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某
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ある
ふりがな文庫
“
某
(
ある
)” の例文
それは康熙年間の
某
(
ある
)
夏の午後のことである。涼亭には
蒲留仙
(
ほりゅうせん
)
が腰をかけて、長い
煙管
(
キセル
)
をくわえながらうっとりとして何か考えている。
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
去年の一月末の
陰
(
くも
)
つた
夜
(
よ
)
に、わたしは
拠
(
よんどこ
)
ろない義理で下町のある貸席へ顔を出すことになつた。そこに
某
(
ある
)
社中の俳句会が開かれたのである。
赤い杭
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
我邦
(
わがくに
)
軍人がたの御気象には欧洲各国でも舌を
巻
(
まい
)
ておるそうで、これは我が
某
(
ある
)
将官の方に箱根でお目通りをいたしたとき
直接
(
じき/\
)
に伺ったところでございます。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此頃読んだ御経の中につく/″\成程と感心したことのある、聞いて呉れ此様いふ話しぢや、むかし
某
(
ある
)
国の長者が二人の子を引きつれて麗かな天気の
節
(
をり
)
に
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
◎
浅草
(
あさくさ
)
の或る寺の
住持
(
じゅうじ
)
まだ坊主にならぬ壮年の頃
過
(
あやま
)
つ事あって生家を追われ、
下総
(
しもうさ
)
の
東金
(
とうかね
)
に親類が有るので、当分厄介になる
心算
(
つもり
)
で
出立
(
しゅったつ
)
した途中、
船橋
(
ふなばし
)
と云う所で
某
(
ある
)
妓楼
(
ぎろう
)
へ
上
(
あが
)
り
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
▼ もっと見る
そして、昨日無名の人から
某
(
ある
)
慈善団体へ三千円の寄付があったことをたしかめたのです。
探偵戯曲 仮面の男
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
側
(
そば
)
にゐた
近眼
(
ちかめ
)
の
某
(
ある
)
夫人は、エエド氏の顔を眼鏡越しにじろりと見ながら言つた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
監物は隻手にその茶碗を執って一口飲んで乾いた咽喉を潤しながら、見るともなしにむこうの方にやった眼にふと
某
(
ある
)
物を認めた。
不動像の行方
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
場所の名は今あらはに云ひにくいが、これは
某
(
ある
)
カフヱーの主人の話である。
但
(
ただ
)
しその主人とは前からの
馴染
(
なじみ
)
でも何でもない。
赤い杭
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
直其足で同じ町の
某
(
ある
)
家が閾またぐや否、厭だ/\、厭だ/\、詰らぬ下らぬ馬鹿〻〻しい、愚図〻〻せずと酒もて来い、蝋燭いぢつて其が食へるか、
鈍痴
(
どぢ
)
め肴で酒が飲めるか
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
今夜も
懶
(
なま
)
けものの癖として品川へ
素見
(
ひやかし
)
にまいり、元より恵比寿講をいたす気で
某
(
ある
)
楼
(
うち
)
へ
登
(
あが
)
りましたは宵の口、
散々
(
さんざ
)
ッ
腹
(
ぱら
)
遊んでグッスリ遣るとあの火事騒ぎ、
宿中
(
しゅくじゅう
)
は
鼎
(
かなえ
)
の
沸
(
わ
)
くような塩梅しき
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
土佐藩の
徒目付
(
かちめつけ
)
横山源兵衛の許へ
某
(
ある
)
日精悍な顔つきをした
壮
(
わか
)
い男が来た。取次の知らせによって横山が出ると、壮い男はこんなことを云った。
義人の姿
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
妹
(
いもと
)
の冬子も兄と共に上京して、
某
(
ある
)
女学校に通っていたが、昨年無事に卒業して今は郷里の実家に帰っている。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
十余人の者は
某
(
ある
)
足軽の家に集まったが、そこには盗賊の入った形跡はなかった。小柄なそこの
妻女
(
さいじょ
)
は玄関の口に立って
知己
(
しりあい
)
の人と話していた。
女賊記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は
某
(
ある
)
友人の紹介で、貴族エル
何某
(
なにがし
)
の別荘へ避暑かたがた遊びに行った事がある、その別荘は
倫敦
(
ロンドン
)
の街から九
哩
(
マイル
)
ばかり
距
(
はな
)
れた所にあるが、中々手広い立派な
邸宅
(
やしき
)
で
画工と幽霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
某
(
ある
)
禅寺に
壮
(
わか
)
い美男の僧があって附近の女と関係しているうちに、僧は
己
(
じぶん
)
の非行を悟るとともに
大
(
おおい
)
に後悔して、田舎へ往って修行をすることにした。
這って来る紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その風俗と色の
蒼
(
あお
)
ざめたるとを見れば
某
(
ある
)
活版所の女工なるべし、花は盛の今の年頃を日々の
塵埃
(
ほこり
)
と
煤
(
すす
)
にうずめて、あわれ
彼女
(
かれ
)
はいかなる希望を持てる、
老
(
おい
)
たる親を養わんとにや。
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鶴岡
(
つるおか
)
城下の話であるが、
某
(
ある
)
深更
(
よふけ
)
に一人の武士が
田圃路
(
たんぼみち
)
を通っていると、焔のない
火玉
(
ひのたま
)
がふうわりと眼の前を通った。
鬼火を追う武士
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
市郎も
固
(
もと
)
より
其
(
その
)
覚悟であったので、帰郷の後、半年ばかりは富山の
某
(
ある
)
病院の助手に雇われ、
此頃
(
このごろ
)
再び帰郷して
愈
(
いよい
)
よ開業の準備に
取懸
(
とりかか
)
っている
中
(
うち
)
に、飛騨の山里は早くも冬を催して
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
千住か熊谷かのことであるが、其処に
某
