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す
ふりがな文庫
“
掏
(
す
)” の例文
聞くものはなし、一体何時頃か知らんと、時計を出そうとすると、おかしい、
掏
(
す
)
られたのか、落したのか、鎖ぐるみなくなっている。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、いずれも同じことで、中味は綺麗に
掏
(
す
)
り替えられ、砂利と金物の屑を詰めて、巧みに
看貫
(
かんかん
)
(重量)を
誤魔化
(
ごまか
)
しただけの事です。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「お役で封を切る!」と、ぷッつり——切った麻糸からすべり落ちたのは、
印伝革
(
いんでんがわ
)
の大型紙入れ、まさしく多市の
掏
(
す
)
られた品物だ。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから何かを取りに行った隙をみて、趙は自分の用意して来た焼餅一枚を取り出して、皿にある焼餅一枚と
掏
(
す
)
り換えて置いた。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
いつだったかも、主人の金を
掏
(
す
)
られたお手代が、橋から飛ぼうとしているのを見て、
大枚
(
たいまい
)
百両をつかましてやったようなお人だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
フェロシアン加里を
掏
(
す
)
り変えて置いたからで、また出血が、行衛知れずになったというのも、藍で染めた水のために色が分らなかったからなのだ。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その概略は、川上川下に住む二人の爺が川に
筬
(
やな
)
を掛けると、上の爺の筬に小犬、下の爺のに魚多く入る。上の爺怒って小犬と魚を
掏
(
す
)
り替えて還った。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「わしは拾って来たのではない。どうしてあのどうろくがその小判を持っていたのか知らないが、昌平橋のうえで
掏
(
す
)
ったのだ。
巾着
(
きんちゃく
)
切りだよ、わしは」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
たとえ電車の中の
掏摸
(
すり
)
といえども、乗客から
蟇口
(
がまぐち
)
を
掏
(
す
)
り
盗
(
と
)
ったときは、その代償として相手のポケットへ、チョコレートか何かをねじこんでおくべきだ。
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
後から調べて見たら、
掏
(
す
)
り替えた方は東京のもので、掏り替えられた方は埼玉県出身でした。丁度上野辺でポン引きがポット出を引っかけるのと同じ
遣口
(
やりくち
)
です
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
然るべき
仇討
(
あだうち
)
の免状でも持っておいでるかと問うてみたればそれは無い。在るには在ったが、浅草観世音の境内で懐中物と一所に
掏
(
す
)
られてしもうたと云うのじゃ
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
スリに
掏
(
す
)
り取られるのも、
性根
(
しょうね
)
が間抜けなせいでなく、おっとりした人柄のせいに違いない。そう僕は思った。そして僕らはウナギを食べ、酒を飲み始めました。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
アメリカ人といふ奴は、巾着切でも、人殺しでも
良
(
い
)
い、これはアメリカから習つたのだとさへ言へば、自分の財布を
掏
(
す
)
られても、女房の
心
(
しん
)
の臓を引抜かれても平気でゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
よく聞いて見ると、私はその貴婦人のダイヤの
指環
(
ゆびわ
)
を
掏
(
す
)
ったてんですから、驚きましたね。
指環
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「たッ……た大変だ大変だ。此中に一人掏摸が居るッ。金時計を
掏
(
す
)
られた金時計を!」
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
あるいは自分が
掏
(
す
)
られたのではなくって、あのちょっと目にとまった女が、後に
掏摸
(
すり
)
であったことが
判
(
わか
)
って、あの女が掏摸であったのかというように解しても差支ないのであるが
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「あれ、この財布は、東京でチボに
掏
(
す
)
られたと、いいなさッとッたんじゃないですか」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「毎年十二月二十五日に人の懐中物を
掏
(
す
)
り取るにしちゃ、まずい言い訳だ」
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
こっそりと
掏
(
す
)
りとる、それが愉快なのだ、その瞬間、実に何とも云えない快感を覚える、それを味いたいばっかりに、罪を重ねているのだが、盗んでしまえばそれぎりで、品物に執着がないのだから
梟の眼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「ハンド・バッグを
掏
(
す
)
られないように気をつけておいで。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
煙草一袋だが
掏
(
す
)
られた感じはひどくいやなものだった。
夢の殺人
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
「なんとよくもこれだけ
掏
(
す
)
りかへられたものだ」と。
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
美くしく小さく
冷
(
つめ
)
たき
緑玉
(
エメラルド
)
その玉
掏
(
す
)
らば
哀
(
かな
)
しからまし
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「
掏
(
す
)
り
替
(
か
)
えちゃいけないぜ」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
千両箱を三つ盗み出して、新墓に埋めたのは、私と仲間の者の仕業に相違ございませんが、中味を
掏
(
す
)
り替えたのは誰やら一向存じません。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竹蔵が久兵衛の紙入れを
掏
(
す
)
る、お節が声をかける、万事が筋書をそのままに運んで、首尾よくお節の嫁入りまで漕ぎ着けました。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「今、
瀬戸物町
(
せとものちょう
)
で、四十両の勘定をとってきたばかりなンだ。それがねえ! 財布ぐるみだ! 財布ぐるみ
掏
(
す
)
られてしまった」
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
連れてった
痩
(
や
)
せた車掌がいい男で、
確
(
たしか
)
に煙草入を——洋服の腰へ手を当てて仕方をして——見たから
無銭
(
ただ
)
のりではありません。
掏
(
す
)
られたのです。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「そんならそうと、
何故
(
なぜ
)
君は云わないんだ。そいつが
掏摸
(
スリ
)
の名人かなんかで、猿を抱きあげるとみせて、
手提
(
バッグ
)
から問題の燐寸を
掏
(
す
)
っていったに違いない——」
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それとも知らず左膳は、いつからか、この
掏
(
す
)
りかえられた鍋を、今まで後生大事にまもってきたとは!
