“棕櫚:しゅろ” の例文
“棕櫚:しゅろ”を含む作品の著者(上位)作品数
芥川竜之介6
岡本かの子3
泉鏡花3
柳田国男2
パウル・トーマス・マン2
“棕櫚:しゅろ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 工芸 > 工芸16.7%
自然科学 > 植物学 > 植物学8.3%
文学 > ドイツ文学 > 小説 物語4.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
しかし、そのとき宮子の視線はさきから棕櫚しゅろの陰で沈んでいた参木の顔を見つけると、俄にクリーバーの肩の上で動揺した。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
棕櫚しゅろの葉の如く、両手の指を、ぱっとひろげたまま、活人形のように、ガラス玉の眼を一ぱいに見はったきり、そよとも動かぬ。
春の盗賊 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その跫音あしおとより、鼠の駈ける音が激しく、棕櫚しゅろの骨がばさりとのぞいて、其処そこに、手絡てがらの影もない。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そう呶鳴どなると丘田医師はたちまち身をひるがえして、そば棕櫚しゅろ鉢植はちうえに手をかけた。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
遠征隊は一散に林の中へ飛び込んだ。棗椰子なつめやし山毛欅ぶなのき棕櫚しゅろの木などにおおわれて林の中は暗かった。
謙作は右の板の間のはしについた棕櫚しゅろの毛の泥拭どろぬぐいで靴の泥を念入りに拭ってからゆっくりと階段をあがって往った。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「僕はあの棕櫚しゅろの木を見る度に妙に同情したくなるんだがね。そら、あの上の葉っぱが動いているだろう。——」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ひっそりした裏庭の芝生しばふの上にも、ただ高い棕櫚しゅろの木のこずえに白い月が一輪浮んでいるだけです。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
横手の土塀際の、あの棕櫚しゅろの樹の、ばらばらと葉が鳴る蔭へ入って、黙ってせなかでなぞしてな。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中は広い廊下のような板敷で、ここには外にあるのと同じような、棕櫚しゅろくつぬぐいのそばに雑巾ぞうきんがひろげておいてある。
普請中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
宮子は身をひるがえすように、ひらりと盆栽の棕櫚しゅろを廻っていくと、甲谷はまた山口の方へ向き返った。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
彼はそういいながら、足の先で、その棕櫚しゅろで作った幅の広いマットを、あるべき位置へおしやるのでした。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それ等の城の一つ。この城の門には兵卒が一人銃を持って佇んでいる。そのまた鉄格子てつごうしの門の向うには棕櫚しゅろが何本もそよいでいる。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこには四五本の棕櫚しゅろの中に、枝を垂らした糸桜いとざくらが一本、夢のように花を煙らせていた。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その直ぐ向うは木槿もくげ生垣いけがきで、垣の内側にはまばらに高い棕櫚しゅろが立っていた。
カズイスチカ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
千二百十二年の三月十八日、救世主のエルサレム入城を記念する棕櫚しゅろ安息日あんそくびの朝の事。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
小さな棕櫚しゅろの手箒で蒲団ふとんの上を、それから座敷箒で、その部屋と隣の部屋まで、とうとう三造はすっかり二階中掃除させられてしまった。
斗南先生 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ただ一つの屋根窓だけが開いていて、二つの棕櫚しゅろの葉の間から白い手が見えて、小さなハンケチを別れをおしんでふるかのようにふっていました。
ただここに一つ不思議なことには日光から私を防ぐため棕櫚しゅろで拵えた大きな笠が私の体を蔽うている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この山寺の町で作られるもので特色があるのは、棕櫚しゅろこしらえたお櫃入ひついれであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
(5)Palmetto ——南カロライナ州は一名“Palmette State”と言われるほどだから、この棕櫚しゅろがよほど多いのであろう。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
棕櫚しゅろやサバル椰子やしは茂り、亜熱帯性の植物は香を放ち、車夫は狂人のように走り且つ叫んだ。
