“忌憚:きたん” の例文
“忌憚:きたん”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治27
宮本百合子4
ロマン・ロラン3
中里介山3
新渡戸稲造2
“忌憚:きたん”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語9.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.3%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行0.5%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
われ等が、果して正しき霊界の使徒であるや否やは、われ等の試むる言説の内容をもって、忌憚きたんなく批判して貰いたい。
長秀は巧みにそこをいてから、秀吉の提議が正しくもあり、穏当でもあるという、自己の賛意を忌憚きたんなく述べ終った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍法裁判である。王平としては身の大事でもあったから、馬謖をかばっていられなかった。なお忌憚きたんなく述べ立てた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それ故論壇では紅葉の態度や硯友社の作風にあきたらないで忌憚きたんのない批評をしても、私交上には何の隔心も持たなかった。
「誰でもよい。今日は忌憚きたんなく意見を吐け。それがこの徐州城の危急を救う策ならば、何なりとおれはこう」と、いった。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてそれが労働者についてのみ云はるゝときに限つて何故所謂いわゆるその筋の忌憚きたんにふれるのか怪しまないではゐられない。
「おたがい遠慮はよそう。忌憚きたんのないところが聞きたい。義貞もいう。そして最善の作戦をらねばならん」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女の本心を忌憚きたんなく云えば、本庄俊なる僕を全部独占し、僕の行いを一から十まで知りつくそうとするにある。
魔性の女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
誰も、佐伯でさへも舎監の眼をおもんばかつて忌憚きたん気振けぶりを見せ、慰めの言葉一つかけてくれないのが口惜くやしかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
そしてむしろそれが打解けた談笑の種にもなって、自分も忌憚きたんのない話を持出し、人々も興がって時を移した。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一体お前がたの間には、どういう不満があるのか、何が不足なのか、どうしてくれと望むのか、それを忌憚きたんなく
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし曹操の心は、龐統の口から自己の布陣について、忌憚きたんなき批評を聞こうというところにあったらしい。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊賀は、国境の危ないことを、近頃、敵の手に築きあげられた洲股の城を実証として、忌憚きたんなく述べたてた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大藩であれ、親藩であれ、斬ろうとするものを斬ることに於て、なんらの忌憚きたんを持っていなかったのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
コンブフェールは穏やかにそれに賛成していたが、クールフェーラックは忌憚きたんなく攻撃の矢を放っていた。
「天守閣の様式にも、いろいろあろうな。そちは若年の頃、諸州をあるいて、築城にも詳しいと聞いておる。忌憚きたんなくそちの構想を聞かせい」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かうした石川の半面を私が忌憚きたんなく発表することは、石川の人と作品を傷つける如く思ふ人があるかも知れないが私は決してさうとは思はない。
石川啄木と小奴 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
「臣を観ること君にかず——というに、この曹操が麾下に対してさる眼ちがいでは大事を誤ろう。学人、忌憚きたんなく、汝の評をいってみよ」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「否々、運命のせいにしてはいけない。よくかえりみ給え。わしをして忌憚きたんなくいわしめるなら、将軍の左右に、良い人がいないためだと思う」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜。玄徳は、孔明以下腹心の諸将をあつめて、呉妹をめとることの可否、また呉へ行くことの善悪などについて忌憚きたんなき意見を求めた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、主人の眉をまた見つめていたが、元祐もむしろそれに同意らしくうかがわれたので、次のことばにはもう忌憚きたんなく自分の意思を述べた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はだれでも耳を傾ける人には、フランスの芸術家らに関する忌憚きたんなき批評を元気に言ってきかした。
