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藻屑
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もくず
ふりがな文庫
“
藻屑
(
もくず
)” の例文
そして、その同じ日、岩屋島の住民が二人、悪鬼の呪いにかかって、例の人食いの洞穴、魔の淵の
藻屑
(
もくず
)
と消える様な悲惨事さえ起った。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
すでに、海底の
藻屑
(
もくず
)
と消えたはずの父ステツレルの顔が、つぶれた左眼を暗くくぼませて、寒々とこちらを見返しているのだ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一
艘
(
そう
)
の船が海賊船の重囲に陥った。若し敗れたら、海の
藻屑
(
もくず
)
とならなければならない。若し
降
(
くだ
)
ったら、賊の刀の
錆
(
さび
)
とならなければならない。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
この間も朝鮮人の密航船が玄海灘で難破して、一行二三十名が
藻屑
(
もくず
)
となったという報道を読んで、
転
(
うた
)
た感深いものがあった。
玄海灘密航
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
童
(
わらわ
)
かとすれば年老いてその
貌
(
かお
)
にあらず、法師かと思えばまた髪は
空
(
そら
)
ざまに
生
(
お
)
い
上
(
あが
)
りて
白髪
(
はくはつ
)
多し。よろずの
塵
(
ちり
)
や
藻屑
(
もくず
)
のつきたれども打ち払わず。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
とにかく、あっという間に平家一門を海底の
藻屑
(
もくず
)
とし、内大臣まで捕虜にして帰ってきた義経の目覚しい働きには、誰もが舌を巻いて絶讃した。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
取附
(
とッつき
)
の三段の古棚の
背
(
うしろ
)
のね、物置みたいな暗い中から、——
藻屑
(
もくず
)
を
曳
(
ひ
)
いたかと思う、汚い
服装
(
なり
)
の、小さな
婆
(
ばあ
)
さんがね、よぼよぼと出て来たんです。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、
藻掻
(
もが
)
く手足を押込んでしまうと、袋の口を
麻縄
(
ロープ
)
で厳重に
結
(
ゆわ
)
いてしまった。ああ、僕は、こんどこそ海底の
藻屑
(
もくず
)
と消え失せなければならないのか。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
「可哀そうだが、この波では清少年はたすからない。今ごろはきっと、太平洋の
藻屑
(
もくず
)
になっているだろう。」
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
蒙古
(
もうこ
)
の大軍が兵船を連ねて日本に攻めてきたときには、はからずも暴風雨に
遭
(
あ
)
って、海底の
藻屑
(
もくず
)
になってしまったが、今日ではお天気の調べがついているから
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小癪
(
こしゃく
)
なる呉の舟艇、一気に江底の
藻屑
(
もくず
)
にせん、と怒り立って、そのおびただしい闘艦、大船の
艨艟
(
もうどう
)
をまっ黒に押し
展
(
ひら
)
き、天も
晦
(
くろ
)
うし、水の
面
(
も
)
もかくれんばかり
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぱんぱんとひとにらみに
藻屑
(
もくず
)
をあばいてやらあと、たいそうもなくりっぱな口をおききでしたが、ぱんぱんはどこへいったんです。藻屑はどこへ流れたんですかよ
右門捕物帖:35 左刺しの匕首
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「まだ、さては伝え聞きなさらぬか。
堯寛
(
たかひろ
)
にあざむかれなされて、あえなくも底の
藻屑
(
もくず
)
と……矢口で」
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
海上の
甲板
(
かんぱん
)
で、軍歌を歌った時には悲壮の念が全身に
充
(
み
)
ち渡った。敵の軍艦が突然出てきて、一砲弾のために沈められて、海底の
藻屑
(
もくず
)
となっても遺憾がないと思った。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
舟には解けたる髪の泥水にまみれしに、
藻屑
(
もくず
)
かかりて
僵
(
たお
)
れふしたる少女の姿、たれかあはれと見ざらむ。をりしも漕来る舟に驚きてか、蘆間を離れて、岸のかたへ高く飛びゆく
螢
(
ほたる
)
あり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
藻屑
(
もくず
)
のように振り乱した髪を背に懸け、長い
頸
(
うなじ
)
を延びるだけ延ばし、円い肩から、豊かな背の肉を、弓形にくねらせ、片頬を地面へくっ付けたまま、今にも呼吸が切れそうなほどにも
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
寿永
(
じゅえい
)
四年に、平家の一門はことごとく
西海
(
さいかい
)
の
藻屑
(
もくず
)
となり、今は源家の世となっているのであるから、俊寛に対する重科も自然消え果てて、赦免の使者が朝廷から到来すべきはずであったが
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
だれが一体相手になってくれるんだ! いつ海の
藻屑
(
もくず
)
と消えるか、いつ片手をもぎ取られるか、いつ、遠洋航路につくかわからない、無細工な「海坊主」どもを、どこの「娘」が相手になるか。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
(平家没落の後、官女は零落してこの海浜にさまよい、いやしき
業
(
わざ
)
して世を送るも哀れなり。呉羽の局、綾の局、いずれも三十歳前後にて花のさかりを過ぎたる
上﨟
(
じょうろう
)
、磯による
藻屑
(
もくず
)
を籠に拾う。)
平家蟹
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
藻屑
(
もくず
)
になった
漁民
(
りょうみん
)
が何人あるかわからない……といった状態で、アレヨアレヨといううちに、対州鰤をアトカタもなくタタキ付けた連中が、今度は鋒先を転じて南鮮沿海の鯖を
逐
(
お
)
