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せいち
ふりがな文庫
“
精緻
(
せいち
)” の例文
その
精緻
(
せいち
)
な社会主義的方面の知識と、改革者的な熱誠とを文筆に傾倒して、最も率直に我国の急進派婦人を代表される
山川菊栄
(
やまかわきくえ
)
夫人が
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
すべてのものに開かれ、何物も否定せず、何物も憎まず、寛大な同情で世界を観照する、広い
精緻
(
せいち
)
な精神的好奇心をそなえていた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
現代の物理学は非常に発達し、
精緻
(
せいち
)
をきわめた体系をもっているが、その形式は全くギリシァ時代の人間の考え方と、ほとんど差がない。
比較科学論
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
例へば自叙伝の執筆の如きわが身の上をも他人のやうに眺め取扱ふ余裕なくんばいかでか
精緻
(
せいち
)
深刻なる心理の
解剖
(
かいぼう
)
を試み得んや。
小説作法
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
嘗
(
か
)
つてユーゴのミゼレハル、
銀器
(
ぎんき
)
を
盜
(
ぬす
)
む
一條
(
いちでう
)
を
讀
(
よ
)
みし
時
(
とき
)
に
其
(
その
)
精緻
(
せいち
)
に
驚
(
おどろ
)
きし
事
(
こと
)
ありしが、この
書
(
しよ
)
載
(
の
)
するところ
恐
(
おそ
)
らく
彼
(
か
)
の
倫
(
りん
)
にあらざるべし。
罪と罰(内田不知庵訳)
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
▼ もっと見る
フランス印象派の音楽をきわめて
精緻
(
せいち
)
な境地に引き上げた作曲家、精緻に過ぎて大衆性はないが、芸術的な香気の高い作品が少なくない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
この気合で押して行く以上はいかに複雑に進むともいかに
精緻
(
せいち
)
に
赴
(
おもむ
)
くともまたいかに解剖的に説き入るとも調子は依然として同じ事である。
写生文
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
玄関を上った
処
(
ところ
)
は、広間だった。その広間の左の壁には、ゴヤの描いた『踊り子』の絵の、可なり
精緻
(
せいち
)
な模写が掲げてあった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
演じたのは磯貝次郎左衛門、三浦与次右衛門という浪人者で、従来あった柔術小具足に新たな技法をとりいれた、
精緻
(
せいち
)
巧妙な武術だという。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
狂躁
(
きょうそう
)
状態の内面描写——ことに正常な意識と病的な意識との並存状況の
精緻
(
せいち
)
きわまる浮彫りにおいて、古典的価値を有するものとされている。
「あかい花 他四篇」あとがき
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
肉弾相打って国技の
精緻
(
せいち
)
が、いまやそこに現出されんとした瞬間——まことにどうも変な結果になったものでした。
右門捕物帖:12 毒色のくちびる
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
盲人一流の芸者として当然の事なれども、触覚鋭敏
精緻
(
せいち
)
にして、琉球時計という特殊の
和蘭
(
オランダ
)
製の時計の掃除、修繕を探りながら自らやって楽しんでいた。
盲人独笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かくのごとく深くして根強い魂が発展して、自らとった論理の
精緻
(
せいち
)
や統一の完全こそ真に偉大なる哲学には決して欠けてはならないところの形式である。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
用に遠いが故に美にもまた遠い。丹念とか
精緻
(
せいち
)
とかの趣きはあろう。だがそれは
畢竟
(
ひっきょう
)
技巧の遊戯に落ちる。美の病は多く技巧より入ると知らねばならぬ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
其用は
信仰上
(
しんこうじやう
)
關係を有するか、
單
(
たん
)
に
玩弄品
(
ぐわんろうひん
)
たるか未だ
詳
(
つまびらか
)
ならずと雖も、間々
製作
(
せいさく
)
の
巧妙
(
こうめう
)
精緻
(
せいち
)
なる物有るを以て見れば甲の
考
(
かんが
)
への方實に近からんと
思
(
おも
)
はる。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
万花
(
まんげ
)
の
彩
(
いろど
)
りには、
琥珀
(
こはく
)
、さんご、真珠をちりばめ、
瓔珞
(
ようらく
)
には七ツの小さい金鈴と、
数珠宝珠
(
ずずだま
)
をさげるなど、妙巧の
精緻
(
せいち
)
、ただ
見恍
(
みと
)
れるのほか、ことばもない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の
精緻
(
せいち
)
な空想がこもり、また一筆ごとにおぼろげなものとなった、なぜとも知らず身ぶるいするために
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
しかし思想が剛健で、しかも観察の
精緻
(
せいち
)
を兼ねて、人を
吸引
(
ひきつ
)
ける力の
壮
(
さか
)
んに
溢
(
あふ
)
れて居るといふことは、一度其著述を読んだものゝ誰しも感ずる特色なのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あらゆる科学の粋を集めたいかなる器械と比べても到底比較にならないほど
