山越やまごし)” の例文
宇之さん、水のある処へ来ると茶があらア、向うにそまだか何だか居るようだぜ、申し少々お願い申しますがね、私共は日光から山越やまごし
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
は、毎電まいでん東京毎日とうきやうまいにち、やまと、日本にほん記者きしやともに、山越やまごしをして、駒岡貝塚こまをかかひづか末吉貝塚すゑよしかひづか遺跡ゐせきぎ、鶴見つるみ歸宅きたくした。
十二ばん岩間寺いはまでらす巡礼の者であらう、ねむいやうな御咏歌ごえいかふし山越やまごしに響いて、それもついきこえなくなつて了つた。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
この語には、「朝日かげにほへる山に照る月の飽かざる君を山越やまごしに置きて」(巻四・四九五)の例が参考となる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
私は行程を逆にして、まず沼津から修善寺しゅぜんじへ出て、それから山越やまごしに伊東の方へ下りようと云いました。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近江あふみくに山越やまごしに、づるまでには、なか河内かはち芽峠めたうげが、もつとちかきはまへに、春日野峠かすがのたうげひかへたれば、いたゞきくもまゆおほうて、みちのほど五あまり、武生たけふ宿しゆくいたころ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
新町河原しんまちがわらわきだまうちに渡邊様の子を殺して逃げたというんだが、大騒ぎよ、八州が八方へ手配りをしたが、山越やまごしをして甲府へへいったという噂で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山にも失望し、女にも失望した大観は、あくあさはやく宿をつて山越やまごしに、作州の方へ出た。そして四十四曲りの峠まで来ると、わざと峠へ立つて小便をした。
万屋 つまらない世辞を言いなさんな。——全くこの辺、人通りのないのはひどい。……先刻さっき山越やまごし立野たつのから出るお稚児を二人、大勢で守立もりたてて通ったきり、馬士うまかたも見掛けない。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山越やまごしかぜときじみちずいへなるいもをかけてしぬびつ 〔巻一・六〕 軍王
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「はい、山越やまごしでは難義だが、廻り路でも船なら……」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仁「そうサ、小平兄い失錯へま遣っちゃアいけねえぜ、なんしろ此処には長くは居られねえから、是から信州路へ掛るにゃア秩父へすぐ山越やまごしして逃げよう」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
名高い二十五菩薩来迎らいかう山越やまごしの阿弥陀などをけると、いづれも凡作揃ひでお談話はなしにもならぬが、美術の好きな者には盲目めくらが多く、盲目めくらには富豪かねもちが多いから
屋根も柱も蜘蛛くもの巣のように狼藉ろうぜきとして、これはまた境内けいだいへ足の入場いればもなく、がけへかけて倒れてな、でも建物があった跡じゃ、見霽みはらしの広場になっておりますから、これから山越やまごしをなさるかた
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旦暮あけくれ存じて居りましたが、此様こんな山の中においでとは存じませんが、沼田の方にいらっしゃるという事ですから、日光から山越やまごしをしてまいりましたも
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高野聖かうやひじりのことについて、あへべつちうしてをしへあたへはしなかつたが、翌朝よくてうたもとわかつて、雪中せつちう山越やまごしにかゝるのを、名残なごりしく見送みおくると、ちら/\とゆきるなかを次第しだいたか坂道さかみちのぼひじり姿すがた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)