トップ
>
歯痒
>
はがゆ
ふりがな文庫
“
歯痒
(
はがゆ
)” の例文
旧字:
齒痒
疾風
(
しっぷう
)
のごとく飛んで行く八五郎、その忠実な後ろ姿を見送ってどうして今まで手を抜いていたか、平次は自分ながら
歯痒
(
はがゆ
)
い心持でした。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
U氏がコンナ事でYを
免
(
ゆる
)
すような
口吻
(
くちぶり
)
があるのが私には
歯痒
(
はがゆ
)
かった。Yは果してU氏の思うように腹の底から
悔悛
(
くいあらた
)
めたであろう乎。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
話ちゅうのは之だけで、何や解決したようなせんような、
歯痒
(
はがゆ
)
い事だすけンど、小説と違うて実話だすさかい、どうもしよがおまへン。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
まして借りるところも、貸すところも——手ぶらで出でて、手ぶらで帰るよりほか、何事もできない自分を、
歯痒
(
はがゆ
)
いと思いました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何故もっと日本人は日本の芸術を内省して見ないかと
歯痒
(
はがゆ
)
くなるな。一にも西洋二にも西洋だ。それに昨今のアメリカ化はどうだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
私は
歯痒
(
はがゆ
)
くて
堪
(
たま
)
らなくなって私の健康さを見せびらかし、私の強いいのちの力をいろいろの言葉にしてあなたの耳から吹き込んでやった。
健康三題
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いい景色だということさえもお互に語り合うことの出来ない二、三時間は、昔の五、六時間の下り船よりも私に
歯痒
(
はがゆ
)
さと退屈を感ぜしめた。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
また自分に親しい芸術家や学者が世の中をうまく渡る事が出来なくて不遇に苦しんでいるのを
歯痒
(
はがゆ
)
く思っていたかのように私には感ぜられる。
子規の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
あんな短い時間のうちに、これだけ大切なことを云って貰えたことを私は感謝するし、又、貴方としたら何か
歯痒
(
はがゆ
)
かろうとすまなく感じます。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
銀子も何か
歯痒
(
はがゆ
)
くなり、打ち明けて相談してみたらとも思うのだったが、それがやはり
細々
(
こまごま
)
と話のできない性分なのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何を
犒
(
ねぎら
)
われているのか、彼らには自覚がなかった。故に秀吉は、銚子を下に置くと、それを
歯痒
(
はがゆ
)
がって、
諭
(
さと
)
すのであった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
授業にも読書にもまだ相応に興味を
有
(
も
)
つてる頃ではあり、
何処
(
どこ
)
か気性の
確固
(
しつかり
)
した、判断力の勝つた女なので、日頃校長の無能が女ながらも
歯痒
(
はがゆ
)
い位。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
近頃代助は
元
(
もと
)
よりも誠太郎が
好
(
す
)
きになつた。
外
(
ほか
)
の
人間
(
にんげん
)
と
話
(
はな
)
してゐると、
人間
(
にんげん
)
の
皮
(
かは
)
と
話
(
はな
)
す様で
歯痒
(
はがゆ
)
くつてならなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と郁子と敏子は兎角
歯痒
(
はがゆ
)
がる。自分達も一番年下で思い切り可愛がられた時代があるのに、それはもう忘れている。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
なんというしっこしのない幸さんだろう、おせんはこの問答を聞いて
歯痒
(
はがゆ
)
くなった。もっとてきぱきした男だった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
一向に
進捗
(
しんちょく
)
せず、河野の知り合いの村の巡査の話を聞いて見ても、素人の私達でさえ
歯痒
(
はがゆ
)
くなるほどでありました。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私を激励するつもりも多少あったかも知れないが、「どうも
歯痒
(
はがゆ
)
くて見ていられない、もう君なんぞに用はない」
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
