昨晩ゆうべ)” の例文
昨晩ゆうべ不思議な病院で、奇怪の手術の手伝いをした為め、思いもよらない沢山の金を、彼は外人から貰ったので、今夜は大変裕福なのである。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昨晩ゆうべの座敷の樣子が、また鮮かに私の目に浮んだ。然うだ、菊池君の住んで居る世界と、私達の住んで居る世界との間には、餘程の間隔がある。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それとも江戸、大阪へ紛れ込む積りで御座いましっろうか……その当てがガラリと外れた昨晩ゆうべの蔵元屋のお召捕騒動。
昨晩ゆうべ、備前屋で頼まれた手紙、懐ろへ入れたまんまで今まで忘れていました。ああ、お金の方はどうなったかしら」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昨晩ゆうべの癇癪がまたむらむらと起って来た。皮を剥がれ肉を絞られる思いで、今にも狂気きちがいになりそうな気がした。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
じゃあ、申しますがね、昨晩ゆうべのあれはあんた方はうめえことをおやんなすったもんですなあ。確かに、うめえことでしたよ。それぁわっしも隠しやしません。
「あのね、」静子は口早に云い出した、「昨晩ゆうべあんなことをなすったものだから——あなただわね——お父さんが怒って、すぐに呼んで来いと仰言ってるのよ。」
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「つまらねえもないでしょう。昨晩ゆうべはどうです。大泊で。あっはっ。」とF君、なかなかのががさない。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
これはみな昨晩ゆうべのでき事なんです。そこで、いま特に注意をお願いしたいのは、ほかでもありません。
済みませんが御頼み申します、つい昨晩ゆうべへゞまして、と後は云はず異な手つきをして話せば、眉頭に皺をよせて笑ひながら、仕方のないも無いもの、少し締まるがよい
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
昨晩ゆうべ、私の部屋の窓の所に来ましたので、寒いといけないと思って、入れてあげましたの。宵の口だと、すぐお返しに上るのでしたけど、あまり遅いのでやめました。
どうしてあなたそれがあたしのだとわかって? ああそう、筆蹟でね。では昨晩ゆうべあたしたちが道でつき当たったのは、あなただったのね。ちっとも見えなかったんだもの。
太政官は昨晩ゆうべの姿其のまゝで、玄關の「天滿校」の大額の下に、縊れて死んでゐたのである。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それはよろしい、昨晩ゆうべのは孝助は悪くはないのだ、孝助が私の供をして提灯を持って大曲りへ掛ると、田中の龜藏、藤田の時藏おうちの相助の三人が突然いきなりに孝助に打ってかゝり
「お可哀相かはいさうに……あのかたは、昨晩ゆうべ釣臺つりだいで、病院びやうゐんへおはひりなすつたさうでございます。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
きつと昨晩ゆうべは夜通し泣いてゐたんだらうな可哀想に、もうどこへもやらないよ。父さんが夜一つもねないでもいゝ、父さんが抱いて、お前をよくねせてやるからな。もう大丈夫だ。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
……なんでもそんなわけでして、昨晩ゆうべ押山様は、大変遅くまで外出なさり、お酒を召してお帰りのようでしたが、それから私達はグッスリ眠りましたので、大月様とかからお電話を
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
きみぼく昨晩ゆうべ、これをもらっていったので、たいへんに、おとうさんやおかあさんにしかられてしまった。もうしくないから、昨日きのう、もらったのをもかえすよ。」とかえしたのであります。
海の少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨晩ゆうべな、お前のおさんが来て大体の話は聞いたが、それあ菅原の家も無理矢理身重の高さんを引っ張って行くってのは道理に外れている! お父さんもお父さんで、約束は約束だからな
凍雲 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
「勿論そうだろう。おれだって、昨晩ゆうべそれを聞いて始めて知ったばかりだ」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これは可怪いと思いましたが、昨晩ゆうべの今朝で、そんな事を詮議立てするわけにも行きません。それに三十郎は早く両親に死に別れて、若党一人、草履取一人、女中二、三人という、全くの独り者です。
本は一切いっせつ片附けて枕許まくらもとには何も置かずにとこに入った、ところが、やがて昨晩ゆうべと、ほとんど同じくらいな刻限になると、今度は突然胸元が重苦しくされるようになったので、不図ふとまた眼を開けて見ると
女の膝 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
「ええ、昨晩ゆうべ盗賊どろぼうにとられたもののことをつてるのでせう」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ひどく吹きやしたなあどうも昨晩ゆうべは妙にしみると思いやしたよ。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
昨晩ゆうべおみつつあん泊つて行かはりましたぜ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
昨晩ゆうべ、何かあったのでございますか。」