いまわし始めた。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
白日光耀
(
はくじつこうよう
)
の下で、形もない鰌の、日のこぼれの、
藻屑
(
もくず
)
の、ころころ
田螺
(
たにし
)
の、たまには跳ね
蝦
(
えび
)
の
立鬚
(
たてひげ
)
まで掬おうとして、笊をかろく、足をあげ、手で鼻をつまみ、振りすて、サッとまた笊を、空へ
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
巣は、黒く、ある所は灰色に光りを
帯
(
お
)
んで、枝と枝との間に
懸
(
かか
)
っている。巣からは、黒い乱れた女の髪の毛のようなものが、中空に垂れ下がってなびいている。海の上に漂っている
藻屑
(
もくず
)
に似ていた。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
夜がふけても村へは帰らず、寝床は、はじめから水際近くの舟小屋の中と定めていて、その小屋の中で少しまどろんでは、また、夜の明けぬうちに、汀に飛び出し、流れ寄る
藻屑
(
もくず
)
をそれかと驚喜し
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
沸騰
(
ふっとう
)
する飛沫に、
翻弄
(
ほんろう
)
され、そのまま
碧
(
あお
)
い水底に
沈
(
しず
)
んで行くかと思われましたが、不意と、ぽッかり赤い表紙が
浮
(
うか
)
び、浮いたり、沈んだり、はては紅い一点となり、消えうせ、太平洋の
藻屑
(
もくず
)
となった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
さてはついに飛びおりて神田川の
藻屑
(
もくず
)
と消えたか!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
水の底の
藻屑
(
もくず
)
でも、共になり果てようという約束をしておりましたことが、みんなうそになるはずがござりましょうか。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
燃料や食料を、積み得るだけ艇に移したうえ、室戸丸は、五発の砲弾を喰いそのまま
藻屑
(
もくず
)
と消えてしまったのである。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「それとも、われわれの手で、動力機関を破壊し、氷の島を溶かして、敵味方
諸共
(
もろとも
)
、海底の
藻屑
(
もくず
)
となるか」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
ここまで帝にかしずいて来た宮人らも、あらかた舟に乗り遅れて殺されたり、また舷に取りすがった者も、情け容赦なく突き離されて、黄河の
藻屑
(
もくず
)
となってしまった。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ああ、名探偵明智小五郎はついに、あまりにもあっけなく、太平洋の
藻屑
(
もくず
)
と消え去ったのであった。
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
寝汗にしとど濡れたれば、
襟白粉
(
えりおしろい
)
も水の
薫
(
かおり
)
、身はただ、今しも
藻屑
(
もくず
)
の中を浮び出でたかの
思
(
おもい
)
がする。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
皆とくの昔に
藻屑
(
もくず
)
になったり煙になったり雨になったりしているってさ。
諜報中継局
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ボースンは、女房と、六人の子供が、打ち上げられた
藻屑
(
もくず
)
のように、ゴタゴタしている、自分の家庭のことを思い出してしまった。「こいつあしまった。行かなきゃよかった」と、彼は思った。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
ぱんぱんとひとにらみに
藻屑
(
もくず
)
をあばいてお目にかけるから、ついてきな
右門捕物帖:35 左刺しの匕首
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
何処
(
いずこ
)
の者とも分らない航海者や、船乗人が、暴風で船を壊されて、海の
藻屑
(
もくず
)
となって、この浜辺に打ち上げられたものを、この海岸の
漁猟人
(
すなどりにん
)
が
此処
(
ここ
)
に葬ったのである。昔からの墓が此処にあるのだ。
越後の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
徳さんとその息子とは、人鬼の奸計によって、恐らくは魔の淵の
藻屑
(
もくず
)
と消えてしまったのだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
どうして?ッて、見たまえ、いつもは、
手拭
(
てぬぐい
)
を当てても
堰留
(
せきと
)
められそうな、田の
切目
(
きれめ
)
が、
薬研形
(
やげんなり
)
に崩込んで、二ツ三ツぐるぐると
濁水
(
にごりみず
)
の渦を巻く。ここでは稲が
藻屑
(
もくず
)
になって、どうどう流れる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
動力所の心臓部を抑えながら、わしと君は数十人の敵を同伴して、一路日本へ針路を向けようじゃないか……。なアに、万一、この冒険が失敗したら、そのときは、
潔
(
いさぎよ
)
く、海中の
藻屑
(
もくず
)
となったらいい
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
ルパンは太平洋の
藻屑
(
もくず
)
と消えたのであろうか。イヤイヤ、一筋縄で行かぬ曲者のことだ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
留守はただ
磯
(
いそ
)
吹く風に
藻屑
(
もくず
)
の
匂
(
にお
)
いの、
襷
(
たすき
)
かけたる
腕
(
かいな
)
に染むが、浜百合の
薫
(
かおり
)
より、
空燻
(
そらだき
)
より、女房には
一際
(
ひときわ
)
床
(
ゆか
)
しく、
小児
(
こども
)
を抱いたり、
頬摺
(
ほおずり
)
したり、子守唄うとうたり、つづれさしたり、はりものしたり
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は風船と悪運を共にして海底の
藻屑
(
もくず
)
と消えたのであろうか。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
藻
常用漢字
中学
部首:⾋
19画
屑
漢検準1級
部首:⼫
10画
“藻”で始まる語句
藻掻
藻
藻草
藻抜
藻脱
藻塩草
藻蝦
藻魚
藻汐
藻拔