拍子木ひやうしぎ)” の例文
あめにしづくの拍子木ひやうしぎが、くもそこなる十四日じふよつかつきにうつるやうに、そでくろさもかんで、四五軒しごけんきたなる大銀杏おほいてふしたひゞいた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
野田のだ卯平うへい役目やくめといへばよるになつておほきな藏々くら/″\あひだ拍子木ひやうしぎたゝいてあるだけ老人としよりからだにもそれは格別かくべつ辛抱しんぼうではなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其中そのうちまた拍子木ひやうしぎを、二ツ打ち三ツ打ち四ツ打つやうになつて来ると、四ツつじ楽隊がくたい喇叭らつぱれて段々だん/\近くきこえまする。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
舞台の奥から拍子木ひやうしぎおとが長いを置きながら、それでも次第しだいに近くきこえて来る。長吉ちやうきち窮屈きうくつこしをかけたあかりの窓から立上たちあがる。するときちさんは
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その又騒ぎが、一通りではない。第一に湯を使ふ音や桶を動かす音がする。それから話し声や唄の声がする。最後に時々番台で鳴らす拍子木ひやうしぎの音がする。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それが丁度子刻こゝのつ(十二時)——火の番の二度目の拍子木ひやうしぎが鳴つて通ります。
打越うちこえて柴屋寺へといそぎける(柴屋寺と言は柴屋宗長が庵室あんしつにして今なほありと)既に其夜も子刻こゝのつ拍子木ひやうしぎ諸倶もろとも家々の軒行燈のきあんどんも早引てくるわの中も寂寞ひつそり往來ゆきゝの人もまれなれば時刻じこくも丁度吉野屋よしのや裏口うらぐちぬけ傾城けいせい白妙名に裏表うらうへ墨染すみぞめの衣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空耳そらみみに鳴る拍子木ひやうしぎやキスのおと
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
まはりの拍子木ひやうしぎの音
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
太棹ふとざをと、するど拍子木ひやうしぎ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みな其処そこに寄り集まつておとほりの時刻じこくつてりますので、うちもくずしが出たり種々しゆ/″\御馳走ごちそうますうちにチヨン/\と拍子木ひやうしぎを打つてまゐりました。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
裏町うらまち表通おもてどほり、いましむる拍子木ひやうしぎおとも、いしむやうにきしんで、寂然しんとした、臺所だいどころで、がさりと陰氣いんきひゞく。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
再び軽い拍子木ひやうしぎおと合図あひづに、黒衣くろごの男が右手のすみに立てた書割かきわりの一部を引取ひきとるとかみしもを着た浄瑠璃語じやうるりかたり三人、三味線弾しやみせんひき二人ふたりが、窮屈きうくつさうにせまい台の上にならんで
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
嚠喨りうりやうたる拍子木ひやうしぎの音
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
拍子木ひやうしぎをうつはねまく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
拍子木ひやうしぎがチヨン/\とふたツ鳴つた。幕開まくあきうた三味線しやみせんきこえ引かれたまく次第しだいこまかく早める拍子木ひやうしぎりつにつれて片寄かたよせられてく。大向おほむかうから早くも役者の名をよぶけ声。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)