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ふりがな文庫
“
娯
(
たの
)” の例文
残暑の日盛り蔵書を曝すのと、風のない
初冬
(
はつふゆ
)
の
午後
(
ひるすぎ
)
庭の落葉を
焚
(
た
)
く事とは、わたくしが独居の生涯の最も
娯
(
たの
)
しみとしている処である。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そしてロチスターさんは、さうされるのが大層好きらしく、またその惠まれた
娯
(
たの
)
しみを感謝してる樣子だつた。これは見られたかな?
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
数
(
かぞ
)
ふる道楽のうちで、殿様は一番変り種の小鳥や
獣
(
けもの
)
が好きで、自分の力で手に入れる事が出来る限り、いろんな物を飼つて
娯
(
たの
)
しんでゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
いはんや、ねころんで
娯
(
たの
)
しみながら読んで役に立つといふやうな巧妙な読み物としての学術書、手引書などは殆ど見当らない。
娯楽奉仕の心構へ:――酔つてクダまく職人が心構へを説くこと――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
つんと答えずに、朱実は
起
(
た
)
った。——そして三味線をかかえると、客を
娯
(
たの
)
しませようとするよりは、自分ひとりの思い出でも娯しむように
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
大きい方の姪はまだ戻って来なかったが、彼が土産の品を取出すと、「まあ、こんなものを買うとき、やっぱし、あなたも
娯
(
たの
)
しいのでしょう」
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
病友はこれ等を
娯
(
たの
)
しみ終りまだ薬の気が切れずに上機嫌の続く場合に、鼈四郎を遊び相手に
労
(
わずらわ
)
すのにはさすがの鼈四郎も、病友が憎くなった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「わかくさも古草もまじつてゐて、
娯
(
たの
)
しい時を思はせてゐる」と言うた表現が、更に文学的に展開した構想の痕が見える。
古代民謡の研究:その外輪に沿うて
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
だがその夢ましい展望に、詩人的な感慨を
娯
(
たの
)
しんでいられる彼ではない。マッチを摺って腕時計にかざす。七時十二分。
扉は語らず:(又は二直線の延長に就て)
(新字新仮名)
/
小舟勝二
(著)
稽古を積めば積むほど
娯
(
たの
)
しみが深くなってゆきまして、
大業
(
おおぎょう
)
に申せば、私どもの生活のすぐれた
糧
(
かて
)
となって居ります。
無表情の表情
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
けい 何時、何処が戦争でごった返しになるかわからない中国にいて、女や子供だけで、のうのうと旦那様の留守を
娯
(
たの
)
しんでなどいられるのですか。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
先生はこの手紙が自己の空想の上に、自己の霊の上に、自然に強大に感作するのを見て、独り自ら
娯
(
たの
)
しんでいる。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
如何に
婢僕
(
ひぼく
)
にかしずかれて快い安逸を
娯
(
たの
)
しむか。如何に数多の女共によって天国の楽しみを味わうか。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一生の運の定まる時と心附いたのか?
