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対手
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あいて
ふりがな文庫
“
対手
(
あいて
)” の例文
旧字:
對手
そういうとき、彼女はかなりに慣れていたけれど、その目は悲しそうにむしろ
対手
(
あいて
)
を静かに慎しませるような表情をするのであった。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
英語書生
対手
(
あいて
)
の
啓蒙
(
けいもう
)
的な語学雑誌であったが、やはり当時の欧化熱が産出したもので、日本人の手に成った外国語雑誌の開山である。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
従って、
対手
(
あいて
)
を不機嫌にした、自分を知って、偶然にその人に雇われて賃銭を取る辛さは、蓑もあら蓑の、毛が針となって肉を刺す。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何しろ、
其奴
(
そいつ
)
の正体を見届けようと思って、講師は
先
(
ま
)
ず
燐寸
(
まっち
)
を
擦付
(
すりつ
)
けると、
対手
(
あいて
)
は
俄
(
にわか
)
に刃物を
投
(
ほう
)
り出して、両手で顔を隠して
了
(
しま
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
彼女は杖の
所有主
(
もちぬし
)
の中年の紳士を睨め付けたが、
対手
(
あいて
)
は一向知らん顔で
澄
(
すま
)
して居た。女の怨めし気な表情は
堪
(
たま
)
らなく彼を嬉しがらせた。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
▼ もっと見る
「一箇月でも二箇月でも、お気に召したら、一箇年もいらしてくださいまし、こんなお婆さんのお
対手
(
あいて
)
じゃお困りでございましょうが」
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その時分は、私は清月にゆかずに、すぐお宮のいる家にいって、主婦やお清を
対手
(
あいて
)
にしながら話し込むことがめずらしくなかった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「いかに、たしなみのない腕にせよ、
対手
(
あいて
)
が多勢にせよ、武士が町人どもの手込めにあって、この
態
(
ざま
)
とは、吾ながら浅ましい……」
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
渡辺刑事は、口を結んで黙っている下
顋
(
あご
)
の張った同僚の横顔をチラリと見て軽く舌打をしたが、然し
対手
(
あいて
)
の気を引き立てるように言った。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
甘美な媚態云々というのには、「紫野ゆき標野ゆき」と
対手
(
あいて
)
の行動をこまかく云い現して、語を繰返しているところにもあらわれている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
対手
(
あいて
)
にするは下女のお
竹
(
たけ
)
、これも中川の家に奉公するお蔭にて自ら料理の趣味を覚え「お嬢様、今日はどういう御馳走をお
拵
(
こしら
)
え遊ばします」
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
この後も何ぞにつけ相談
対手
(
あいて
)
にもなれようと思って、それで私はそう言って見たんだが……どうだね、私たちの仲人じゃ気に入らないかね?
