見付みつけ)” の例文
「だからよ。船員みんなは小僧を見付みつけ次第タタキ殺して船霊様ふなだまさまきよめるって云ってんだ。汽鑵かまへブチ込めやあ五分間で灰も残らねえってんだ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「ではそちも、鏃鍛冶やじりかじとは世をあざむく稼業かぎょうで、まことは蚕婆とおなじように、人穴城ひとあなじょう見付みつけをいたしているのであろうが!」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足早あしばやに立去しはおそろしくもまたたくみなるくはだてなり稍五ツ時頃に獵師れふしの傳九郎といふが見付みつけ取散せし笈摺おひずる并に菅笠すげがさ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
扇骨木かなめひのきなどを植込んだ板塀に沿うて、ふと枇杷の実の黄いろく熟しているのを見付みつけて、今更のようにまたしても月日のたつ事の早いのに驚いたのである。
枇杷の花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
尾張町へ来ると客はほとんど入れかわった。が、乗って来る客の半分は依然買物に来た婦人達であった。其中そのなかに彼は先刻資生堂で卓を同じくした婦人を見付みつけ出した。
乗合自動車 (新字新仮名) / 川田功(著)
遠州見付みつけの大地蔵堂の内にある奪衣婆の像は、新しいものだろうと思いますが、ここでも子供の無事成長を祈る人が多く、そのお礼には子供の草履を上げました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かはらにしたやうな眞赤まつか砂煙すなけむりに、咽喉のどつまらせてかへりがけ、見付みつけやぐら頂邊てつぺんで、かう、薄赤うすあかい、おぼろ月夜づきよのうちに、人影ひとかげ入亂いりみだれるやうな光景くわうけいたが。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この柳本直太郎やぎもとなおたろうが親切に看病して、横浜に着船した。その時は丁度ちょうど仙台藩がいよ/\朝敵になったときで、江戸中で仙台人と見れば見付みつけ次第捕縛ほばくうことになって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その赤い提燈は十けんばかりたがいへだたりを置いて三つ、東南の村口から入って来て何処どこへか消えてしまうのである。最初それを見付みつけたのが村のはずれに住んでいた百姓じじいであった。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「目金を買っておかけなさい。お父さんを見付みつけるには目金をかけるのに限りますからね。」
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すなわち裏の垣より忍び入りて窠宿とや近く往かんとする時、かれ目慧めざとくも僕を見付みつけて、驀地まっしぐらとんかかるに、不意の事なれば僕は狼狽うろたへ、急ぎ元入りし垣の穴より、走り抜けんとする処を
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
が、蛇の申子もうしごと噂された程のお杉の執念は、あくまでも夫に附纏つきまとうて離れなかった。彼は幾度いくたびかお杉を置去おきざりにして逃げようと企てたが、何日いつも不思議にの隠れ家を見付みつけ出された。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし魚がにはいらなかつた武の顔は、かへつて魚に見付みつけられ升た。
鼻で鱒を釣つた話(実事) (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
秋の風芙蓉ふようひな見付みつけたり 蓼太
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
柳遷りゅうせんとか柳川りゅうせんとか色々署名サインしていたそうですが、その人が御維新後のその頃になって、スッカリ喰い詰めてしまって、東海道は見付みつけ宿しゅく等々力とどりき雷九郎という親分を頼って来て
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もらひ信州へ參り越後の方を尋ね候處不慮ふりよの災なんに逢ひ終には猿島河の下にて首を見付みつけたるは先達て申上候と言にぞ越前ゑちぜん守殿何源次郎其方つまは右の二のうでに源次郎命と彫物ほりものをしてを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いつか、吉原よしはら大火たいくわもおなじであつた。しかもまだだれわすれない、あさからすさまじい大風おほかぜで、はなさかりだし、わたし見付みつけから四谷よつや裏通うらどほりをぶらついたが、つちがうづをいてけられない。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見付みつけ云立いひたてなば金はかへすに及ぶまじと思ひ居けるに或日庄三郎は又七をよび松平相摸守殿まつだひらさがみのかみどのの屋敷へ金子六十兩請取うけとりに參るべしと申付けしかば忠八是をきゝてお常にかくと知らせの清三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大正十年頃より三四歳の娘(今の天川呉羽嬢、本名甘木あまき三枝(一九)本籍地静岡県磐田いわた見付みつけ町××××番地)を連れて各地を遍歴したるのち上京し、株式に手を出して忽ち巨万の富を作った。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
駿府にはわざと泊らず、海近い焼津から一気に大井川を越えて、茶摘歌ちゃつみうた揚雲雀あげひばりの山道を見付みつけの宿まで来ると高い杉森の上に三日月が出たので、通筋とおりすじの鳥居前、三五屋というのに草鞋わらじを解いた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)