抑
(
そもそも
)
また狂い出す
妄想
(
ぼうそう
)
につれられて、我知らず心を華やかな、
娯
(
たの
)
しい未来へ走らし、望みを事実にし、
現
(
うつつ
)
に夢を見て、嬉しく
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
あの
一味放縦
(
いちみほうじゅう
)
な
陶酔境
(
とうすいきょう
)
といったものは、彼にとって、ちょっと金で買えない
娯
(
たの
)
しみであったのだ。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
盗賊悪人も我妻子という事もなし。男女もし婬慾を起すも相見て語らず。女が男に随って行き園中で二、三日から七日続けて相
娯
(
たの
)
しみ、事済まば随意に別れ去って相属せず。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
眼を
娯
(
たの
)
しますものもないから、
欄
(
らん
)
に
倚
(
よ
)
りかゝって、前の二階の客が煙草を喫ったり、話しをしていたり、やはり、つくねんとして
此方
(
こっち
)
を見ているのを見る他、眼をどうしても
渋温泉の秋
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
我もし兎も角もならん跡には、心に懸かるは只〻少將が身の上、元來孱弱の性質、加ふるに
幼
(
をさなき
)
より
詩歌
(
しいか
)
數寄の道に心を寄せ、管絃舞樂の
娯
(
たの
)
しみの外には、弓矢の譽あるを知らず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
ずっと以前は遊びというものは
娯
(
たの
)
しむものでした、お商人衆は商売を忘れ、お武家がたはお勤めの肩の凝りをとるためにそれこそ
裃
(
かみしも
)
をぬいで、馬鹿になってお娯しみなすったものです
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其の芸術を
娯
(
たの
)
しむ事の出来る自由な精神を持っている民衆を。容赦のない労働や貧窮に蹂みにじられないひまのある民衆を。有らゆる迷信や、右党若しくは左党の狂信に惑わされない民衆を。
新しき世界の為めの新しき芸術
(新字新仮名)
/
大杉栄
(著)
月見なり、花見なり、音楽舞踏なり、そのほか総て世の中の妨げとならざる
娯
(
たの
)
しみ事は、いずれも皆心身の活力を引立つるために甚だ緊要のものなれば、仕事の
暇
(
いとま
)
あらば折を以て求むべきことなり。
家庭習慣の教えを論ず
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
しかしそう思いつつも彼を見ると私の目は
娯
(
たの
)
しんだ。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
女はそれを拾い読みに読んでは
娯
(
たの
)
しんでいる。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
妻「へえ、此の内儀さんと一緒に銭屋へ逗留していて、へえ、そうとも知らねえで、
家
(
うち
)
じゃア案じていたのに、銭屋へ泊って
此様
(
こん
)
な美くしい内儀さんと五日も逗留して
娯
(
たの
)
しんでいたんでがんすか、
良人
(
あんた
)
マア
幾歳
(
いくつ
)
になるだか」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私はまた、庭の高い
忍返
(
しのびがへ
)
しのある塀の向うには、地平線より外に遮るものもない、大きな
悦
(
よろこ
)
びや
娯
(
たの
)
しみがあることを發見した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
船は荷積をするため二日二晩
碇泊
(
ていはく
)
しているので、そのあいだに、わたくしは一人で京都大阪の名所を見歩き、生れて初めての旅行を
娯
(
たの
)
しんだ。
十九の秋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「お蔭で
創
(
きず
)
が
癒
(
なほ
)
つてからは、人間も一段と悧巧になり、
従来
(
これまで
)
のやうに
鬱々
(
くさ/\
)
しないで、その日その日を
娯
(
たの
)
しむやうになつた。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
実をいえば、幼少の頃、於福の父の茶わん屋に奉公中から、かの地に長くいた捨次郎と申すものから、そうした話を聞くのが
娯
(
たの
)
しみのひとつでした。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
娯
(
たの
)
しみを失いきった語部の古婆は、もう飯を喰べても、味は失うてしまった。水を飲んでも、口をついて、独り語りが
囈語
(
うわごと
)
のように出るばかりになった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
夏の終り頃、彼は一人で山の宿へ二三泊の旅をしたが、殆ど何一つ目も心も
娯
(
たの
)
しますもののないのに驚いた。山の湖水の桟橋に遊覧用のモーター・ボートが着く。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
