訊問じんもん)” の例文
それでもって被訊問じんもん者に元気をつけ、いやむしろ注意をそらして、その警戒心を眠らせておき、その後でふいにそれこそとうとつに
「どうしてこんなことをされたかわからない、ぼくはかっちゃんが好きだったんです」岡部少年は刑事の訊問じんもんにそう答えたという
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それに対して署長は苦笑にがわらいをしながら、イヤどうも万事あの調子なので、訊問じんもん手古てこずったがと前置きして、次のように説明した。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不審訊問じんもんを避けるためにキチンとした身装みなりをしていなければならなかったが、しかし今のような場所で、八時というような時間に
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
そこから着目ちゃくもくしてある程度ていど内偵ないていすすめて、その容疑者ようぎしゃを、べつべつに任意出頭にんいしゅっとうかたち警察けいさつし、井口警部いぐちけいぶ直接ちょくせつ訊問じんもんしてみた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
直ぐに追手の役人共が参り、ご家来の方々はほとんど捕われ、いろいろに責めさいなまれ、訊問じんもんされ、最後には一人残らず皆殺しでした。
警察署にての訊問じんもん果てしのち、大阪に護送せらるることとなり、の八、九時頃にやありけん、珠数繋ずずつなぎにて警察の門を出でたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
艶子は警視庁にばれて訊問じんもんされた。艶子がおどおどして社長室での出来事を陳述すると、係官はそれで満足してそれ以上追及しなかった。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
わしもね、出来得る限り、行政官の一員たるその威厳を保ってからに。しかし、決して警官として訊問じんもんをするではありません。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
事露見して十一月五日却って赤兄のためにとらえられ、九日紀の温湯行宮あんぐうに送られて其処で皇太子中大兄の訊問じんもんがあった。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
起こしたことも、訊問じんもんをしたことも、伯爵領から追放するといって職務上の戒告を行なったことも、Kのほうはひどく不機嫌な態度で受け取った。
(新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
(と村井保は、係官の第二回目の峻厳しゅんげん訊問じんもんに対して、頭をうなだれ、声をふるわして答えた)すっかり申し上げます。
アパートの殺人 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
明智はそんな風に、大勢を一室に集めて訊問じんもんの様なことをやるのは余り好まなかった。いつものり口とは違っていた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ただ趙と王だけは、英夫と祥子が立会ってした船長や宮崎運転士の訊問じんもんにもやけくそな反抗を示すだけで、要領を得ない返事をくりかえしていた。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
火元と認定せらるる鰐淵方わにぶちかた塵一筋ちりひとすぢだに持出もちいださずして、あはれむべき一片の焦土をのこしたるのみ。家族の消息はただちに警察の訊問じんもんするところとなりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
男装して馬をオルレアンの敵陣に駆り入れるところや、教会の立場から彼女の意志を翻させようとするピエール・コオションのきびしい訊問じんもんを受けながら
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、それの報告もし、また、身の嫌疑についても、高時のいちいちな訊問じんもんも待たず、我から、釈明にこれ努めた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らを訊問じんもんすることによって、この市街地を敵兵が占拠しているかどうか? また、市街地に住民はどのくらいもいて、この陸地は一体どこの属領であり
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そのために彼は供奉ぐぶ警衛の人々の手から巡査をもって四大区十二小区の屯所とんしょへ送られ、さらに屯所から警視庁送りとなって、警視庁で一応の訊問じんもんを受けた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
方伯つかさのいとあやしとするまでにイエス一言ひとことも答へせざりき。」——クリストは伝記作者の記した通り、彼等の訊問じんもんや嘲笑には何の答へもしなかつたであらう。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
役人は、いくら声をらして訊問じんもんしても、相手がまるでこちらを馬鹿ばかにしてるやうに、返事をしないので、威厳を損はれたと思ひ、腹を立ててゐたのである。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
「そうだろう。お前だと思った。大体貴様は、横着だからな。貴様が、小倉や皆をおだててこんなものを出さしたんだろう」彼は裁判官のごとくに訊問じんもんした。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
それはこの点について、私に訊問じんもんした事が一度も無い……という事実が、何よりも雄弁に証拠立てている。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一馬や私が説明するのをまるで自分が訊問じんもんを受けているように、ハア、ハア、と恐縮して承っている。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
