月樣つきさま)” の例文
新字:月様
渠等かれら米錢べいせんめぐまるゝときは、「お月樣つきさまいくつ」と一齊いつせいさけれ、あとをもずしてはしるなり。ただ貧家ひんかふことなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今宵こよひ舊暦きうれきの十三舊弊きうへいなれどお月見つきみ眞似事まねごと團子いし/\をこしらへてお月樣つきさまにおそなまをせし、これはおまへ好物かうぶつなれば少々せう/\なりとも亥之助ゐのすけたせてあげやうとおもふたれど
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あぢさゐの花もともの使つかつてゐるのは、そらのお月樣つきさまがちょうどまんまるになつてゐるころ、あぢさゐもまんまるになつた。かういふことをかんじさせようとしてゐるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それから……くもそこにお月樣つきさま眞蒼まつさをて、そして、ことがあるだらう……さうときは、八田潟はつたがたふなみなくびしてたれるつてふんです。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ずつとお月樣つきさまのさすはうへ、さ、蒲團ふとんれ、蒲團ふとんへ、うもたゝみきたないので大屋おほやつてはいたが職人しよくにん都合つがふがあるとふてな、遠慮ゑんりよなにらない着物きものがたまらぬかられをひて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にんえのきもとちて、「お月樣つきさまいくつ」とさけときは、幾多いくたの(おう同音どうおんに「お十三じふさんなゝつ」として、飛禽ひきんつばさか、走獸そうじうあしか、一躍いちやく疾走しつそうしてたちまえず。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ざつしたばかりで、すゝもほこりものまゝで、まだ雨戸あまどけないでくくらゐだから、下階した出窓下でまどした、すゝけたすだれごしにそなへよう。お月樣つきさま、おさびしうございませうがと、かざる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或時あるときづる立山りふざんかたより、或時あるとき神通川じんつうがは日沒につぼつうみよりさかのぼり、えのき木蔭こかげ會合くわいがふして、お月樣つきさまび、お十三じふさんし、パラリとつて三々五々さん/\ごゞかのつゑひゞところ妖氛えうふんひとおそひ、變幻へんげん出沒しゆつぼつきはまりなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)