美男びなん)” の例文
御年やうやく二十二、青絲せいしみぐし紅玉こうぎよくはだへ平門へいもん第一の美男びなんとて、かざす櫻も色失いろうせて、何れを花、何れを人と分たざりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
何故なぜ彼はこの時でも、流俗のやうに恐れなかつたか? それは一人ひとりも霊の中に彼程の美男びなんがゐなかつたからである!
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すると子飼こがいから粂之助くめのすけというもの、今では立派な手代となり、誠に優しい性質うまれつきで、其の上美男びなんでござります。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
をとこをんな法師はふしわらは容貌かほよきがきぞとは色好いろごのみのことなりけん杉原すぎはららうばるゝひとおもざしきよらかに擧止優雅けにくからずたがても美男びなんぞとゆればこそは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
美男びなんで非常な女たらしだ。ちょいと不良めいたところのある人物だったんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
重四郎とよび今年ことし二十五歳にて美男びなんいひこと手跡しゆせきよく其上劔術早業はやわざの名を得し者なるが父重左衞門より引續ひきつゞき手跡の指南しなんをして在ける故彼の穀屋平兵衞の悴平吉も此重四郎にしたがもつぱ筆道ひつだう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
鎌倉や御仏みほとけなれど釈迦牟尼は美男びなんにおはす夏木立かな
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
これは僕の友人の音楽家をモデルにするつもりです。もっとも僕の友人は美男びなんですが、達雄は美男じゃありません。顔は一見ゴリラに似た、東北生れの野蛮人やばんじんなのです。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此の頃美男びなんと評判のはげしい一中節の門付が我を忘れて見ておりますから、尼さんにこそ成っていますものゝ未だ年も若く、修業の積んだ身というでもありませんから
馬廻うままはりに美男びなんきこえはれど、つき雲井くもゐちり六三ろくさなんとして此戀このこひなりたちけん、ゆめばかりなるちぎ兄君あにぎみにかヽりて、遠乘とほのり歸路かへりみち野末のずゑ茶店ちやてんをんなはらひて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あげし方が足下そくかの家の息子むすこなりしかとは知ねども容姿みなりもよく若きに似氣にげなく物柔ものやはらか折屈をりかゞみき人なればむすめもつは早くも目が附き何處いづこの息子か知ざれど美男びなんの上に温順おとなしやとおなじ事ならあゝいふ人に娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とおしゃべりをしているところへ向うの四畳半の小座敷から、飯島のお嬢さまお露が人珍らしいから、障子の隙間すきまより此方こちらのぞいて見ると、志丈のそばに坐っているのは例の美男びなん萩原新三郎にて
なば美男びなんともふべきにや、鼻筋はなすぢとほりもとにぶからず、豐頬しもぶくれ柔和顏にうわがほなるさとし流石さすが學問がくもんのつけたる品位ひんゐは、庭男にはをとこりてもはなれず、吾助吾助ごすけ/\勝手元かつてもとかしましき評判ひやうばん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
美男びなんですよ、あの犬は。これは黒いから、醜男ぶおとこですわね。」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それから意見を加えて悪事をめさせ善人に仕立るのが極くすきで、一寸ちょっと聞くと怖いようでございますが、く/\見ると赤子も馴染むような美男びなんですから、綽名あざなを業平文治と申しましたのか
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
梅三郎は評判の美男びなんで、婀娜あだな、ひんなりとした、芝居でいたせば家橘かきつのぼりの菊の助でも致しそうな好男いゝおとこで、丁度其の月の二十八日、春部梅三郎は非番のことだから、用達ようた旁々かた/″\というので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そんなれば林藏という男が美男びなんという訳でもなし、の通りの醜男子ぶおとこ、それと斯ういう訳になろうとは合点がまいりません、おとっさん、ねえちいさいうちから妹は其様そんな了簡の女ではないのです
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて此の医者の知己ちかづきで、根津ねづ清水谷しみずだに田畑でんぱたや貸長屋を持ち、そのあがりで生計くらしを立てゝいる浪人の、萩原新三郎はぎわらしんざぶろうと申します者が有りまして、うまれつき美男びなんで、年は二十一歳なれどもまだ妻をもめとらず