(
ある
)
尼寺があって、その住職の尼僧と親しい
壮
(
わか
)
い男が何時も寺へ遊びに来ていたが、それがふっつりと来なくなった。
法衣
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「なぜ笑やって、その話は嘘じゃよ、これは
某
(
ある
)
学者が、嘘に云うた話じゃそうじゃ、
自家
(
うち
)
の伯父さんが話したよ」
放生津物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
夏の微月の射した晩、夜学会をやっていた仲間の少年達と台場の沖という処へ
旗奪
(
はたばい
)
に往ったことがあった。
鷲
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところで
某
(
ある
)
朝のこと、薬師町の田村と云う旅館の前を通っているとその旅館の二階に琢次の頭が見えていた。
不動像の行方
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その罪人と云うのは
某
(
ある
)
遊女で重罪を犯したもので、春早々死刑になることになっていたが、その遊女が牢屋の口にある桜の花の咲く
比
(
ころ
)
まで待ってくれと願ったので
花の咲く比
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
相場師の娘が、父親にねだって買ってもらった
衣服
(
きもの
)
を、知りあいの
裁縫
(
さいほう
)
師の処へ縫わしにやった。
娘の生霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その乞児は
某
(
ある
)
日
知合
(
しりあい
)
の乞児といっしょに酒を飲んだが、酔って蓄えている金の事を誇り顔に話した。
義猴記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、
某
(
ある
)
川の川原へ往ったところで、石川は小便がしたくなったので車をおりた。川原には五六人の者が集まっていた。石川は何んだろうと思って傍へ往ってみた。
唖娘
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これは明治三十七八年
比
(
ごろ
)
、田島金次郎翁が叡山に往っている時、
某
(
ある
)
尼僧に聞いた話である。
這って来る紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は平太郎に向って
某
(
ある
)
寺で大般若経を空中に投りあげて、和尚をはじめ参詣人を恐れさした古狸や、また、某祠を三
筒
(
つ
)
に見せて人を驚かした古猫やを蹄で捕獲した話などを聞かし
魔王物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「
某
(
たれ
)
さんは、
昨夜
(
ゆうべ
)
、狸に化されて家へよう帰らずに、
某
(
ある
)
所をぐるぐると歩いていた」
村の怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
夜益之助は寝床へ入ってから、女房にこんなことを云って臆病な世間の人の噂を嘲笑った。と、がたりと云う大きな音が表庭の方でした。竹束か何かを
投
(
ほう
)
りだしたような音であった。
宝蔵の短刀
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、気が
注
(
つ
)
いてみると
己
(
じぶん
)
は
某
(
ある
)
寺の門前に立っていた。彼は其処へ駈け込んだ。
山姑の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
僧はそこで出発して目指す田舎の寺へ往ったが、途中で
某
(
ある
)
一軒の宿屋へ泊った。
這って来る紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこは
陸中
(
りくちゅう
)
の
某
(
ある
)
海岸であった。一人の
壮
(
わか
)
い漁師は
沙丘
(
すなやま
)
の上に立って、悲しそうな眼をして海のほうを見おろしていた。漁師は同棲したばかりの女房を海嘯のためにさらわれた者であった。
月光の下
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それから何年か経って、由平の
姪
(
めい
)
が
某
(
ある
)
製糸工場の女工になって、寄宿舎に寝ていると、某夜廊下に人の
跫音
(
あしおと
)
がして障子が開いた。姪は驚いて其の方へ眼をやった。其処には男の姿があった。
阿芳の怨霊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
商人
(
あきんど
)
が
深更
(
よふけ
)
に
赤坂
(
あかさか
)
の
紀
(
き
)
の
国
(
くに
)
坂を通りかかった。左は
紀州邸
(
きしゅうてい
)
の
築地
(
ついじ
)
塀、右は
濠
(
ほり
)
。そして、濠の向うは
彦根
(
ひこね
)
藩邸の
森々
(
しんしん
)
たる木立で、深更と言い自分の影法師が
怖
(
こわ
)
くなるくらいな物淋しさであった。
狢
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
日
(
ひ
)
、宿を取り損ねて日が暮れてしまった。星が
斑
(
まばら
)
に光っていた。路のむこうには真黒な峰が重なり重なりしていた。路は
渓川
(
たにがわ
)
に沿うていた。遥か下の地の底のような処で水の音が聞えていた。
殺神記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
三ノ町の
某
(
ある
)
農家の門口へ、一人の旅僧が来て雨戸を叩いて宿を乞うた。
怪しき旅僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
晋陽の
某
(
ある
)
大家へ出入している
媒婆
(
ばいば
)
があって、それが某日南の家へきた。
竇氏
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
臣
(
けらい
)
の家の
酒宴
(
さかもり
)
に招かれた監物は、夜遅く一人の若党に提灯を持たして、
己
(
じぶん
)
の邸の傍まで帰って来たところで、祝い物を入れて往った布呂敷包を忘れたことを思い出したので、若党に執りに往かし
不動像の行方
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
(
ある
)
城下へ二人の怪しい男が来て、不思議な術を行って見せたので、藩では早速それを捕え、死刑にすることにして刑場へ引出したが、切支丹ではどんな魔法があって逃げだすかも判らないと云うので
幻術
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
某
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
“某”を含む語句
誰某
何某
某々
某君
某氏
某寺
某町
某日
某夜
某人
某方
某家
某所
某甲
某国
某屋
何某殿
某処
某女
某村
...