「いま蛮国を討治するに当って、ひとつ君の高見を訊きたいものだ。忌憚きたんのないところをいってくれ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうであろ? 勝入と武蔵守の望み出た作戦は。……忌憚きたんなく、みなの意見も、ききたいのだ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「片っ端から作者部屋へほうり込む」などと言ったのは、無礼でもない、乱暴でもない、彼の熱望を忌憚きたんなく正直に吐露したに過ぎないのであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鍾繇しょうようは、魏の大老である。野に隠れたる大人物とは、いったい誰をさしていうのか。叡帝えいてい忌憚きたんなくそれをげよといった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忌憚きたんなく申しますれば、手の者の将士ことごとく、おいいつけに対し、懐疑かいぎしておりまする。かくいう鹿之介も、そのひとりにございますが」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、忌憚きたんのないところを申しあげるがの。将軍職のお望みは、まず御断念がよいとおもう」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だから今、君たちに、そっと意中を訊いてみたわけさ。忌憚きたんないところをいってくれ給え」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で僕に忌憚きたんなく云わせると、大尉どのの結論は、本心の暴露ばくろではなく、何かこう為めにせんとするところの仮面結論かめんけつろんだと思うのだ。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
伯夷量何ぞせまきというに至っては、古賢の言にると雖も、せいせいなる者に対して、忌憚きたん無きもまたはなはだしというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いけませんとも、そんなお身軽では……」と、登子も、それには自分の意見を忌憚きたんなく。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『武道伝来記』に列挙された仇討物語のどれを見ても、マテリアリストの眼から見た武士気質かたぎの不合理と矛盾の忌憚きたんなき描写と見られないものはない。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
曹操は名乗って、彼の忌憚きたんない「曹操評」を聞かしてもらおうと思ったが、子将は、冷たい眼で一べんしたのみで、いやしんでろくに答えてくれない。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——後鳥羽上皇の流されたことについて、親鸞がふれられていることをみて、私はその忌憚きたんのない言葉の端に、こんなに強い人かとびっくりしたことがあります。
親鸞聖人について (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忌憚きたんなく申せば、芸術品として「霊魂の赤ん坊」に及ぶものではございますまい。
野上弥生子様へ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
男子社会の不品行にして忌憚きたんするなきその有様は、火のまさに燃ゆるが如し。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其許そこもとにちとご相談があるが、忌憚きたんない意見を聞かしてもらえるかの」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「智略なりともめ、無謀なりともいい、どっちなのだ勝家。忌憚きたんなくいえ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一視同仁の態度で、忌憚きたんなく容赦なく押して行くべきはずのものであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「急転直下、事態は険悪を極め、一刻の遷延せんえんもゆるさないところまで来てしまった。都督、卿の思うところは如何に。——忌憚きたんなく腹中を述べてもらいたいが」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大胆に忌憚きたんなく筆を着けなくっては、真に対して面目のない事になります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこで、傑作「たけくらべ」は別として、全集中で、あんまり源氏や、その他の古歌によりすぎている作は、一葉の小説としては未熟の方に属すと、忌憚きたんなくいえばいえる。
——口幅くちはばたい申し方ですが、てまえから忌憚きたんなくいわせていただくなら、その煩悩こそ、殿のよいところと、人間の至情、何をか、臣下へ御遠慮がありましょう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
防戦上の誤算というよりは、人間としての未熟さを忌憚きたんなく出している。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は劇的な本能から、一定の熱情を忌憚きたんなく描いた旋律を好んだ。
作の上のことでも、生活の上のことでも、忌憚きたんなく物を言い合った。
芝、麻布 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
わたくしは忌憚きたんなき文字二三百言をけづつて此に写し出した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と、いまは心臆した若き新郎が、ひそかに忌憚きたんなき言葉をはいた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
