竹垣たけがき)” の例文
五、六ねんは、たちまちにぎてしまいました。植木屋うえきやが、七、八ねんつといった竹垣たけがきも、このあきにはあたらしくしなければなりませんでした。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とほければ木犀もくせいかをりたか横町よこちやうなり。これより白山はくさんうらでて、天外君てんぐわいくん竹垣たけがきまへいたるまでは我々われ/\これ間道かんだうとなへて、よるいぬゆる難處なんしよなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そこで更闌こうたけて抜き足をして、後ろ口から薄暗い庭へ出て、阿部家との境の竹垣たけがきの結びなわをことごとく切っておいた。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
暗緑のしめっぽい木立を抜けるとカラリと晴れた日を充分いっぱいに受けて、そこはまばらに結った竹垣たけがきもいつか倒れてはいたが垣の外は打ち立てたようながけ
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
他の方から低い竹垣たけがきをもって仕切られていて、そこにある井戸——それも僕の座敷から見える——は、僕の家の人々もつかわせてもらうことになっている。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
夕方ゆふかたになると竹垣たけがきに朝顔のからんだ勝手口で行水ぎやうずゐをつかつたのちのまゝ真裸体まつぱだか晩酌ばんしやくを傾けやつとの事ぜんを離れると、夏の黄昏たそがれ家々いへ/\蚊遣かやりけむりと共にいつか夜となり
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
花壇らしい竹垣たけがきの中の灌木かんぼくの類は枝先を地につけんばかりに吹きなびいて、枯れ葉がうずのようにばらばらと飛び回っていた。葉子はわれにもなくそこにべったりすわり込んでしまいたくなった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
四五本しごほんまがつたりたふれたりだが、竹垣たけがき根岸流ねぎしりうとりまはした、木戸きどうちには、うめ枝振えだぶりのいのもあるし、何處どこからつたか、はしうへやなぎ枯葉かれは風情ふぜいがある。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それうち竹垣たけがきあひだからは夕月ゆふづき行水ぎやうずゐをつかつてゐる女の姿すがたの見える事もあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
およぐやうなる姿すがたして、右手めてさぐれば、竹垣たけがきれたるが、する/\とさはる。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、薄命はくめいなあの恋人達はこんな気味きみのわるい湿地しつちまちに住んでゐたのか。見れば物語の挿絵さしゑに似た竹垣たけがきの家もある。垣根かきねの竹はれきつて根元ねもとは虫にはれて押せばたふれさうに思はれる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ひさしはづれに、階下した住居すまひの八でふ縁前えんさき二坪ふたつぼらぬ明取あかりとりの小庭こには竹垣たけがきひとへだてたばかり、うら附着くツついた一けん二階家にかいや二階にかいおな肱掛窓ひぢかけまどが、みなみけて、此方こなたとはむきちがへて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)