を
趨
(
はし
)
らさば、則ち民其の生を
忘
(
わす
)
れて其の死を
致
(
いた
)
さん。是れ以て一
戰
(
せん
)
す可し。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
羅馬は栄華の極盛に達し国民は相次いで華美逸楽へと
趨
(
はし
)
った結果、当初の剛健勇武なる民は国を挙げて文雅
懦弱
(
だじゃく
)
な国民となり
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
夫人は驚いて
轎
(
かご
)
に乗ってゆき、
鑰
(
かぎ
)
を
啓
(
あ
)
けて亭に入った。小翠は
趨
(
はし
)
っていって迎えた。夫人は小翠の手を
捉
(
と
)
って涙を流し、
力
(
つと
)
めて前の
過
(
あやまち
)
を謝した。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「越前、かつて人を罰したことはない。人の罪を罰する。いや、人をして罪に
趨
(
はし
)
らしめた世を罰する——日夜かくありたいと神明に祈っておる」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
親
(
しん
)
を
洽
(
あまね
)
くし衆を和するも、
恒
(
つね
)
に
斯
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
てし、
禍
(
わざわい
)
を造り
敗
(
はい
)
をおこすも、
恒
(
つね
)
に
斯
(
ここ
)
に於てす、其
悪
(
あく
)
に懲り、以て善に
趨
(
はし
)
り、其儀を
慎
(
つつし
)
むを
尚
(
たっと
)
ぶ、といえり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
従つて全体性、具体性を失い理論は現実より遊離して誤った傾向に
趨
(
はし
)
る。ここに個人主義自由主義乃至その発展たる種々の思想の根本的過誤がある。
社会時評
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
而して時に感情に
趨
(
はし
)
らんとする、及びクロポトキンの主張の特に
道義的
(
モオラル
)
な色彩を有する、それらは皆、彼等の
各
(
おの/\
)
の屬する國民——獨逸人、佛蘭西人
所謂今度の事:林中の鳥
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一たん求道の志を捨てて享楽に
趨
(
はし
)
ってみたものの現実に全面的に
惑溺
(
わくでき
)
することが出来なかったのを見ても察せられる。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
趨
(
はし
)
りて場を出づれば、月光
遍
(
あまね
)
く照して一塵動かず、古の劇場の石壁石柱は
巋然
(
きぜん
)
として、今の
破
(
や
)
れ小屋のあなたに存じ、廣大なる黒影を地上に印せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼のやうに文学なら、何物でもとり入れると謂つた素質からは、恐らく新古今などに直に
趨
(
はし
)
るべき筈であつた。
橘曙覧評伝
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
その上に一家の事情が
纏綿
(
てんめん
)
して、三方四方が塞がったから仕方がなしに文学に
趨
(
はし
)
ったので、
初一念
(
しょいちねん
)
の国士の大望は決して衰えたのでも鈍ったのでもなかった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
今日の日本知識人は西洋人以上に功利主義に
趨
(
はし
)
り、日本固有の道徳を放棄し、しかも西洋の社会道徳の体得すらも無く道徳的に最も危険なる状態にあるのではないか。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
此処
(
ここ
)
にて「しばらく」といふはやや久しきことを言へり。これは
素人好
(
しろうとずき
)
のする句なれども深き味のなき句なり。けだし実景を写さずして理想に
趨
(
はし
)
りたるがためならん。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
さすがの英国でも、ゼー・エチ・スミス氏の言ったごとく、だいたいは同じ方向に
趨
(
はし
)
りつつある。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
伊太利
(
イタリイ
)
、
西班牙
(
スペイン
)
、
印度
(
インド
)
、
埃及
(
エヂプト
)
、支那、日本のどの室にも縦覧客が満ちて居る。自国を
過重
(
くわぢゆう
)
して異邦を毛嫌ひしたり、新しい作品に
許
(
ばか
)
り
趨
(
はし
)
つて前代を蔑視すると云ふ風が無い。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
社会的現実から逃避したロマンティックな傾きに
趨
(
はし
)
らざるを得なかった事情も肯ける。
婦人と文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
徳川幕府の
末造
(
ばつざう
)
に当つて、天下の言論は尊王と佐幕とに分かれた。
苟
(
いやしく
)
も気節を重んずるものは皆尊王に
趨
(
はし
)
つた。其時尊王には
攘夷
(
じやうい
)
が附帯し、佐幕には開国が附帯して唱道せられてゐた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
不正が公行している事も、或は清朝の末年よりも、一層
夥
(
おびただ
)
しいと云えるかも知れない。学問芸術の方面になれば、
猶更
(
なおさら
)
沈滞は甚しいようである。しかし支那の国民は、元来極端に
