たき)” の例文
木のえだをあつめ火をたきてあたりをりしに、其所よりすこしはなれてべつに火燄々えん/\もえあがりければ、児曹こどもら大におそれ皆々四方に逃散にげちりけり。
……たきつけを入れて、炭をいで、土瓶どびんを掛けて、茶盆を並べて、それから、扇子おおぎではたはたと焜炉の火口ひぐちあおぎはじめた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たきて居る者あり皆怪氣あやしげなる荒男ゆゑ左仲は又もや賊ならんと仰天ぎやうてんなしたれども今更立戻るべきやうもなく心ならずも彼の火のもとへ行しに彼者ども左仲を見付扨々さて/\暫くきやく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぢいやはやまからつて木小屋きごやにしまつていて、たきつけにする松葉まつばもしまつていて、るだけづゝおうち爐邊ろばたはこびました。赤々あか/\とした毎日まいにち爐邊ろばたえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ここは原子爆弾以来、多くの屍体したいが焼かれる場所で、たきつけは家屋のこわれた破片が積重ねてあった。皆が義兄を中心に円陣を作ると、国民服の僧が読経どきょうをあげ、わらに火がけられた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
「御飯たきのばアやも来たわ。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うろにのぞんでたきたてしに熊はさらにいでず、うろふかきゆゑにけふりおくいたらざるならんと次日つぎのひたきゞし山もやけよとたきけるに
嬰兒あかんぼ亭主ていしゆもごみ/\と露出むきだし一間ひとままくらならべて、晨起あさおき爺樣ぢいさま一人ひとりで、かましたたきつけてところで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もよほしける然るに其夜こくとも覺敷頃おぼしきころかぜもなくして燭臺しよくだい燈火ともしびふツとえければ伊賀亮不審ふしんに思ひ天文臺てんもんだいのぼりて四邊あたり見渡みわたすに總て海邊かいへんは數百そうの船にて取圍とりかこかゞりたき品川灣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此蹴綱に転機しかけあり、まつたつくりをはりてのち、穴にのぞんで玉蜀烟艸たうがらしたばこくきのるゐくまにくむ物をたき、しきりにあふぎけふりを穴に入るれば熊烟りにむせて大にいか
差出さしいだせばお三婆は圍爐裡ゐろりはたに火をたきたりしが是をきいて大きに悦びよくも/\此大雪をいとは深切しんせつにも持來り給へりと麁朶そだをりくべて寶澤をも爐端ろばたへ坐らせ元よりすきの酒なればすぐかん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
二竈ふたつべッつい大鍋おおなべの下をたきつけていた、あねさんかぶりの結綿ゆいわたの花嫁が返事をすると
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)