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
敢
(
あ
)
えなき
最期
(
さいご
)
、弱る心を
励
(
はげ
)
まして、私は小供
対手
(
あいて
)
にやはり紙屑拾いをばその日の
業
(
わざ
)
となしたりしに、
天道
(
てんどう
)
さまも聞えませぬ、貧乏こそすれ
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
次第に
掻口説
(
かきくど
)
くような調子を帯びた。お倉の癖で、枝に枝がさして、
終
(
しまい
)
には肝心の言おうとすることが
対手
(
あいて
)
に分らないほど
混雑
(
こんがら
)
かって来た。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
子供は変なところで
対手
(
あいて
)
の直情に面してしまうものだから、対手を職業や、その折の境遇で見直したり見違えたりはしない。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
対手
(
あいて
)
もおかしかったと見えて、まだげらげら笑いながら、やっとな、柵の上から地響きたてて、ずしんとばかり下りて来た。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
そして都甲太兵衛は
対手
(
あいて
)
を知っていたからである。もし次のそう云う場合にも彼は矢張り尻から入るかと云ったら、恐らく愚問だと笑うだろう。
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
内地である女郎屋へあがった時、俺の
対手
(
あいて
)
に出た
妓
(
おんな
)
は馬鹿に醜かった。俺はヤケを起してその女に床をつけなかった。と、ヤリテ婆が出て来て
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
そは
対手
(
あいて
)
の馬を打ちたるに非ず、己が馬に鞭ちて促進せるなり。かくの如く国民間にも
鞭韃
(
べんたつ
)
の必要あり。吾人の海軍は将来
益々
(
ますます
)
強からしむべし。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
どんなひとだか会って見ようという心ではなく、もっと
対手
(
あいて
)
に信頼を抱いている素朴な感情から伸子はゴーリキイに会ってみたい心持になった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
時田は起ち上がって火鉢のそばへ来て、『ふうン』とはなはだ気のない返事をして聞いている、これはこの人の癖だから
対手
(
あいて
)
はなんとも感じない。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
プログラムはそっと
対手
(
あいて
)
の男の手に渡された。男はちょっと顔を近寄せて、すかすようにしてそれを読んでから、同じように万年筆をとりだした。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
対手
(
あいて
)
が高名の貴婦人だけにその
書翰
(
しょかん
)
を十襲して「書くにだに手や触れけんと思うにぞ」と少々神経病気味になって居る。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
わしの仕事なぞは貧乏人の子供
対手
(
あいて
)
だ。これでずいぶん
丹精
(
たんせい
)
はして造る。こんなあほらしいような
絵草紙
(
えぞうし
)
一枚だって見かけよりゃ骨を折っとるんだ。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
こんな風で一体に強情ではあるが、一度議論に負けたとなると思い切りは非常に好い、すぐ
対手
(
あいて
)
のいう通りにする。
国民性の問題
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
風の便りに聞けば、何とやら云う日本人が、つい一二年前北の方の海で
露西亜
(
ロシア
)
人を
対手
(
あいて
)
に、海賊を働いて、刑務所につながれたということではないか。
白髪鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
殊に、一歩後へ引けばその一歩がすぐに、
対手
(
あいて
)
のつけ目になつて、ずん/\無遠慮にふみ込んで来られるのには、どうにも我慢のならない事があつた。
乞食の名誉
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
雪之丞は、まじまじと、
呆
(
あき
)
れたように
対手
(
あいて
)
を見詰めたが、だしぬけに、からからと、ひどく朗らかに笑って見せた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
女に女が
対手
(
あいて
)
になる時には、無意識に自分を対手に比較するもので、まづ
縹緻
(
きりょう
)
の好し悪し愛嬌の有無、
著物
(
きもの
)
の品質を調べて、まだ得心がいかない時には
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
これに対座している主人は
痩形
(
やせがた
)
小づくりというほどでも無いが
対手
(
あいて
)
が対手だけに、まだ
幅
(
はば
)
が足らぬように見える。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これらの
対手
(
あいて
)
の中でもパンと昆布とがまず大将でした。はじめの四年は毎日毎日借りばかり次の五年でそれを払いおしまいの三ヶ月でお金がたまりました。
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
二人が侍女を
対手
(
あいて
)
に酒を呑み出して居るところへ「
蠅翼
(
ようよく
)
の芸人」が入って来た。半身から上が裸体で筋肉を自慢に見せて居る壮漢が薄手の
斧
(
おの
)
を提げて来た。
荘子
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