精緻
(
せいち
)
をきわめたものである。
感覚と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
茂太郎が高唱したものの、なおいっそう深刻にして
精緻
(
せいち
)
な内容が、あの原稿紙に載せられつつある。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
T夫人の客間においては、皆
秀
(
ひい
)
でた階級の人々であったから、花やかな礼容の下に、趣味は
洗煉
(
せんれん
)
されまた尊大になっていた。習慣は無意識的なあらゆる
精緻
(
せいち
)
さを含んでいた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
釜の話は此手紙の中で最も
欣賞
(
きんしやう
)
すべき文章である。叙事は
精緻
(
せいち
)
を極めて一の
剩語
(
じようご
)
をだに著けない。實に
據
(
よ
)
つて文を
行
(
や
)
る間に、『そりや釜の中よ』以下の如き空想の發動を見る。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
しかも彼の感受性は、静の状態のうちより動の響きを聴き取るだけの
精緻
(
せいち
)
さを具え、その響きを精細に分析するだけの鋭利さを具え、全体を整然と統一するだけの明敏なる知力を伴っている。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
簡樸
(
かんぼく
)
なるは漢土の詩の長所なり、
精緻
(
せいち
)
なるは欧米の詩の長所なり、優柔なるは和歌の長所なり、軽妙なるは俳句の長所なり。しかれども俳句全く簡樸、精緻、優柔を欠くに非ず、他の文学また
然
(
しか
)
り。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
一つの
歌曲
(
リード
)
には四行から六行くらいの詩句で十分である。もっとも単純な表現でよろしい。巧妙な展聞も
精緻
(
せいち
)
な
和声
(
ハーモニー
)
もいらない。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
次第に生長し変化して、初期の美しさを失ったが、同時に
精緻
(
せいち
)
に暗くなっていくストラヴィンスキーを見るのは興味深い。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
余は彼の
独特
(
ユニーク
)
なのに敬服しながら、そのあまりに精細過ぎて、話の筋を往々にして殺して
仕舞
(
しま
)
う失敗を歎じた位、彼は
精緻
(
せいち
)
な自然の観察者である。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十勝岳の中腹で見られる雪の結晶は、札幌などで知られる結晶とはまた一段の
精緻
(
せいち
)
さを見せているのであった。
雪を作る話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
今彼我ノ二書ヲ比較スルニ東武ノ詩人
大沼枕山
(
おおぬまちんざん
)
ノ事ニ関シテハ彼ハ我ニ比シテヤヤ簡略ナリトイヘドモ中京ノ詩人
森春濤
(
もりしゅんとう
)
ノ事ニツキテハ
遥
(
はるか
)
ニ
精緻
(
せいち
)
ヲ極メタリ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
またはそこに
婉麗
(
えんれい
)
な優雅な
精緻
(
せいち
)
な美を認め得ないと言って、冷やかに見てはならぬ。否、末期においてすらこれほどのものを造り得たという事を感歎せねばならぬ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
この実に
精緻
(
せいち
)
な肖像画(というのは、それはどうも
戯画
(
カリカチュア
)
と名づけるわけにはいかなかったのだから)
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
これを前にしては、西鶴の
精緻
(
せいち
)
が無く、近松の濃艶が無く、馬琴の豪壮が無く、三馬の写実が無く、一九の滑稽が無い——これを後にしては紅葉、漱石の才人も出て来ない。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
現在の精密科学の方法の重要な目標は高級な数理の応用と、
精緻
(
せいち
)
な器械を用いる測定である。これが百年前の物理学と今の物理学との間に
截然
(
せつぜん
)
たる区別の目標を与えるのである。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
講壇で語られ研究室で論ぜられる哲学が論理の巧妙と思索の
精緻
(
せいち
)
とを誇ろうとするとき、懺悔としての語られざる哲学は純粋なる心情と謙虚なる精神とを失わないように努力する。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「曹操とても、兵学に通じておるもの。いかでさような計略におちいろう。お考えは至妙なりといえど、おそらく
鳥網
(
ちょうもう
)
精緻
(
せいち
)
にして一
鳥
(
ちょう
)
かからず、獲物のほうでその策には乗りますまい」
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
直截
(
ちょくせつ
)
に語れ。脂粉と
嬌飾
(
きょうしょく
)
とをなくして語れ。理解されるように語れ。一群の
精緻
(
せいち
)
な人々からではなく、多数の人々から、もっとも単純な人々から、もっとも微々たる人々から、理解されることだ。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
「佐藤春夫曰く、悪趣味の極端。したがってここでは、誇張されたるものの美が、もくろまれて居る。」——「文士相軽。文士相重。ゆきつ、戻りつ。——ねむり薬の
精緻
(
せいち
)
なる
秤器
(
はかり
)
。無表情の看護婦があらあらしく秤器を ...
