山懷やまふところ)” の例文
新字:山懐
をんなだ。うしたい、」とひながら、袖崎そでさき尾上をのへまつあふいだ。山懷やまふところくらく、かみくろく、月影つきかげいろしろい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東の山續きの左の方の、山懷やまふところのやうになつたところに、先刻さつき汽車から見えてゐた東光院らしいものが現はれて來た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
我が處女作は明治四十四年三月相州湯河原の山懷やまふところの流に近き宿の古く汚れたる机の上に成りぬ。
五年目ごねんめには田地でんち取返とりかへし、はたけ以前いぜんよりえ、山懷やまふところ荒地あれち美事みごと桑園さうゑんへんじ、村内そんないでも屈指ゆびをり有富いうふう百姓ひやくしやうおはせたのです。しかもかれ勞働辛苦らうどうしんくはじめすこしかはらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かぎなりにまちまがつて、みづおとのやゝこえる、ながれはやはしすと、またみちれた。突當つきあたりがもうすぐ山懷やまふところる。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とゞ山懷やまふところに、おほひかさなる錦葉もみぢかげに、眞赤まつか龍膽りんだうが、ふさ/\と二三りんしもむらさきこらしてく。……
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……そらくぎつたみね姿すがたは、山懷やまふところくらつて、がけ樹立こだちくろなかに、をりから晃々きら/\ほしかゞやく。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つき世界せかいれば、に、はたに、山懷やまふところに、みねすそに、はるかすみく、それはくもまがふ、はたとほ筑摩川ちくまがはさしはさんだ、兩岸りやうがんに、すら/\と立昇たちのぼるそれけむりは、滿山まんざんつめたにじにしきうら
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天上てんじやうか、奈落ならくか、山懷やまふところ大釜おほがまのまゝに、すごいほど色白いろじろをんな行水ぎやうずゐする姿すがたた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、人里ひとざとはなれました山懷やまふところで、仙人せんにん立直たちなほつてまをしました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)