祭壇の前に集った百人に余る少女は、棕櫚しゅろの葉の代りに、月桂樹の枝と花束とを高くかざしていた——夕栄ゆうばえの雲が棚引たなびいたように。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
高い棕櫚しゅろの木のかげになったクリイム色の犬小屋が、——そんなことは当然に違いありません。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのとき広い廊下の向うの隅にある棕櫚しゅろの鉢植の蔭からヌッと姿を現わした者があった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき、この扉の向い、丁度棕櫚しゅろの鉢植の置かれている陰から、ヌーッと現われたる人物……それは外でもない、主人総一郎の愛娘糸子の楚々たる姿だった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は手持不沙汰てもちぶさたを紛らすための意味だけに、そこの棕櫚しゅろの葉かげに咲いている熱帯生の蔓草つるくさの花をのぞいて指して見せたりした。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
桟敷の上からも棕櫚しゅろの木のてっぺんからも、たちまち起こるブラヴォ、ブラヴァの声。
これらの廊下には、高価な暗緑色のペルシャ絨毯じゅうたんが敷き詰められて、諸所に長椅子ソーファ棕櫚しゅろや、龍舌蘭等の熱帯樹の植木鉢が飾られてある。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
鼻緒はなおに好んで棕櫚しゅろを用いますが、昔の様式を残した珍らしい下駄であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その赤い壁につけて、大きな棕櫚しゅろの木を五、六本植えたところが大いにいい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして細かい棕櫚しゅろの毛で編んだ帽子とでもいったようなものをかぶっている。
球根 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
父の膝許ひざもとに残しながら、出しなに、台所をそっのぞくと、ともしび棕櫚しゅろ葉風はかぜおのずから消えたとおぼしく……真の暗がりに
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
咆吼ほうこうする左膳、棕櫚しゅろぼうきのような髪が頬の刀痕にかぶさるのを、頭を振ってゆすりあげながら、一つしかない眼を憎悪に燃やして足もとのお藤をにらみすえた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼女は棕櫚しゅろの木のように、つんと首をたてたまま、しずしずと入って来た。
丁度雪の残った棕櫚しゅろの葉の上には鶺鴒せきれいが一羽尾を振っていた。
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
棕櫚しゅろの木はつい硝子ガラス窓の外に木末こずえの葉を吹かせていた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこの街道は何マイルも続いて両側に四重の棕櫚しゅろの並み木を持っていた。
アフリカの文化 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
南おもては一面の硝子ガラス張りだが、それがおりからの日光を一ぱいに浴びながら内部の暖気のためにぼうっと曇り、その中から青々とした棕櫚しゅろの鉢植をさえ覗かせている。
雉子日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
かし、梅、だいだいなどの庭木の門の上に黒い影を落としていて、門の内には棕櫚しゅろの二、三本、その扇めいた太い葉が風にあおられながらぴかぴかとひかっている。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それはまた木蔦きづたのからみついたコッテエジ風の西洋館と——殊に硝子ガラス窓の前に植えた棕櫚しゅろ芭蕉ばしょう幾株いくかぶかと調和しているのに違いなかった。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし四家フユ子は英介氏の腕輪のなかに障害馬のように飛こむと、棕櫚しゅろの毛皮のような髪の毛を乱雑にカールした黄色い額の波打際を仰向けにして、ずるそうに彼にわらいかけた。
職業婦人気質 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
じゃ椰子て何? 椰子はです、棕櫚しゅろに似た樹です。
椰子蟹 (新字新仮名) / 宮原晃一郎(著)
信州の山村で穀物を入れる袋に、葛布のような太くあらい布を織って、棕櫚しゅろのような赤黒い色をした袋を製して用いているのは、原料はこのシナの木の皮であり、他国には例の無いことだと
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
五、六十畳そこそこくらいのものだったでしょうか? あちらの棕櫚しゅろの陰に、こちらの椰子やしやゴムの熱帯樹のそばに、敷き詰められた猩々緋しょうじょうひ絨毯じゅうたんの上に
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
棕櫚しゅろ、竹、その他明らかに亜熱帯性のものもある。
丁度ちょうどそのとき、入口に置いた棕櫚しゅろの葉蔭から、一人の男がこっちをのぞいたように思った。チラと見たばかりで誰とも最初は思い出せなかったが、そのうち君江のところへ来た初顔の女が、