趨
(
はし
)
る事をしない。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
少年は孔生を見ると
趨
(
はし
)
ってきてお辞儀をした。孔生もお辞儀をして
嬌娜
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
由来、学者の所説は常に社会の進歩に先だって
趨
(
はし
)
るものである。彼の法律制度改正案は無慮幾百であったが、彼が八十五歳の長寿を保ったに係らず、その生前に行われたものは比較的少数であった。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
陳亢
(
ちんこう
)
、
伯魚
(
はくぎょ
)
に問いて曰く、子も亦異聞あるかと。対えて曰く、未だし。嘗て独り立てり。
鯉
(
り
)
趨
(
はし
)
りて庭を過ぐ。曰く、詩を学びたるかと。対えて曰く、未だしと。詩を学ばずんば、以て言うことなしと。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
徒
(
いたずら
)
に新に
趨
(
はし
)
るも不可なれば、徒に旧に
泥
(
なず
)
むるまた不可である。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
押していったわ、白木屋の前に来なかったら、ただじゃ置かないと、省線に張り込んでいるからそう思えと言ったわ、あたい、下車するとバスの停留場まで
趨
(
はし
)
ったわ、うしろ向くと
捕
(
つか
)
まえられると思ってがたがた趨った。
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
旗を挙げ
闕
(
けつ
)
に
趨
(
はし
)
るの首魁と為らんとす。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
尋常一様
詩詞
(
しし
)
の人の、
綺麗
(
きれい
)
自ら喜び、
藻絵
(
そうかい
)
自ら
衒
(
てら
)
い、
而
(
しこう
)
して其の本旨正道を逸し邪路に
趨
(
はし
)
るを忘るゝが如きは、
希直
(
きちょく
)
の断じて取らざるところなり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その弟は、学校を出て船に努めるようになり、乗船中、海の色の
恍惚
(
こうこつ
)
に
牽
(
ひ
)
かれて、海の底に
趨
(
はし
)
った。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
南洲及び木戸公等の
※
(
さく
)
、民の
欲
(
よく
)
に因つて之を
趨
(
はし
)
らしたればなり。是を以て
破竹
(
はちく
)
の
勢
(
いきほひ
)
ありたり。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
『我楽多文庫』の基礎がマダ固まらない
中
(
うち
)
に美妙が『都之花』に
趨
(
はし
)
って別に一
旗幟
(
きし
)
を建て
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
世間は名利に
趨
(
はし
)
り
煩悩
(
ぼんのう
)
に苦しめられ、
掌大
(
しょうだい
)
の土地の上に気違ひの如く狂ひまはるを、歌人は
独
(
ひと
)
りこれを
余所
(
よそ
)
に見て花に遊び月に
戯
(
たわむ
)
れ、無限の天地に清浄の空気を吸ひをるなり。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
この年少の身で自分一身の趣味に
趨
(
はし
)
ることも許されず、ひたすら国家国民の隆昌にのみ心を砕いていられる少年太子の身の上が、何とも言えず私には痛ましく感じられたのであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
我は
趨
(
はし
)
りて姫の前に出で、白く細き右手に接吻せり。姫はアントニオと我名を呼び掛け給ひしが、流石にしばし
口籠
(
くごも
)
りて、世に
幸
(
さち
)
ある人となり給へ、さらばとて、我額に接吻し給ふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
離別以来
幾旬日
(
いくじゅんじつ
)
、坤竜を慕って
孤愁
(
こしゅう
)
に
哭
(
な
)
き、人血に飽いてきた夜泣きの刀の片割れ——人をして悲劇に
趨
(
はし
)
らせ、邪望をそそってやまない乾雲丸が、ここにはじめて丹下左膳の手を離れたのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
乃
(
すなわ
)
ち令を下して曰く、北せんとする者は左せよ、北せざらんとする者は右せよと。諸将多く左に
趨
(
はし
)
る。王
大
(
おおい
)
に怒って曰く、公等みずから之を
為
(
な
)
せと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そういうところへ来ると空気はひやりとして、右側に
趨
(
はし
)
っている瀬川の音が急に音を高めて来る。何とも知れない鳥の声が、瀬戸物の破片を擦り合すような鋭い叫声を立てている。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
場合によっては是の如きは魔境に
墜
(
お
)
ちたものとして
弾呵
(
だんか
)
してある経文もあるが、保胤のは慈念や悲念が
亢
(
たか
)
ぶって、それによって非違に
趨
(
はし
)
るに至ったのでも何でもないから
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
趨
漢検準1級
部首:⾛
17画
“趨”を含む語句
趨向
趨勢
帰趨
拝趨
小趨
歩趨
拜趨
視天下之岐趨異説
趨勢上
趨異
趨舍
趨舎
趨避