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「最初は田口君かとも思ったが、君の素振りでそれと
覚
(
さと
)
ったのさ。一体何時
掏
(
す
)
り替えたね?」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それを率きて行き暮れて旅亭に宿り驢と同室に臥すを怪しみ亭主が覗くと、銭多く出す様子、因って一分一体
異
(
かわ
)
らぬ他の驢をかの児の眠った間に、金の糞する驢と
掏
(
す
)
り替えた。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
大石さん、うちのお
父
(
と
)
さんも、ええとこがあるでしょう? 東京の女スリから惚れられて、一ぺんは
掏
(
す
)
られた財布をかえして貰うて、おまけに、若松くんだりまでも、逢いに来られとる。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「持っておりましたが私がその前に
掏
(
す
)
り取っておいたのです。古い手ですが……旅券は完全なもので、東京××大使館
雇員
(
やとい
)
を任命されて
新
(
あらた
)
に赴任する形式になっております。ここに持っておりますが」
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「助太刀なんか
要
(
い
)
るものか、銭さえありゃ俺一人で片付けてやるが、藤沢で
掏
(
す
)
られて
空
(
から
)
っ
尻
(
けつ
)
だ。八、——穴のあいたのがあったら少し貸せ」
銭形平次捕物控:082 お局お六
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
人を助けるためにしても、よしまたそれがどういう理由でも、
掏
(
す
)
られた者のうろたえざまをみるのは、かれの
懺悔心
(
ざんげしん
)
が人知れぬ痛みを感じる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身
(
み
)
に
附
(
つ
)
けて
居
(
を
)
れば
遺失
(
おと
)
しさうだ、——と
云
(
い
)
つて、
袖
(
そで
)
でも、
袂
(
たもと
)
でも、
恁
(
か
)
う、うか/\だと
掏
(
す
)
られも
仕兼
(
しか
)
ねない。……
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
掏摸
(
すり
)
といえども、財布を
掏
(
す
)
ったらそのポケットにチョコレートでも入れて来るべし”てなことを主張して居りまする奇賊——いや憎むべき大泥坊でございます。
すり替え怪画:烏啼天駆シリーズ・5
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
思わず頭をあげるあいだに、かれは他の枕と
掏
(
す
)
りかえて来た。公主は夜の明けるまでそれを覚らなかった。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
また機巧あり、ベルトが
睹
(
み
)
た尾長猴はいかにこんがらがった鎖をも
手迅
(
てばや
)
く解き戻し、あるいは旨く
鞦韆
(
ぶらんこ
)
を御して遠い物を手に取り、また己れを愛撫するに乗じてその持ち物を
掏
(
す
)
った。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「困ったなあ。僕は蝙蝠傘を
掏
(
す
)
られてしまった」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「——その上この十日ばかり、張つて/\張り
捲
(
まく
)
つたさうだから、三文
博奕
(
ばくち
)
にしても、五兩や十兩は
掏
(
す
)
つて居るさうですよ」
銭形平次捕物控:109 二人浜路
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
見返りお綱の指わざが、天王寺で、あの紙入れを
掏
(
す
)
ったばかりに、
渦
(
うず
)
が渦を呼ぶ鳴門の海のように、それからそれへ波瀾の絶えぬことになった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何だ、何だ、何だ、何だと?
掏摸
(
すり
)
だ、
盗賊
(
どろぼう
)
だと……クソを
啖
(
くら
)
え。ナニその、
胡麻和
(
ごまあえ
)
のような
汝
(
てめえ
)
が
面
(
つら
)
を
甜
(
な
)
めろい! さあ、どこに
私
(
わっし
)
が
汝
(
てめえ
)
の紙入を
掏
(
す
)
ったんだ。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
途中であの事件に
遭
(
あ
)
って、あんなことになるわ、そばにあったトランクは、早いところ何者かによって
掏
(
す
)
りかえられていたので、わしはすっかり失敗してしまった。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それからだんだんと
訊
(
き
)
いてみると、その蛇の一件の最中に、油断して紙入れや
莨入
(
たばこい
)
れを
掏
(
す
)
り取られた者もあるという。それで先ず大体の見当はつきましたが、蛇と切髪の方がまだよく判りません。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かくも、自分をはッきりと意識するようでは、とても、
隼
(
はやぶさ
)
に人の物を
掏
(
す
)
るなどという
神技
(
かみわざ
)
に近い芸ができるものではない。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「聽いたよ、新造に
達引
(
たてひ
)
かしちやよくねえな。二三日前瀧ノ川の
紅葉
(
もみぢ
)
を見に行つて、財布を
掏
(
す
)
られて、
伴
(
つれ
)
の女達にお茶屋の拂ひまでして貰つたといふ話だらう」
銭形平次捕物控:174 髷切り
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
(おや、おや。)と疑わしそうに言ったけれども、一種の見得で、自分には
掏
(
す
)
られたあてもないのである。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私が風船にラジウムを入れたとき、五十嵐の奴はそれを裏返したが、そのとき
遅
(
おそ
)
く
彼
(
か
)
のとき
早
(
はや
)
しで、彼は、
小器用
(
こきよう
)
に指先を使って、ラジウムを
掏
(
す
)
りとったに違いなかった。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
掏
漢検1級
部首:⼿
11画
“掏”を含む語句
掏摸
掏賊
掏児
女掏摸
掏代
掏兒
掏取
掏損
掏替
掏模