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
庭には枝ぶりのよい梅や棕櫚しゅろなどがあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
奥の出窓の中には、棕櫚しゅろの樹が立っていた。
それは小さい暖かいゆたかな部屋で、厚い絨毯が敷かれていて、クッションのたくさん置いてあるトルコ椅子と、一株の棕櫚しゅろと、イギリス風の革椅子と、脚の曲ったマホガニイのテエブルとが備えてある。
植木鉢の棕櫚しゅろの葉が絶えず微動している。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
パッサージのドアをあけ、去年伸子たちがモスクヷに着いたときからそこに置かれていた棕櫚しゅろの植木鉢のかげから、下足番のノーソフの大きな髭があらわれたら伸子は急に体じゅうが軟かくなってしまった。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
二人は遠眼にそれを見ていよいよ焦躁あせり渡ろうとするを、長者はしずかに制しながら、洪水おおみずの時にても根こぎになったるらしき棕櫚しゅろの樹の一尋余りなをけ渡して橋としてやったに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
群集は、刻一刻とその数を増し、あの人の通る道々に、赤、青、黄、色とりどりの彼等の着物をほうり投げ、あるいは棕櫚しゅろの枝をって、その行く道に敷きつめてあげて、歓呼にどよめき迎えるのでした。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
「兄さん、棕櫚しゅろの花が咲いてますのよ。葉の下のこずえに房のやうに沢山たくさん。あたし何だか、ぽち/\冷たい小粒のものが顔に当るので雨かしらと思ひましたらね、花がこぼれるのですわ。」
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
菩提樹ぼだいじゅや白樺の老樹が霜で真っ白になった姿には、いかにも好々爺こうこうや然とした表情があって、糸杉や棕櫚しゅろよりもずっと親しみがあり、その傍にいるともう山や海のことを想いたくもない。
成功の棕櫚しゅろを取りましたでしょう。
棕櫚しゅろの花こぼれて掃くも五六日
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
翻える視線と棕櫚しゅろの並木、あらびや風の刳門アウチと白壁の列、ゆるく起伏する赤石の鋪道と、いま市民のひとりのようにその上を闊歩してるセニョオル・ドン・ホルヘ・タニイ——べら棒に長ったらしいが、私だって
かたわらに、家業がら余程奇を好んだと見えて、棕櫚しゅろの樹が鉢に突立つったててある、その葉が獅子の頭毛かしらげのように見えて、私は、もう一度ぐらぐらと目がくらんだ、横雲黒く、有明ありあけに……
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花束に未練はあっても出費ついえを好まぬ温和なる人々は、アルベエル一世公園を貫く車道の両側にて、一脚五法の貸し椅子に納まり、そのうしろにして、爪立つまだちしてなお及ばざるは音楽堂の屋根、または棕櫚しゅろの幹
それから棕櫚しゅろのような鼻毛の光る、ほら穴みたいな鼻の穴、そのままの大きさで座蒲団ざぶとんを二枚かさねたかと見える、いやにまっ赤なくちびる、そのあいだからギラギラと白いかわらのような白歯が覗いている。
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふるさとも可懐なつかしい、わずかに洋杖ステッキをつくかつかぬに、石磴の真上から、鰻が化けたか、仙人掌サボテンが転んだか、棕櫚しゅろが飛んだか、もののたくましい大きな犬が逆落しに(ううう、わん、わんわん!)
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
島の西端にはモールトリー要塞ようさい(4)があり、また夏のあいだチャールストンの塵埃じんあいと暑熱とをのがれて来る人々の住むみすぼらしい木造の家が何軒かあって、その近くには、いかにもあのもしゃもしゃした棕櫚しゅろ(5)の林があるにはあった。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
若い洋髪の女性は、片手で寝乱れた髪を撫で上げながらも、こうした大邸宅にふさわしい気品のうちにユックリユックリと白羅紗らしゃのスリッパを運んで来たが、やがて棕櫚しゅろのマットの中央まで来ると、すこし寒くなったらしく、襟元えりもとを引き合わせて立ち止まった。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
天草あまくさ島では旧暦六月三十日の夏越なごしの行事に泳ぐ風習があるが、村によってはこの花と「かたばみ」の葉とを合せて石の上でき、その液を以て爪を染めてから海にはいり、あるいは棕櫚しゅろの葉に紅白のトビシャゴの花を貫いたものを、女の子などはくびに巻いて泳ぐという。
お前が殿下にお眼にかかった七時二、三十分頃といえば、ちょうどわたしにも覚えがある。食堂の開くスグ前で、……わたしは殿下に腕をお貸しして、廊下を食堂へと御案内申し上げていた時刻ですよ。そしてその前には、わたしはヨアンネスと控えの間裏で話をしていましたが、殿下はあの棕櫚しゅろの置いてあるあたりで、外相様や米国大使様方とお話をしていらっしゃった。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)