めくら草紙
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それをすっかり信ずるには、あまりに
精緻
(
せいち
)
でまた
嘲笑
(
ちょうしょう
)
的だった。そして怒った時でさえも、冷静を維持する法をよく知っていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
些
(
ちっ
)
とも
卑猥
(
ひわい
)
な心持を起させずに、ただ
精緻
(
せいち
)
な観察其物として、他をぐいぐい引き付けて行く処などは、
何
(
ど
)
うしても
旨
(
うま
)
いと云わなければなりません。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人々は
精緻
(
せいち
)
なる機械そのものへの驚異を、ただちにかかる機械の産む製品への驚異としてはならぬ。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
雪の結晶については、「複雑
精緻
(
せいち
)
をきわめた美しい
六花
(
ろっか
)
」という言葉が、昔から使われて来た。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
ワグナーの音楽は音楽文化の上にきわめて重要性を持つことは言うまでもないが、その構成が雄大で、複雑
精緻
(
せいち
)
を極むるために、いつまでたっても難しさは解消されない。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
白絹でつつんで、さらに、
帙
(
ちつ
)
で抱いた愛らしい
一帖
(
いちじょう
)
の
経本
(
きょうほん
)
がはいっていた。紺紙に
金泥
(
きんでい
)
の細かい文字が、一字一字、
精緻
(
せいち
)
な仏身のように、
端厳
(
たんげん
)
な気と、
精進
(
しょうじん
)
の念をこめて、書かれてあった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この一首を見ても星巌の風土に対する観察の
精緻
(
せいち
)
であることが知られる。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
律動
(
リズム
)
と
和声
(
ハーモニー
)
との珍しい発見物、
光沢
(
こうたく
)
のある柔らかい
精緻
(
せいち
)
な織物の配列、色彩の
絢爛
(
けんらん
)
、発明力と機智との不断の傾注、などを認めざるを得なかった。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
人間業とは思えぬ巧妙
精緻
(
せいち
)
な風太郎の手口を見ると、決して二人や三人の仕事ではなく、異常な
頭脳
(
あたま
)
と体力を持ったたった一人の仕業に違いないということがよくわかります。
銭形平次捕物控:003 大盗懺悔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
忘月忘日 数日来の手痛き経験と
精緻
(
せいち
)
なる思索とによって余は下の結論に到着した
自転車日記
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いかに
精緻
(
せいち
)
な機械も自然の手に比べるなら、どんなに粗野であろう。機械的作品が劣るのは、あまりにその工程と結果とが簡単であるからと云えないであろうか。試みに一の字を描いてみよう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そしてグルック式の鈍重さやワグナー式の野蛮さなどを好んであざけり、それにフランスの
精緻
(
せいち
)
さを対立さしていた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
若冲の図は大抵
精緻
(
せいち
)
な彩色ものが多いが、この鶴は世間に
気兼
(
きがね
)
なしの
一筆
(
ひとふで
)
がきで、一本足ですらりと立った上に、
卵形
(
たまごなり
)
の胴がふわっと
乗
(
のっ
)
かっている様子は、はなはだ
吾意
(
わがい
)
を得て、
飄逸
(
ひょういつ
)
の
趣
(
おもむき
)
は
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
精
常用漢字
小5
部首:⽶
14画
緻
常用漢字
中学
部首:⽷
16画
“精緻”で始まる語句
精緻細巧