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悵然
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ちょうぜん
ふりがな文庫
“
悵然
(
ちょうぜん
)” の例文
いま曹操から、その髯のことを訊かれると、関羽は、胸をおおうばかり垂れているその
漆黒
(
しっこく
)
を握って
悵然
(
ちょうぜん
)
と、うそぶくように答えた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渠は
茫々
(
ぼうぼう
)
たる天を仰ぎて、しばらく
悵然
(
ちょうぜん
)
たりき。その
面上
(
おもて
)
にはいうべからざる悲憤の色を見たり。白糸は情に
勝
(
た
)
えざる
声音
(
こわね
)
にて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし、若い経営主が、こういうにつれ、他の若い男たちも
悵然
(
ちょうぜん
)
とした様子をみて、娘は心から同情する気持ちを顔に現した。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
安井息軒
(
やすいそっけん
)
の『北潜日抄』明治戊辰六月二十九日の記に「保岡元吉衝心ヲ以テ没去ス。年来ノ旧識
凋零
(
ちょうれい
)
殆ド尽ク。
悵然
(
ちょうぜん
)
タルモノコレヲ
久
(
ひさし
)
ウス。」
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
前月、書物を収めてある石橋が火を発して、その
木簡
(
もっかん
)
を焼いてしまった。かれは書物を石の下に置いたのである。かれは
悵然
(
ちょうぜん
)
としてまた言った。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
これが文三の近来最も傷心な事、半夜夢覚めて
燈
(
ともしび
)
冷
(
ひやや
)
かなる時、
想
(
おも
)
うてこの事に到れば、
毎
(
つね
)
に
悵然
(
ちょうぜん
)
として
太息
(
たいそく
)
せられる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
五月五日一同はいかだの上に集まった、ゴルドンは
悵然
(
ちょうぜん
)
として、もはや
残骸
(
ざんがい
)
のみのサクラ号をかえりみていった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
涙ぐんで「ハイ」と
幽
(
かすか
)
に答えしが
忽
(
たちま
)
ち思い直して顔を揚げ「アハハ、牛は牛連れと言ってちょうど
好
(
よ
)
く似合いましょう」と無理に笑いて
悵然
(
ちょうぜん
)
と
溜息
(
ためいき
)
を
吐
(
つ
)
く。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
悵然
(
ちょうぜん
)
と腕をこまねいていたが、突如、畳を蹴って躍りたつと、手にはもう
明皓々
(
めいこうこう
)
たる武蔵太郎の鞘を走らせて。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ここは
峡中
(
こうちゅう
)
の平原、遠く白根の山の雪を
冠
(
かぶ
)
って雪に
揺曳
(
ようえい
)
するところ。亭々たる松の木の下に立って杖をとどめて、
悵然
(
ちょうぜん
)
として行く末とこし方をながめて立ち
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
世間はわが福音に背を向け、わが願わざる方向へと
驀進
(
ばくしん
)
する。我は
悵然
(
ちょうぜん
)
として
己
(
おの
)
が孤影を顧みるのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
自分は
悵然
(
ちょうぜん
)
として産土の前に立ちどまった。そうして思いにたえられなくなって
社
(
やしろ
)
の中へはいった。中でしばらくたばこでも吸って休んで行こうと思ったのである。
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
もし私が彼の知っている通り昔の人を知るならば、そんな攻撃はしないだろうといって
悵然
(
ちょうぜん
)
としていました。Kの口にした昔の人とは、無論英雄でもなければ豪傑でもないのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
Kと一緒に暫らく灰燼の中を左視右顧しつゝ
悵然
(
ちょうぜん
)
として焼跡を去りかねていた。
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
弟はそこでそれに
応
(
こた
)
えようとしたところで、成が
闊
(
ひろ
)
い袖をあげたが、そのまま二人の姿は見えなくなった。弟は
悵然
(
ちょうぜん
)
としてそこに立ちつくしていたが、しかたなしに泣きながら家へ返った。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「死んではもう万事休す」だと云われた時、自分も旧友を
懐
(
おも
)
うて
悵然
(
ちょうぜん
)
たらざるを得なかった。丁度夕方頃で、太平洋沿岸の一室、落莫たる大海原に対して
憮然
(
ぶぜん
)
久之の光景、誠に気の毒であった。
釈宗演師を語る
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
冬になって骨あらわに瘠せて見えると「あらお山が寒そうな」という。雪げに見えなくなると、お光は
終日
(
ひねもす
)
悵然
(
ちょうぜん
)
として居る。年とる程
親
(
したし
)
みが深うなって、見れば見る程山はいよいよいきて見える。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
駕籠
(
かご
)
を一
町
(
ちょう
)
ばかり
隔
(
へだ
)
てて、あたかも
葬式
(
そうしき
)
でも
送
(
おく
)
るように
悵然
(
ちょうぜん
)
と
首
(
くび
)
を
垂
(
た
)
れたまま、一
足毎
(
あしごと
)
に
重
(
おも
)
い
歩
(
あゆ
)
みを
続
(
つづ
)
けていたのは、
市村座
(
いちむらざ
)
の
座元
(
ざもと
)
羽左衛門
(
うざえもん
)
をはじめ、
坂東
(
ばんどう
)
彦
(
ひこ
)
三
郎
(
ろう
)
、
尾上
(