部員先づわれに向つて眉をひそむ「あなたは少し待ておいでなさい」と。先づこの一語にておどかされたり。やがて部長に訊問じんもんせられたる後放免せられて宿舎にく。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
犬(同志は、ポリスをそう呼んでいました)にあやしまれ不審訊問じんもんなどを受けてしくじるような事も無かったし、笑いながら、また、ひとを笑わせながら、そのあぶない
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そこで、彼は見せかけの勇をふるって、どもりながら訊問じんもんした。「だれだ、貴様は」返事はなかった。彼は前よりもっとふるえる声でくりかえした。なおも答えはない。
鎮守府に呼ばれて訊問じんもんにあったが、全く何処とも知らず流されて来て、島かげを見付けてほっとした時に夜はほのぼのと明け、それが軍艦であった事を述べて許された。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
それやこれやで、彼女たちの中の嫉妬しっと深い者が目星めぼしをつけられて厳重な訊問じんもんを受けることになったが、そんな形跡もないことが知れて、此の方面の努力も水泡すいほうに帰した。
二、三の訊問じんもんは受けたが、それには造作なく答えた。家宅捜索さえ一度行われた、——が無論なにも発見されるはずがなかった。私は自分の未来の幸運を確実だと思った。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
室内では大祭司を裁判長として、イエスの訊問じんもんが開始せられています。彼らの裁判は、どうあってもイエスを死刑に定めようという、定まった意図をもって行なわれました。
明治二十年ごろ、国粋主義こくすいしゅぎのさかんなとき、途中で外国人の婦人につばきかけた学生があった。なぜそんなことをなしたかと訊問じんもんされたとき、国体を発揮はっきするためだと答えた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
はじめのうち、彼らは黙って歩く。訊問じんもんはすぐには開かれない。ただ、避けることは不可能だ。にんじんは、頭の中で、およその見当をつけてみる。そして、返答のしかたを稽古けいこしてみる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
何度も巡査おまわりさんに捕まえられ、訊問じんもんされましたが、その都度うまく云い逃れました、友田さんのためにきわどい芸当も随分とやったものです、大方臭い飯を食うところだったのです、その後
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
小西警部はまるで、友人にでも話しかけるような口調で訊問じんもんをはじめた。
五階の窓:03 合作の三 (新字新仮名) / 森下雨村(著)
作松は愕然がくぜんとしました。首尾よく佐吉の訊問じんもんわなに掛つたのです。
昨日、桝本を訊問じんもんしてからもう一度、西村の遺族を訪ねたのだ。
山崎から訊問じんもんのように言われて、斎藤は
キャラコさんが、やさしく訊問じんもんした。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
訊問じんもん
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
訊問じんもんすると、案外あんがいにも老人ろうじんのことを、借金しゃっきん取立とりたてがきびしくへんくつだが、面白おもしろいところのある人物じんぶつだといつたし、また借金しゃっきんのことで
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
赤羽主任の訊問じんもんに、はじめて我に返った両人は、再び指し示されたその女の屍体に眼をやったが、答は横に振った首でなされた。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
町奉行に捕えてある暴徒たちの訊問じんもんもし、三人の御用商人とたびたび話しあった。宿所を襲ったのは外島の独断だということがわかった。
いしが奢る (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこで、私達は、「一平凡人として」敵の訊問じんもんに対しては一言も答えないということを、こゝの細胞会議の決議として実行することにした。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
訊問じんもんえてのち、拘留所に留置せられしが、その監倉かんそうこそは、実に演劇にて見たりし牢屋ろうやていにて、しょうの入牢せしはあたかも午前三時頃なりけり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
未亡人は、最初のうちは、顔をあからめて答えなかったが、検事の訊問じんもんにのっぴきならぬ気勢が見えたので、やっと口を開いて「わたしはだまされたのでございます」
誰が何故彼を殺したか (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
夢中になって、本物の品川を訊問じんもんしていた明智小五郎が、ふと気がつくと、もう一人の品川の姿が見えぬ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
途端に維盛の顔色が変って青白くなった。維盛は、貞能の方を訊問じんもんするようににらみつけた。それは、小烏どころか大臣葬だいじんそうのとき使われる無文の太刀だったからである。
まるでどうも、私が東京裁判情痴部というようなところへ引きだされて目下訊問じんもんを受けているようにきめこんでいる様子で、私も恐縮したが、まったく馬鹿げた話である。
余はベンメイす (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一日、男を呼び出して、訊問じんもんした。検事は、机の上の医師の診断書に眼を落しながら
あさましきもの (新字新仮名) / 太宰治(著)