その「異っている」所の立派な道徳に依って世界を指導する絶好の機会は、この度の極度に非人道的な講和条件を日本道徳の見地から忌憚きたんなく厳正に批判する事ではないでしょうか。
非人道的な講和条件 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
僕は従来地方に行き、よく教師の悪口を忌憚きたんなくいた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
玄徳は、やがてこの仙翁を前に、忌憚きたんなく述懐して質問した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのあとから、花山院師賢、千種忠顕らが、帝に代って、かわるがわる訊ねた。要は「関東を打ち破るてだてはどうか。忌憚きたんなくその謀計はかりごとを述べてみよ」と、いうのであった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「所が、忌憚きたんなく云へば、その時それを見て、僕は骨董品の埃を何云ふとなく聯想した。」得能は再び私の方を振り向いて云つた。その潮燒けのした淺黒い顏に、皮肉な微笑がただよつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そしてクリストフの露骨な忌憚きたんなき意見を面白がった。
「わたくしごときが、丞相を批評しては、罪死に値しますが、忌憚きたんなく申しあげれば、袁紹の人物と丞相とを比較してみますと、わが君には十勝の特長があり、袁紹には十敗の欠点があります」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医師が余を昏睡こんすいの状態にあるものと思い誤って、忌憚きたんなき話を続けているうちに、未練みれんな余は、瞑目めいもく不動の姿勢にありながら、なかば無気味な夢に襲われていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本間氏も久美子さんたちも、職業に対する見解に忌憚きたんなく云えば生ぬるいところを持ちつつも、職業の選択については、社会的な或る正義感を抱いておられることは意味ふかいことであると思った。
彼がその同胞なる米国人を警戒するに親切であることは、彼の従来の著書に現われているが、かくも露骨に、しかも外国人にあてて自国人の欠点を忌憚きたんなく述べた彼の勇気は実に敬服の至りである。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それを、人前で——しかもこうした場所で——忌憚きたんなく女の口からあばかれたのでは、小次郎も、の悪いことはもちろんだし、むかむかと腹も立って、女の顔をじっとめすえていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その座上も、かなり和やかで、主客の間に、ずいぶん忌憚きたんのない時代評も行われましたが、大局の帰するところは同じようなもので、どのみち、徳川家の末路の傾いて来たのは、時の勢いでぜひがない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
忌憚きたんなく言えば、彼こそ憎むべき蛸である。
風博士 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その誠が通ったか、あくる朝、江田善兵衛や村井河内守などが遊びに来て、何かと、忌憚きたんのない話をして帰ったが、午近ひるちかい頃、あらためて、政職の使いとして、益田孫右衛門が彼を迎えに来た。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の意見を忌憚きたんなく述べてまいったのだ
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「兵部は、どう存ずるか。忌憚きたんなくいえ」
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忌憚きたんなくお聞かせを仰ぎとうぞんじまする
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みなの、忌憚きたんのない、意見をききたい」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸王と帝との間、帝はいまだ位にかざりしより諸王を忌憚きたんし、諸王は其の未だ位に即かざるに当って儲君ちょくんを侮り、叔父しゅくふの尊をさしばんで不遜ふそんの事多かりしなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「これは近頃の好題目、口に出して言うては皆々遠慮がある故に、入札いれふだとしてみたらいかがでござるな、各自の見るところを少しの忌憚きたんなく紙へ書いて、名前を記さずにこれへ集めてみようではござらぬか」
その政治屋連中は、幸福という幼稚粗雑な夢を、なお忌憚きたんなく言えば、権力の手に帰した科学が得さしてくれると彼らが自称してる、一般の快楽という幼稚粗雑な夢を、飢えたる顧客らの眼に見せつけてるのであった。
坐中の貴婦人方には礼を失する罪をまぬかれざれども、予をして忌憚きたんなくわしめば、元来、淑徳、貞操、温良、憐愛、仁恕じんじょ等あらゆる真善美の文字を以て彩色さいしきすべき女性と謂うなる曲線が
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しこうしてその黙するや、これをいうを忘れたるに非ず、時あっていうときは、その言もまた適切にして、忌憚きたんするところなきがゆえに、時としては俗耳を驚かすことなきに非ざれども、これはただ聴者不学の罪のみ。
経世の学、また講究すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし余をして忌憚きたんなく言わしめば居士の俳句の方面に於ける指導は実に汪洋おうようたる海のような広濶こうかつな感じのするものであったが写生文の方面に於ける指導はまだ種々の点に於て到らぬ所が多かったようである。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