対手
(
あいて
)
が君であつたのが運の尽きざるところなのだ。旧友の僕等の難を
拯
(
すく
)
ふと思つて、一つ頼を聴いてくれ給へ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
相手の運命と自己の運命とが触れるのではなく
対手
(
あいて
)
を「物」とし「財」として生じたるエクスタシイである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
己
(
おれ
)
が考えじゃア関取は
怜悧
(
りこう
)
だから、
対手
(
あいて
)
は
剣術者遣
(
けんじゅつつかい
)
で危ねえから怪我アしても詰らねえ、関取が手間取っているうち、法恩寺村場所へ人を遣ったろうと思う
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「一体、
彼奴
(
きゃつ
)
らは、どこの国と戦うつもりなのですかね。本当に、われわれを
対手
(
あいて
)
にするつもりですかね」
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
どんなのでも、懸ったら最後、逃しっこ無しというが、
真
(
ほん
)
の釣だろう。それを、中途で逸らすようでは、岡っ張で、だぼ
沙魚
(
はぜ
)
を
対手
(
あいて
)
にしてる連中と、違い無いさ。
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
小さい声で『此処に寝て居る人達はどういふ人達ですか?』と頭を
対手
(
あいて
)
の頭にすれ/″\にして聞くと
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
夫は、
対手
(
あいて
)
が人格的に、
若
(
も
)
しくは学問的に、また道徳的に、自分に優越して居る為に受くる圧迫とは、全く違って居る。考えて見れば下らない事かも知れなかった。
大島が出来る話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それらの若い店のものを
対手
(
あいて
)
に、
売揚
(
うりあ
)
げをつけたり、商いをしたりすることが、長いあいだ気むずかしい隠居のお守りに、気を腐らしていたお芳には物珍しかった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
つまり、ここの僅かの交際で、貴婦人はお雪ちゃんを、相当話せる
対手
(
あいて
)
と認めたればこそに相違ない。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから宿主にいいつけて一番よい酒を沢山に買うて私もその
対手
(
あいて
)
をして、もとより酒は一滴も飲まんのですがなるべく飲んだようなそうして酔うたような風をして
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
企らみがあったら、ピカリと光るわ。江戸御免の眉間傷
対手
(
あいて
)
に
治右
(
じえ
)
ごとき何するものぞよ。あとで菊路とおいちゃいちゃ遊ばしませい。わッははは。六日待たすとはしびれを
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「私はお二人とも同じほど好きよ。同じようにお附合させて頂くわ。けれど、もし、それがいけなかったら、あなた方、お二人で勝手にわたしの
対手
(
あいて
)
をおきめなさいよ……ね」
空飛ぶ悪魔:――機上から投下された手記――
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
対手
(
あいて
)
はその途端くるっと後をむいて倒れたらしかった。自分は直ぐに逃げ出したのである。
小さき良心:断片
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
徐
(
おもむろ
)
に某国代表の御意見は
御尤
(
ごもっと
)
もであるが、しかし他方にはまたこういうこともあるから、御再考を願いたいというような、婉曲に
対手
(
あいて
)
の感情を害せぬように
叮嚀
(
ていねい
)
に争うのである。
国際聯盟とは如何なものか
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
主水は高野を下山して、紀州家をたよって身を寄せた、加藤家と高野山の争いもそうであったが、紀州家を
対手
(
あいて
)
として、争いを起そうと決心した加藤家は、
凄惨
(
せいさん
)
な覚悟を据えた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
これこそわれから死を求むる、
火取虫
(
ひとりむし
)
より
愚
(
おろか
)
なる
業
(
わざ
)
なれ。
殊
(
こと
)
に
対手
(
あいて
)
は年経し大虎、其方は犬の事なれば、
縦令
(
たと
)
ひ
怎麼
(
いか
)
なる力ありとも、尋常に
噬
(
か
)
み合ふては、彼に
勝
(
かた
)
んこといと難し。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
真によく
対手
(
あいて
)
に
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
んでもらうためには、対手が自分の親友
知己
(
ちき
)
であり、自分の心持ちや性格やを、充分によく知っているものでない限り百万言を費して
無駄
(
むだ
)
になる場合が多い。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
父のいわゆる何とかいう
氏族
(
うじぞく
)
の
末裔
(
まつえい
)
に当るということを
対手
(
あいて
)
にわからせようと努めた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
“対手”の意味
《名詞》
相手。
(出典:Wiktionary)
対
常用漢字
小3
部首:⼨
7画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“対手”で始まる語句
対手方
対手仕
対手舟