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沈黙
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ちんもく
ふりがな文庫
“
沈黙
(
ちんもく
)” の例文
旧字:
沈默
青山敬太郎は大河ほど
雄弁
(
ゆうべん
)
な口はきかなかった。かれはむしろ
沈黙
(
ちんもく
)
がちであり、ごくまれに
断片的
(
だんぺんてき
)
な意見を発表するにすぎなかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
我慢
(
がまん
)
できないような
厭
(
いや
)
らしい
沈黙
(
ちんもく
)
のなかで、ぼくは手紙を受取ると、そのまま、宿舎に入り、便所に飛びこんで、
鍵
(
かぎ
)
を降しました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
また
沈黙
(
ちんもく
)
が
続
(
つづ
)
いた。みんなは考えにしずんでいた。そんなふうにして、どのくらいいたか知らないが、ふとさけび声が聞こえた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
ドノバンはしいて反対をしてみたものの、心のなかではそれよりほかに
策
(
さく
)
がないことを知っていたので、
沈黙
(
ちんもく
)
してしまった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
母が何やらしきりに父をなじると、父の方は例の調子で、冷やかで
慇懃
(
いんぎん
)
な
沈黙
(
ちんもく
)
をまもっていたが、まもなく外へ出て行った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
▼ もっと見る
このひととき、家々からは
夕餉
(
ゆうげ
)
の煙が立上り、人々は都大路から姿をひそめる。その名もまさに平安の、静けき
沈黙
(
ちんもく
)
が街々の上を
蔽
(
おお
)
うている……
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
年
(
とし
)
とった、この
考古学者
(
こうこがくしゃ
)
は、しばらく
目
(
め
)
を、
鏡
(
かがみ
)
からそらさずに、
沈黙
(
ちんもく
)
していましたが、そのうち、うめくように
うずめられた鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しばらく
沈黙
(
ちんもく
)
が続いた。復一は黙って真佐子に
対
(
むか
)
っていると、真佐子の人生に無計算な美が絶え間なく空間へただ
徒
(
いたず
)
らに燃え費されて行くように感じられた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不思議
(
ふしぎ
)
な
沈黙
(
ちんもく
)
が
続
(
つづ
)
いた。
父
(
とう
)
さんでさえそれを
説
(
と
)
き
明
(
あ
)
かすことが
出来
(
でき
)
なかった。ただただ
父
(
とう
)
さんは
黙
(
だま
)
って、
袖子
(
そでこ
)
の
寝
(
ね
)
ている
部屋
(
へや
)
の
外
(
そと
)
の
廊下
(
ろうか
)
を
往
(
い
)
ったり
来
(
き
)
たりした。
伸び支度
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
しかし私はいま自分の感じていることが
何処
(
どこ
)
まで真実であるのか、そんなことはみんな根も葉もないことなんじゃないかと疑ったりしながら、気むずかしそうに
沈黙
(
ちんもく
)
したまま
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
出様によっては暴力にも
訴
(
うった
)
えかねまじき気味合なので佐助が割って
這入
(
はい
)
りようようその場を預かって帰した春琴は
真
(
ま
)
っ
青
(
さお
)
になって
慄
(
ふる
)
え上り
沈黙
(
ちんもく
)
してしまったが最後まで謝罪の言葉を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
広間
(
ひろま
)
の人びとの声は、それでもまだしばらくのあいだ、なげき悲しみつづけていましたが、いつか流れがたえるようにきえていくと、こんどはまた、恐ろしいほどのふかいふかい
沈黙
(
ちんもく
)
と
壇ノ浦の鬼火
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
(とき、とき、お
湯
(
ゆ
)
持
(
も
)
って
来
(
こ
)
。)老人は
叫
(
さけ
)
んだ。家のなかはしんとして
誰
(
だれ
)
も
返事
(
へんじ
)
をしなかった。けれども
富沢
(
とみざわ
)
はその
夕暗
(
ゆうやみ
)
と
沈黙
(
ちんもく
)
の
奥
(
おく
)
で誰かがじっと
息
(
いき
)
をこらして
聴
(
き
)
き耳をたてているのを
感
(
かん
)
じた。
泉ある家
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
賢明
(
けんめい
)
な老博士が賢明な
沈黙
(
ちんもく
)
を守っているのを見て、若い歴史家は、次のような形に問を変えた。歴史とは、昔、在った
事柄
(
ことがら
)
をいうのであろうか? それとも、粘土板の文字をいうのであろうか?