新聞に連載しているその小説を見れば、今まで世にありふれた講談や伝奇を現代の口語に書替えたまでの事で、忌憚きたんなく言えば少し読書好きの女の目にさえ、これではほとんど読むには堪えまいと思われるくらいのものである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「不肖私は、この際支部長の責を諸君と共にになっております以上は、あくまで闘争の第一線にたおれる決意をもつ者であることを声明します。ついては、即刻闘争の具体的方法について忌憚きたんない大衆的討論にうつりたいと思います」
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「今日、但馬どのから、お求めをうけたのは、こちらの御子息や御門下の太刀を一覧の上、忌憚きたんなき御評などもうかがいたいとの御意ぎょいであった。さほどのことなれば、一人一人に、辞儀申すよりは、一度に拝見いたしたほうがよいと思う」と
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてわたくしは撰者不詳の墓誌の残欠に、京水がそしってあるのを見ては、忌憚きたんなきの甚だしきだと感じ、晋が養父の賞美の語をして、一の抑損の句をもけぬのを見ては、簡傲かんごうもまた甚だしいと感ずることを禁じ得ない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「——が、筑前どの。北ノ庄殿にたいして、云い条なり御不満があらるるなら、忌憚きたんなく申されたに越すことはあるまい。それを包んでの和議では永続きせぬおそれもある。どうせのこと、利家、いかようとも、お取次や解決の労は惜しまぬが……」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この戦争が将来いかに成りゆき、いずれが勝つか、いずれが負けるか、はたまたいずれも勝負なしに円満なる平和へいわをもって解決さるるか、それは未来の事とし、吾人ごじんの目下の務めは、男子は男子だけの性質を忌憚きたんなく発揮することにある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
忌憚きたんなく、思うがままを、申しのべよ。戦にかけては、われらが手馴てだれだが、うなばらでの“風見”“波見”はそのほうたちのほうが、多年の経験、われらよりは、はるかにすぐれた先達せんだつのはずだ。……どう観るな、きょうの風雨を」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ小生はコンドル、即ちウルスター・ゴンクールが、ウオル街の資本家代表グランド・シュワルト(旧タマニー・ホールの残党?)氏より巨額の資金を受取りまして、この手段の実行方法に就き小生の忌憚きたんなき意見を求めて来た事実を知っているのみであります。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
このゆえに自分はひとり天主閣にとどまらず松江の市内に散在する多くの神社と梵刹ぼんさつとを愛するとともに(ことに月照寺における松平家の廟所びょうしょと天倫寺の禅院とは最も自分の興味をひいたものであった)新たな建築物の増加をもけっして忌憚きたんしようとは思っていない。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と申すと、女は大変に暗黒面の多い者、御座おざめる事の多い者であって、それを忌憚きたんなく女自身が書いたら風俗を乱すなどと想う人もありましょうが、女とても人ですもの、男と格別変って劣った点のある者でなく、あるいは美しい点は男より多く、醜い点は男より少いかも知れません。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
それはわかっている、なにも貴様の口占くちうらを引いて、罪に落そうなんぞというのじゃない、ただ、そういう唄を聞いていると、最も正直な時代の声が聞えるというわけだ、おべっかや、おてんたらと違って、言わんとするところを忌憚きたんなく正直に言っているから、それで時代の風向きもわかるし
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのために、かえって、ここの共産党は社会民主主義者と自分たちの区別をはっきりしないし、右翼的になったりウルトラじみたりして、去年のフランス問題では『リュマニテ』も批判をうけたでしょう。僕に忌憚きたんなく云わせれば、吉見君の云った中国革命の進行についての見かただってもね、中共の側にだけたって支持することは、むしろ、我々のようなものにはやさしいと思う。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
noblesse(気高さ)なんかくそくらえだ! なあそうじゃないか、フォン・ゾン? 院長様へ申し上げます、わたくしは道化者で、道化じみたまねばかりいたしますが、それでも名誉を重んずる騎士でございますから、忌憚きたんなく所信を申し上げたいと存じます。さよう、わたくしは名誉を重んずる騎士でございます。ところが、ミウーソフさんの肚の中には、傷つけられた自尊心のほか、なんにもありゃしません。
然る上は、忌憚きたんなくお伺い仕りますが、犀、千曲の二川を踏み跨いで、かくも深々と、御陣取の態は、さすがに御武勇、独自の胆略と信玄公にも眼をみはられて、武門に生れ、好い敵を持った倖せと申しおられますが、そも、あなた様におかれましては、これより海津の城をお攻め取あらんとする思召しですか、それともまた、このまま、信玄公と平場押しに御一戦のおこころなりや、お伺い申して参れとの、主人からの命にござりまする。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)