トップ
>
忌憚
>
きたん
ふりがな文庫
“
忌憚
(
きたん
)” の例文
で僕に
忌憚
(
きたん
)
なく云わせると、大尉どのの結論は、本心の
暴露
(
ばくろ
)
ではなく、何かこう為めにせんとするところの
仮面結論
(
かめんけつろん
)
だと思うのだ。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
男子社会の不品行にして
忌憚
(
きたん
)
するなきその有様は、火の
方
(
まさ
)
に燃ゆるが如し。徳教の急務は百事を
抛
(
なげう
)
ち先ずこの火を消すにあるのみ。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
と、主人の眉をまた見つめていたが、元祐もむしろそれに同意らしく
窺
(
うかが
)
われたので、次のことばにはもう
忌憚
(
きたん
)
なく自分の意思を述べた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はだれでも耳を傾ける人には、フランスの芸術家らに関する
忌憚
(
きたん
)
なき批評を元気に言ってきかした。かくて多くの恨みを買った。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
しかし、この作品が一世を
震駭
(
しんがい
)
させた原因のおもなるものは、トルストイがその中で説いた露骨にして
忌憚
(
きたん
)
なき性欲観である。
クロイツェル・ソナタ:02 解題
(新字新仮名)
/
米川正夫
(著)
▼ もっと見る
一視同仁の態度で、
忌憚
(
きたん
)
なく容赦なく押して行くべきはずのものであります。ブルンチェルがバルザックを論じたうちにこんな句があります。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
伯夷量何ぞ
隘
(
せま
)
きというに至っては、古賢の言に
拠
(
よ
)
ると雖も、
聖
(
せい
)
の
清
(
せい
)
なる者に対して、
忌憚
(
きたん
)
無きも
亦
(
また
)
甚
(
はなはだ
)
しというべし。
其
(
そ
)
の
擬古
(
ぎこ
)
の詩の一に曰く
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
かうした石川の半面を私が
忌憚
(
きたん
)
なく発表することは、石川の人と作品を傷つける如く思ふ人があるかも知れないが私は決してさうとは思はない。
石川啄木と小奴
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
そしてそれが労働者についてのみ云はるゝときに限つて何故
所謂
(
いわゆる
)
その筋の
忌憚
(
きたん
)
にふれるのか怪しまないではゐられない。
編輯室より:(一九一四年一一月号)
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
「片っ端から作者部屋へ
抛
(
ほう
)
り込む」などと言ったのは、無礼でもない、乱暴でもない、彼の熱望を
忌憚
(
きたん
)
なく正直に吐露したに過ぎないのであった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それ故論壇では紅葉の態度や硯友社の作風に
慊
(
あきた
)
らないで
忌憚
(
きたん
)
のない批評をしても、私交上には何の隔心も持たなかった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「さァ、みなさんで
忌憚
(
きたん
)
なく、批評して下さい、そして悪いとこはドンドンなくして、みんな
妾
(
あたし
)
たち局のものにピッタリするようにつくりましょう」
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
われ等が、果して正しき霊界の使徒であるや否やは、われ等の試むる言説の内容を
以
(
もっ
)
て、
忌憚
(
きたん
)
なく批判して貰いたい。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
『武道伝来記』に列挙された仇討物語のどれを見ても、マテリアリストの眼から見た武士
気質
(
かたぎ
)
の不合理と矛盾の
忌憚
(
きたん
)
なき描写と見られないものはない。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかし
信夫恕軒
(
しのぶじょけん
)
のつくった伝を見るに「先生勝海舟ヲ訪ヒ大ニ時事ヲ論ズ
慷慨
(
こうがい
)
激昂
(
げっこう
)
忌憚
(
きたん
)
スル所ナシ。」としてある。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女の本心を
忌憚
(
きたん
)
なく云えば、本庄俊なる僕を全部独占し、僕の行いを一から十まで知りつくそうとするにある。近頃ではただ知るだけでは満足出来ない。
魔性の女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
誰も、佐伯でさへも舎監の眼を
慮
(
おもんばか
)
つて
忌憚
(
きたん
)
の
気振
(
けぶ
)
りを見せ、慰めの言葉一つかけてくれないのが