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おや左様でございましたか。これは失礼をいたしました。へいへい確かに宇和島様には、昨晩ゆうべからお宿まりでございますよ」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
よく眠れたかとか、郷里くにの夢を見なかつたかとか、お吉は昨晩ゆうべよりもズットなれ々しく種々いろ/\な事を言つてくれたが
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あなたは昨晩ゆうべどこへおいでになりました、もしやあの向うの水車小屋の方へおいでになりはしませんか」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
済みませんがお頼み申します、つい昨晩ゆうべへべまして、と後は云わず異な手つきをして話せば、眉頭まゆがしらしわをよせて笑いながら、仕方のないもないもの、少し締まるがよい
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「まあ、お前はほんとに……。昨晩ゆうべあれほど飲んでおいて、その上まだ飲むつもりなんですか。」
不肖の兄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「……ヘヘ……ヘイヘイ。ちっと遅うなりまして……ヘイ……。昨晩ゆうべからほかの小使がみんな休みまして、今朝から私一人で御座いますもんじゃけん。ヘイ。まことに……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小池といふ惡足わるあしに逢へなかつたのは、家の爲めに幸福であつたのかも知れぬとさへ、遂には思はれて來た。——して見ると、昨晩ゆうべから泊つてゐる兵隊さんは、一生の恩人かも知れぬ。——
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
よく眠れたかとか、郷里くにの夢を見なかつたかとか、お吉は昨晩ゆうべよりもズツト忸々なれなれしく種々いろいろな事を言つてくれたが
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨晩ゆうべからの働きで誰も彼も綿のように疲労つかれていた。で、四人は打ち揃って何より先に眠ることにした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうにらんだのだ、つまり酒井様のお手のついた別嬪べっぴんをつれ出した奴が、ほんとうにこの府中の町へ逃げ込んだものとすれば、そうして昨晩ゆうべつかまらなかったのが本当だとすれば
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
昨晩ゆうべ、あれからどうなすったの。ずいぶん酔ってたわよ。」
嗚呼東京に來たのだつけと思ふと、昨晩ゆうべの足の麻痺しびれが思出される。で、膝頭を伸ばしたりかゞめたりして見たが、もう何ともない。階下したではまだ起きた氣色けはひがない。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨晩ゆうべは、近寄れなかったが、今朝は、もう火もしずまってみれば、行けないことはない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この時焦心じれきって居りましたし、兄が昨晩ゆうべ並木どおりで乞食から貰った銀笛だなどと、よしや私が云った所で迂散に思われるに違いない! 第一、私達の家柄として、乞食から物を貰ったなどと
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昨晩ゆうべあれから可笑おかしかったわ。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
昨晩ゆうべの事が歴々まざ/\と思出された。女中が襖を開けて鬚面の菊池君が初めて顏を出した時のさまが目に浮ぶ。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
昨晩ゆうべの泥棒みたようなすばしっこい奴にはかなわねえ、幽霊みたようだ、そこにいたかと思うとスーッと消えてしまうだ、あんな泥棒はつかめえどころがねえでがすから力ずくにゃいかねえ
其麽そんな事があつた爲ですか、昨晩ゆうべ頻りに、貴方あなたがお出にならないツて、金村の奴心配してましたよ。』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
家の前から昨晩ゆうべ腕車くるまで來た方へ少し行くと、本郷の通りへ出ますから、それは/\賑かなもんですよ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
戯談じようだんば止しなされ。これ、そんだら何ですか。』と手を延べて、机の上から何か取る様子。それは昨晩ゆうべ淡紅色ときいろ手巾はんけちであつた。市子が種蒔を踊つた時の腰付が、チラリと私の心に浮ぶ。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『私は、自分の職責しごと忠實まじめにやつてる積りです。毎日出來るだけ忠實まじめにやつてる積りです。毎晩町を歩いて、材料があるかあるかと、それ許り心懸けて居ります。そして昨晩ゆうべも遲くまで、』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一昨夜は呉服町で綺麗な簪を買つたのを見たから、何氣なく聞いて見ると、妹へ遣るのだと嘘吐いたな。昨晩ゆうべは古河端のさいかちの樹の下で見はぐつた。今夜といふ今夜こそ現場を見屆けたぞ。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
一昨夜をととひは呉服町で綺麗なかんざしを買つたのを見たから、何気なく聞いて見ると、妹へ遣るのだと嘘吐いたな。昨晩ゆうべは古河端のさいかちの樹の下で見はぐつた。今夜といふ今夜こそ現場げんぢやうを見届けたぞ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)