まる)” の例文
したるとおどろほどくびながくなつてて、まるでそれは、はる眼下がんかよこたはれる深緑しんりよくうみからくきのやうにえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
田圃たんぼみづうみにならぬが不思議ふしぎで、どう/\とになつて、前途ゆくてに一むらやぶえる、それさかひにしておよそ二ちやうばかりのあひだまるかはぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何でもないそのことばが皆の耳にはまるで音楽のやうに聞えたので、居合はせた人達は惚々ほれ/″\した眼つきで女の口元を見た。
まるで穴の底から反響してくるとでも云ひたい、陰氣な餘韻を殘して行く数へ聲に引き寄せられて、二、三、四、五‥‥‥と口の中で追ひ續けてゐたのだつた。
疑惑 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ね、こういう黒っぽいたて縞の浴衣なら、まるでカムフラージされたと同様だから少々の光線で識別がつかんよ、まして「白服だ」と思いこんでるんだからね。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
まる女護によごの島だね。僕も是非一度行きたいな。』と、小池はもうお光の言葉を疑ふことは出來なかつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
イヤ私が此の家へ雇われぬ先の事ゆえ自分で見た訳ではありませんが人の話に拠ると背もすらりとしてまるで令嬢の様で有ったので、村の若衆からも大騒ぎをせられ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まる子不語しふご今古奇観こんこきかんにでもりさうな怪談だ。余り馬鹿々々しいので、探険の勇気もとみせた。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
どか/\下りる奴らは忽ちに御用/\と造作もなく縛られましたが、多勢おおぜいですから一人ずつは縛られない、五六人ぐらいずつ首っ玉をくゝして、まるで酒屋の御用が空徳利あきどくりを縛るようで
半町はんちやうばかりくと、みちきふたかくなつて、のぼりがいつしよよこからえた、弓形ゆみなりまるつち勅使橋ちよくしばしがかゝつてるやうな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まる咽喉のどほねでもつかへてゐるやうだ』とつてグリフォンは、其背中そのせなかゆすつたりいたりしはじめました。つひ海龜うみがめこゑなほりましたが、なみだほゝつたはつて——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此時まで藻西太郎の女房は気絶でも仕たかと思わるゝほど静で、腕椅子に沈込んだまゝ一言も発せずに居ましたが吾々が藻西を引立ようとするとまるで女獅々の狂う様に飛立て戸の前に立塞がり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その星明ほしあかりで庭の景色もおぼろに見える、昼はのみとも思わなかったが、今見ると実に驚くばかりの広い庭で、植込うえこみの立木はまるで小さな森のように黒く繁茂しげっているが、今夜はそよとの風も吹かず
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
の辺は皆垣が石のような処で、其処そこ切穿きりほりまして穴蔵ような物が山の半腹はんぷくにありまして、まる倉庫くらの様になって居りますから、縁側を伝わって段々手索てさぐりでくと、六畳ばかりの座敷がありまして
此頃このごろからだがだるいとえておなまけさんになんなすつたよ、いゝえまるおろかなのではございません、なんでもちやんと心得こゝろえります。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うもへるさ』と福鼠ふくねずみ附言つけたしました、まる寢言ねごとでもふやうに、『「わたしねむつて呼吸いきをしてる」とつても、「わたし呼吸いきをしてるねむつてゐる」とつてもおなじことだ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
まるで身体の大きい赤坊です、声を放ッて泣て居ます目「れ行て見よう、だがおれの逢て居る間、外で物音をさせてはいけないよ」と注意を与え目科は先ず抜足して牢の所に寄りひそかに内を窺い見る
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
まるで醒めながら夢でも見る有様で何事も移らぬのである。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)