民藝館に来られてある種の品物を指し、「これは民藝品ではなく上等な品ではないか」と云って、反問される方が時々ありますが、私達には
歯痒
(
はがゆ
)
いのです。
日本民芸館について
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかし何かこう食足りないような外来の旅客としての
歯痒
(
はがゆ
)
さは土地の人に交れば交るほど岸本の心に
附纏
(
つきまと
)
った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は突飛な、また過激な言動が必ずしも改革者の言動であるとは思いませんが、こういう平穏な、悪くいえば煮え切らない婦人界の進歩的傾向を
歯痒
(
はがゆ
)
く感じます。
婦人改造と高等教育
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
広子は妹の話し終った時、勿論
歯痒
(
はがゆ
)
いもの足らなさを感じた。けれども
一通
(
ひととお
)
り打ち明けられて見ると、これ以上第二の問題には深入り出来ないのに違いなかった。
春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
入
(
いれ
)
ものが小さき故に、それが
希望
(
のぞみ
)
を満しますに、手間の
入
(
い
)
ること、何ともまだるい。
鰯
(
いわし
)
を育てて鯨にするより
歯痒
(
はがゆ
)
い段の
行止
(
ゆきどま
)
り。(公子に向う)若様は御性急じゃ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婆あさんは
歯痒
(
はがゆ
)
いのを我慢するという風で、何か口の内でぶつぶつ云いながら、勝手へ下った。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
また
歯痒
(
はがゆ
)
いやうなところもあり、気むづかしい母親一人のために、結婚を躊躇してゐるのだといふ評判など聞くにつけて、こんな人物が恋愛をしたらどんな風になるんだらうと
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それらには我の顔も貸そうし手も貸そう、
丸丁
(
まるちょう
)
、
山六
(
やまろく
)
、
遠州屋
(
えんしゅうや
)
、いい
問屋
(
といや
)
は皆
馴染
(
なじみ
)
でのうては
先方
(
さき
)
がこっちを呑んでならねば、万事
歯痒
(
はがゆ
)
いことのないよう我を自由に出しに使え
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
衣食その他の毎日の消費生活が、決して末端の小さ過ぎる問題でなかったことを知るにつけても、みなさんの学問の遅々として進まぬことを、私は
歯痒
(
はがゆ
)
く感ぜずにはおられぬのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
実は貴方の
頑固
(
がんこ
)
なのを私
歯痒
(
はがゆ
)
いやうに存じてをつたので御座います……ところが!
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「違う!」と冬次郎は
歯痒
(
はがゆ
)
そうにいった。「人ではなくて物であろう!」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その傍に坐っている自分の母親がいかにも
歯痒
(
はがゆ
)
いのんきな存在に見え
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
いつまで待てど暮せど埒あかず、あまりに
歯痒
(
はがゆ
)
う覚ゆるまま、この上は使いなど遣わすこと無用と、予がじきじきに催促にまいった。おのれ何ゆえに細工を怠りおるか。仔細をいえ、仔細を申せ。
修禅寺物語
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一旦
(
いったん
)
居士が余を以て居士の後継者と目するか、よし後継者と目さぬまでも社会的に成功させようという老婆親切を以て見た時には徹頭徹尾当時の余は
歯痒
(
はがゆ
)
いまでに意思薄弱の一青年であったのである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
漁船は、見るも
歯痒
(
はがゆ
)
いような船足でのろのろと近づいてゆく。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
むしろモドカシ只
歯痒
(
はがゆ
)
いやうな一種冗漫の感じを与へる。
文壇一夕話
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
見てゐると、
歯痒
(
はがゆ
)
くて、ばからしくなつて来ます。
プールと犬
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
今となってもなお、自己の貞操に加えられた極度の侮辱乱暴を、無条件に許してしまいたい心持が残っているとは浅ましい!
歯痒
(
はがゆ
)
い!