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
しばし
沈黙
(
ちんもく
)
がつづいた
後
(
あと
)
で、
私
(
わたくし
)
から
言葉
(
ことば
)
をかけました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
沈黙
(
ちんもく
)
を氷とすれば我があるは今いと寒き
高嶺
(
たかね
)
ならまし
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
肚のうちで笑殺しているかのような
沈黙
(
ちんもく
)
の陣だった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私
(
わたし
)
は
悲
(
かな
)
しくなつて、
多時
(
しばらく
)
深
(
ふか
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
に
沈
(
しづ
)
んだ。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
戸の両側に、
湿
(
しめ
)
やかな
沈黙
(
ちんもく
)
がつづいた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
唇
(
くちびる
)
の
赤
(
あか
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
……
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「自然に親しむには、
孤独
(
こどく
)
と
沈黙
(
ちんもく
)
に限るよ。明日ここを出発するまでは、できるだけおたがいにそうした気持ちですごしたいものだね。」
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
十五分ばかりわたしたちは風と
争
(
あらそ
)
いながら歩み
続
(
つづ
)
けた。しんとした夜の
沈黙
(
ちんもく
)
の中でわたしたちの足音がかわいた
固
(
かた
)
い土の上でさびしくひびいた。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
「まア、
掛
(
か
)
けましょう」といわれ、
並
(
なら
)
んで
腰
(
こし
)
を降ろしたまま、しばらく
沈黙
(
ちんもく
)
が続きました。もう港が近いとみえ、
鴎
(
かもめ
)
が
遥
(
はる
)
か下の海上を飛んでいるのが見えます。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
ひやりとした
冷
(
つめ
)
たい
風
(
かぜ
)
が、どこからともなく
吹
(
ふ
)
いてきて、
闇
(
やみ
)
の
中
(
なか
)
を
過
(
す
)
ぎていきます。それは、
沈黙
(
ちんもく
)
の
世界
(
せかい
)
に、なにか
気味悪
(
きみわる
)
い
思
(
おも
)
い
出
(
で
)
をそそらせようとするものでした。
老工夫と電灯:――大人の童話――
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
『ジナイーダ?』と、わたしは訊こうとしたが、音はわたしの
唇
(
くちびる
)
で
空
(
むな
)
しく消えた。そして
突然
(
とつぜん
)
、あたりのものみな、深い
沈黙
(
ちんもく
)
に沈んでしまった。真夜中にはよくあることである。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
いままで
沈黙
(
ちんもく
)
していたドノバンは、まっさきにボートのほうへ走った。イルコック、ウエップ、グロースの三人はそれにつづいた。四人はえいえい声をあわしてボートを海上におろそうとした。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
沈黙
(
ちんもく
)
したる風は
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
次郎は、かれらが眼を光らせ、耳をそばだてて聞いている
沈黙
(
ちんもく
)
の底に、すさまじく
渦
(
うず
)
を巻いている感情の
嵐
(
あらし
)
を明らかに感ずることができた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「どうもおれの考えでは、だれもおれたちを
救
(
すく
)
うくふうはしていないらしい」とガスパールおじさんはとうとう
沈黙
(
ちんもく
)
を
破
(
やぶ
)
って言った。「ちっとも音が聞こえない」
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
随分
(
ずいぶん
)
、長い間、
沈黙
(
ちんもく
)
が続いた後で、ぽつんとぼくが、「熊本さんも、高知ですか」と
訊
(
たず
)
ねました。あなたは
頷
(
うなず
)
いてから、「坂本さんは、高知の、どこでしたの」と言います。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それから、しばらく、
星
(
ほし
)
たちは
沈黙
(
ちんもく
)
をしていました。が、たちまち、一つの
星
(
ほし
)
が
ある夜の星たちの話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それまで
沈黙
(
ちんもく
)
をまもっていたゴルドンが、はじめて口をきった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ほのおが火の中から上って、ぴかぴか火花を
散
(
ち
)
らしながら屋根のほうまで
巻
(
ま
)
き上がった。ぱちぱちいうたき火のほのおの音だけが夜の
沈黙
(
ちんもく
)
を
破
(
やぶ
)
るただ一つの音であった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
長
(
なが
)
い
沈黙
(
ちんもく
)
の
冬
(
ふゆ
)
に
移
(
うつ
)
らんとしていたのです。
空晴れて
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
木俣がおどりだしたので人々は
沈黙
(
ちんもく
)
した。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
沈黙
(
ちんもく
)
はわたしにとって、つらくもあり悲しくも思われた。わたしはしきりと話をしたかったけれど、やっと口を切ると、親方はぷっつり手短に答えて、顔をふり向けもしなかった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
森の中の重苦しい
沈黙
(
ちんもく
)
を
破
(
やぶ
)
る物音はさらになかった。カピは言いつけられたとおりにかけ出そうとはしないで、しっかりとわたしたちにくっついていた。いかにも
恐怖
(
きょうふ
)
にたえない様子であった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
“沈黙”の意味
《名詞》
沈黙(ちんもく)
何も言わず、黙っていること。
(context、figuratively)音がないこと。
(context、figuratively)長い間活動がないこと。
(出典:Wiktionary)
沈
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
黙
常用漢字
中学
部首:⿊
15画
“沈黙”で始まる語句
沈黙家
沈黙派
沈黙寡言