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せう
『
何か
變つた
事でも
起りましたか、
若しや、
昨夜の
海嘯のために、
海底戰鬪艇に
破損でも
生じたのではありませんか。』
一
生五十
年めくらに
成りて
終らば
事なからんと
夫れよりは一
筋に
母樣の
御機嫌、
父が
氣に
入るやう一
切この
身を
無いものにして
勤むれば
家の
内なみ
風おこらずして
居士は、
人命犯には
必らず萬已むを得ざる原因ある
事を
言ひ、
財主の
老婆が、
貪慾を
憤ふるのみの
一事にして
忽ち
殺意を
生ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと
言ひ
あゝ
此樣な
浮氣者には
誰れがしたと
思召、三
代傳はつての
出來そこね、
親父が一
生もかなしい
事でござんしたとてほろりとするに、
其親父さむはと
問ひかけられて、
親父は
職人
うわ
言をいつたり
夢を
見たり、こんな
事で一
生を
送れば
人は
定めし
大白痴と
思ふなるべく、
其やうな
馬鹿になつてまで
思ふ
心が
通じず、なき
縁ならば
切めては
優しい
詞でもかけて
此時こんな
塲合にはかなき
女心の
引入られて、一
生消えぬかなしき
影を
胸にきざむ
人もあり、
岩木のやうなるお
縫なれば
何と
思ひしかは
知らねども、
涙ほろ/\こぼれて一ト
言もなし。
振向ひて
見てくれねば
此方も
追ひかけて
袖を
捉らへるに
及ばず、
夫なら
廢せとて
夫れ
限りに
成りまする、
相手はいくらもあれども一
生を
頼む
人が
無いのでござんすとて
寄る
邊なげなる
風情
女房子位過ぐされぬ
事も
御座りますまいし、一
生は
長う
御座ります。
自分の
心も
何もぼうつとして
物思ひのない
處へ
行かれるであらう、つまらぬ、くだらぬ、
面白くない、
情ない
悲しい
心細い
中に、
何時まで
私は
止められて
居るのかしら、これが一
生か、一
生がこれか