口惜
(
くや
)
しかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
これは近頃の好題目、口に出して言うては皆々遠慮がある故に、
入札
(
いれふだ
)
としてみたらいかがでござるな、各自の見るところを少しの
忌憚
(
きたん
)
なく紙へ書いて、名前を
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
忌憚
(
きたん
)
なくいうが、そんな事をしていて、どうして立派な献身的な医者になれるか、僕にはすこぶる疑問だよ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
僕は従来地方に行き、よく教師の悪口を
忌憚
(
きたん
)
なく
吐
(
は
)
いた。また教師の中には悪口に
値
(
あたい
)
するものも
数多
(
あまた
)
ある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
作の上のことでも、生活の上のことでも、
忌憚
(
きたん
)
なく物を言い合った。もうああいう空気は現代にはない。
芝、麻布
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
この手段の実行方法に就き小生の
忌憚
(
きたん
)
なき意見を求めて来た事実を知っているのみであります。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこで、傑作「たけくらべ」は別として、全集中で、あんまり源氏や、その他の古歌によりすぎている作は、一葉の小説としては未熟の方に属すと、
忌憚
(
きたん
)
なくいえばいえる。
紫式部:――忙しき目覚めに
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
コンブフェールは穏やかにそれに賛成していたが、クールフェーラックは
忌憚
(
きたん
)
なく攻撃の矢を放っていた。テーブルの上には折悪しく有名なトゥーケ法の一部が置いてあった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
御座
(
おざ
)
の
醜
(
さ
)
める事の多い者であって、それを
忌憚
(
きたん
)
なく女自身が書いたら風俗を乱すなどと想う人もありましょうが、女とても人ですもの、男と格別変って劣った点のある者でなく
産屋物語
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
僕に
忌憚
(
きたん
)
なく云わせれば、吉見君の云った中国革命の進行についての見かただってもね、中共の側にだけたって支持することは、むしろ、我々のようなものにはやさしいと思う。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
京水が
刺
(
そし
)
ってあるのを見ては、
忌憚
(
きたん
)
なきの甚だしきだと感じ、晋が養父の賞美の語を
記
(
き
)
して、一の抑損の句をも
著
(
つ
)
けぬのを見ては、
簡傲
(
かんごう
)
もまた甚だしいと感ずることを禁じ得ない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
昭和十八年、ついに彼の最後の文章となった「戦時宰相論」が、東条の
忌憚
(
きたん
)
にふれ、十月二十一日、先ず警視庁留置場に検束され、同じ月の二十五日、九段の東京憲兵隊に送致された。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
「所が、
忌憚
(
きたん
)
なく云へば、その時それを見て、僕は骨董品の埃を何云ふとなく聯想した。」得能は再び私の方を振り向いて云つた。その潮燒けのした淺黒い顏に、皮肉な微笑が
漂
(
ただよ
)
つた。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
坐中の貴婦人方には礼を失する罪を
免
(
まぬか
)
れざれども、予をして
忌憚
(
きたん
)
なく
謂
(
い
)
わしめば、元来、淑徳、貞操、温良、憐愛、
仁恕
(
じんじょ
)
等あらゆる真善美の文字を以て
彩色
(
さいしき
)
すべき女性と謂うなる曲線が
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
光代がそんな風なので、自然貞之助も、いろいろなことを
忌憚
(
きたん
)
なく尋ねた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
即ち諸君は、
猥褻
(
わいせつ
)
名状すべからざる無毛赤色の突起体に深く心魄を打たるるであろう。異様なる臭気は諸氏の余生に消えざる歎きを与えるに相違ない。
忌憚
(
きたん
)
なく言えば、彼こそ憎むべき蛸である。
風博士
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
して
忌憚
(
きたん
)
なく言わしめば居士の俳句の方面に於ける指導は実に
汪洋
(
おうよう
)
たる海のような
広濶
(
こうかつ
)