おのえ
)
菊
(
きく
)
五
郎
(
ろう
)
、
嵐
(
あらし
)
三五
郎
(
ろう
)
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
青年は
悵然
(
ちょうぜん
)
としてそう云った。心の中の同情が、言葉の端々に
溢
(
あふ
)
れていた。そう云われると、美奈子も、自分の寂しい孤独の身の上が顧みられて、涙ぐましくなる心持を、抑えることが出来なかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と
悵然
(
ちょうぜん
)
として
嘆
(
たん
)
じた。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
宋江は、
悵然
(
ちょうぜん
)
と泣いた。
戴宗
(
たいそう
)
もうれし涙にぬれる。万感のこと、来し方から今後のこと、到底、とっさには語りきれもしない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悵然
(
ちょうぜん
)
として戸に
倚
(
よ
)
りて
遥
(
はるか
)
に
此方
(
こなた
)
を見送りたまいし。あわれの
俤
(
おもかげ
)
眼前
(
めさき
)
を去らず、
八年
(
やとせ
)
永き月日の間、
誰
(
た
)
がこの
思
(
おもい
)
はさせたるぞ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたくしは、この答えが殆ど逸作の若いときのそれと同じものであることに思い当り、うたた
悵然
(
ちょうぜん
)
とするだけであった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして
悵然
(
ちょうぜん
)
として江戸
徃昔
(
おうせき
)
の文化を追慕し、また併せてわが青春の当時を回想するのである。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
柄にもなくこんな句を思い出していささか
悵然
(
ちょうぜん
)
としながら、あの乞食先生はどうしたろう? さぞ今ごろは泡をくらってこの与吉を探しているに違えねえ、ざまア見ろ! と心中に
快哉
(
かいさい
)
を叫んだ時
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
余は浩さんの事を思い出して
悵然
(
ちょうぜん
)
と
草履
(
ぞうり
)
と靴の影を見送った。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は掃除する方角もなく、之に対して暫く
悵然
(
ちょうぜん
)
としていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
母は、こう言って
悵然
(
ちょうぜん
)
としたが、また
直
(
す
)
ぐ言葉を続けた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
彼は
悵然
(
ちょうぜん
)
として宋を送って別れた。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
元春は
面
(
おもて
)
をそむけた。
悵然
(
ちょうぜん
)
と中国の夜空を仰いで、落涙しかける
瞼
(
まぶた
)
を抑えた。一毛利家の家憲の下に在らざるを得ない
遣
(
や
)
り
場
(
ば
)
なき武魂は声なく
哭
(
な
)
いていた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と一口がぶりと
遣
(
や
)
って、
悵然
(
ちょうぜん
)
として
仰反
(
のけぞ
)
るばかりに星を仰ぎ、
頭髪
(
かみ
)
を、ふらりと
掉
(
ふ
)
って、ぶらぶらと
地
(
つち
)
へ吐き、立直ると胸を張って、これも
白衣
(
びゃくえ
)
の
上衣兜
(
うわかくし
)
から、
綺麗
(
きれい
)
な
手巾
(
ハンケチ
)
を出して
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
南足立郡沼田村にある六阿弥陀第二番の
恵明寺
(
えみょうじ
)
に至ろうとする途中、
休茶屋
(
やすみぢゃや
)
の老婆が来年は春になっても荒川の桜はもう見られませんよと言って、
悵然
(
ちょうぜん
)
として人に語っているのを聞いた。
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そう言うと
流石
(
さすが
)
に彼女も
悵然
(
ちょうぜん
)
としたらしい様子のまゝしばらく黙った。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と左膳、焼け跡に立って、
悵然
(
ちょうぜん
)
と腰なる大刀の柄をたたいた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
閉じ籠ったまま、彼は独り
悵然
(
ちょうぜん
)
と壁に対していた。すると一名の
老侍郎
(
ろうじろう
)
が畏る畏るそれへ来ていうには
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
赤羽橋
(
あかばねばし
)
の絶句に「
南郭
(
なんかく
)
翁ヲ
懐
(
おも
)
フアリ
悵然
(
ちょうぜん
)
トシテ
咏
(
えい
)
ヲ成ス。」と題して「流水山前寒碧長。遺居何在草荒涼。一橋風月無人詠。漁唱商歌占夜涼。」〔流水山前寒碧長シ/遺居
何
(
いずこ
)
ニ在リヤ草荒涼タリ/一橋ノ風月人ノ詠ム無ク/漁唱商歌夜涼ヲ占ム〕
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「自害したか——」と、将門は
悵然
(
ちょうぜん
)
と歎声の尾を曳きながら
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さすがに、
悵然
(
ちょうぜん
)
と、悲壮ないろを眉にたたえて
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人々は、
悵然
(
ちょうぜん
)
として、いつまでも、見送った。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悵
漢検1級
部首:⼼
11画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“悵”で始まる語句
悵恨
悵
悵嘆
悵快
悵望