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
まざまざ目に浮かべながら、ちょっと見当もつきかねるのが、
牴
(
もど
)
かしくも
歯痒
(
はがゆ
)
くもあったが、この少女をそれ以上苦しめることは無駄であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まして、休之助のきびきびと割切った態度を見ているので、どうしても万三郎のすることが
歯痒
(
はがゆ
)
く、みれんがましいようにしか受取れないのであった。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
老女 ——若い者等の口争い、見て居て
歯痒
(
はがゆ
)
い。娘よ。しばらく退くが宜い。わたしは阿難に話すであろう。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
歯痒
(
はがゆ
)
く思うことがあるが、この私の書物を読む人も、主人公である私が、何か
五里霧中
(
ごりむちゅう
)
に迷った形で、探偵をやるのだといいながら、
一向
(
いっこう
)
探偵らしいこともせず
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私は平塚さんが現実のみを——殊にその一面のみを——固定的に眺めておられるのを
歯痒
(
はがゆ
)
く思います。
平塚さんと私の論争
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
到底左大臣を満足させる程の
款待
(
かんたい
)
をなし得ないのを、
耻
(
はず
)
かしくも
歯痒
(
はがゆ
)
くも感ずる念が一杯であった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「そんなら、もう一に通じている時分だが。——もっとも宗近の御叔父がああ云う人だから、ことに依ると
謎
(
なぞ
)
が通じなかったかも知れないね」とさも
歯痒
(
はがゆ
)
そうである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
歯痒
(
はがゆ
)
うてしようがおまへなンだが、結局、名前も住んでる所も何も分らん男が一人、雪と雪との間の
亀裂
(
ひゞ
)
に落ちて死んだちゅう事だけで、委しい事は一向分りまへなンだ。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
もっとも東の
雛壇
(
ひなだん
)
をずらりと通して、柳桜が、色と姿を競った中にも、ちょっとはあるまいと思う、
容色
(
きりょう
)
は容色と見たけれども、
歯痒
(
はがゆ
)
いほど
意気地
(
いくじ
)
のない、何て
腑
(
ふ
)
の抜けた
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうかといって他に相当な生活の道を求める手段を講ずる
気振
(
けぶり
)
もなかったから、
一図
(
いちず
)
に我が子の出世に希望を繋ぐ
親心
(
おやごころ
)
からは
歯痒
(
はがゆ
)
くも思い
呆
(
あき
)
れもして不満たらざるを得なかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
たたき大工
穴鑿
(
あなほ
)
り大工、のっそりという
忌々
(
いまいま
)
しい
諢名
(
あだな
)
さえ負わせられて
同業中
(
なかまうち
)
にも
軽
(
かろ
)
しめらるる
歯痒
(
はがゆ
)
さ恨めしさ、
蔭
(
かげ
)
でやきもきと
妾
(
わたし
)
が思うには似ず平気なが憎らしいほどなりしが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あんまり
歯痒
(
はがゆ
)
いから、あっしは深川の尾張屋の親分を呼んで来て、陽のあるうちに下手人を縛って貰おうと思って飛んで来たんだが、橋の上で銭形の平次親分と鉢合せをするなんざ
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
慎太郎はこう云う彼等の会話に、妙な
歯痒
(
はがゆ
)
さを感じながら、剛情に一人黙っていた。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
危険な物の這入っている疑のある箱の
蓋
(
ふた
)
を、そっと開けて見ようとしては、その手を又引っ込めてしまうような態度に出るのを見て、
歯痒
(
はがゆ
)
いようにも思い、又気の毒だから、いたわって
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
妹思いのお母さんはこの二人の
配偶
(
つれあい
)
がそれ/″\発展成功して行くのを喜ぶと同時に、兄弟は他人の初まりといって自然競争心があるから、お父さんの煮え切らないのを
歯痒
(
はがゆ
)
がるけれども
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
歯
常用漢字
小3
部首:⽌
12画
痒
漢検1級
部首:⽧
11画
“歯”で始まる語句
歯
歯牙
歯噛
歯齦
歯朶
歯軋
歯並
歯咬
歯切
歯磨