な感じのするものであったが写生文の方面に於ける指導はまだ種々の点に於て到らぬ所が多かったようである。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
新たな建築物の増加をもけっして
忌憚
(
きたん
)
しようとは思っていない。
松江印象記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と女房同志は
忌憚
(
きたん
)
なく見積りを交換している。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
忌憚
(
きたん
)
なく、そちの意見を聞かして欲しい。……実は、それもあって立ち寄ったのじゃ。半兵衛、おぬしはこのことについてどう思う
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は劇的な本能から、一定の熱情を
忌憚
(
きたん
)
なく描いた旋律を好んだ。彼が最も重んじていたのも、やはりそういう旋律だった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
医師が余を
昏睡
(
こんすい
)
の状態にあるものと思い誤って、
忌憚
(
きたん
)
なき話を続けているうちに、
未練
(
みれん
)
な余は、
瞑目
(
めいもく
)
不動の姿勢にありながら、
半
(
なかば
)
無気味な夢に襲われていた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
忌憚
(
きたん
)
なく言えば少し読書好きの女の目にさえ、これでは
殆
(
ほとんど
)
読むには堪えまいと思われるくらいのものである。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ずいぶん
忌憚
(
きたん
)
のない時代評も行われましたが、大局の帰するところは同じようなもので、どのみち、徳川家の末路の傾いて来たのは、時の勢いでぜひがない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
諸王と帝との間、帝は
其
(
そ
)
の
未
(
いま
)
だ位に
即
(
つ
)
かざりしより諸王を
忌憚
(
きたん
)
し、諸王は其の未だ位に即かざるに当って
儲君
(
ちょくん
)
を侮り、
叔父
(
しゅくふ
)
の尊を
挟
(
さしば
)
んで
不遜
(
ふそん
)
の事多かりしなり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
はたまたいずれも勝負なしに円満なる
平和
(
へいわ
)
をもって解決さるるか、それは未来の事とし、
吾人
(
ごじん
)
の目下の務めは、男子は男子だけの性質を
忌憚
(
きたん
)
なく発揮することにある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
而
(
しこう
)
してその黙するや、これをいうを忘れたるに非ず、時あっていうときは、その言も
亦
(
また
)
適切にして、
忌憚
(
きたん
)
するところなきがゆえに、時としては俗耳を驚かすことなきに非ざれども
経世の学、また講究すべし
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その「異っている」所の立派な道徳に依って世界を指導する絶好の機会は、この度の極度に非人道的な講和条件を日本道徳の見地から
忌憚
(
きたん
)
なく厳正に批判する事ではないでしょうか。
非人道的な講和条件
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
忌憚
(
きたん
)
なく申せば、芸術品として「霊魂の赤ん坊」に及ぶものではございますまい。
野上弥生子様へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
わたくしは
忌憚
(
きたん
)
なき文字二三百言を
刪
(
けづ
)
つて此に写し出した。しかし其
体裁
(
ていさい
)
措辞
(
そじ
)
は大概
窺知
(
きち
)
せられるであらう。丁卯は慶応三年である。大意は「人君何天職」の五古を
敷衍
(
ふえん
)
したものである。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と、いまは心臆した若き新郎が、ひそかに
忌憚
(
きたん
)
なき言葉をはいた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
忌憚
(
きたん
)
なく所信を申し上げたいと存じます。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
と安藤先生は
忌憚
(
きたん
)
ない。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
玄徳は、孔明以下腹心の諸将をあつめて、呉妹を
娶
(
めと
)
ることの可否、また呉へ行くことの善悪などについて
忌憚
(
きたん
)
なき意見を求めた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忌
常用漢字
中学
部首:⼼
7画
憚
漢検1級
部首:⼼
15画
“忌”で始まる語句
忌
忌々
忌日
忌諱
忌避
忌味
忌嫌
忌々敷
忌中
忌籠