昔
瓶沙王
(
びょうしゃおう
)
登極
(
とうきょく
)
の初め、諸
采女
(
うねめ
)
とこの園に入り楽しまんとせしに、一同自ら
覚
(
さと
)
りて婬欲なく戯楽を
娯
(
たの
)
しまず、その時王もし仏が我国に出たら我れこの勝地を仏に献ずべしと
発願
(
ほつがん
)
し
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それが終ると、彼はかねて探って置いた、由蔵の秘密の
娯
(
たの
)
しみ場所たる、女湯の天井の仕掛のある
節穴
(
ふしあな
)
の処へ来て、由蔵が設置した望遠鏡の代りに、持って来た撮影機を据えつけた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
環虫類も何だか虫の中では
醜
(
みにく
)
い
衰亡者
(
すいぼうしゃ
)
のように思えるし、鰻だとて、やはり時代文化に取り残されたような魚ではないか。衰亡の人間が衰亡の虫を
囮
(
おとり
)
につかって衰亡の魚を
捉
(
とら
)
えて
娯
(
たの
)
しみにする。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
両人
(
ふたり
)
の話している所を聞けば、何か、
談話
(
はなし
)
の筋の外に、男女交際、婦人
矯風
(
きょうふう
)
の議論よりは、
遥
(
はるか
)
に
優
(
まさ
)
りて面白い所が有ッて、それを
眼顔
(
めかお
)
で話合ッて
娯
(
たの
)
しんでいるらしいが、お勢にはさっぱり解らん。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼は
娯
(
たの
)
しい夢をいだきはじめた、その舟をうまく利用してみっちり貯めたうえもう一
艘
(
そう
)
買う、それからもう一艘、——機械船が三ばいもあれば立派な船宿がやれる、そうなったら自分は船宿の
主人
(
あるじ
)
で
お繁
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
西八條の
屋方
(
やかた
)
に花見の
宴
(
うたげ
)
ありし時、人の
勸
(
すゝ
)
めに
默
(
もだ
)
し難く、舞ひ終る一曲の春鶯囀に、
數
(
かず
)
ならぬ身の
端
(
はし
)
なくも人に知らるゝ身となりては、
御室
(
おむろ
)
の
郷
(
さと
)
に靜けき
春秋
(
はるあき
)
を
娯
(
たの
)
しみし身の
心
(
こゝろ
)
惑
(
まど
)
はるゝ事のみ多かり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「私はかういふ艶つぽい場所が好きだ。芝居、ダンス、活動、待合。総じて人だまりと女のゐる場所はみんないいね。一晩に一場所づつ、粋な場所で遊んでくらして、それからゆつくり寝るのさ。ほかに
娯
(
たの
)
しみもないのでね」
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
わたくしは
齠齔
(
ちょうしん
)
のころ、その時代の習慣によって、
夙
(
はや
)
く既に『大学』の
素読
(
そどく
)
を教えられた。成人の後は儒者の文と詩とを
誦
(
しょう
)
することを
娯
(
たの
)
しみとなした。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何といふ結構な道徳であらう、女は
陶器皿
(
せとざら
)
と一緒で、同じ事なら大事に取扱つた方がよいのだ。——蜂は
閑
(
ひま
)
さへあれば女王の顔を見て
娯
(
たの
)
しんでゐるさうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
生きているうちに感じられるもの、味わえるもの、
娯
(
たの
)
しめるもの、たとえば、今の一瞬でも、あるがままに、在るところに、娯しむのに何の不自然——何の不徳。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
燈火管制の下で、明日をも知れない脅威のなかで、これは
飯事遊
(
ままごとあそび
)
のように
娯
(
たの
)
しい一ときであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
侯その女に何故さように泣き叫ぶかと問うと、女
対
(
こた
)
えて「わが君よ、君ほどの勇将がギリシアの男子が君に抵抗し能わざるに乗じ、か弱き女人と戦うて
娯
(
たの
)
しまんとするを妾は怪しむ」
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「ロチスターさんはお客さま方と一緒にゐて、
娯
(
たの
)
しむ權利がおありです。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
見ることが、ああ、せめてもの
娯
(
たの
)
しみだ。
吠
(
ほ
)
えろ、
喚
(
わめ
)
け、竹花中尉!
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けれども翁は深く悲しむ様子もなく、閑散の生涯を利用して、震災後
市井
(
しせい
)
の風俗を観察して自ら
娯
(
たの
)
しみとしていた。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(
娯
(
たの
)
しめ、娯しめ、今だけでなく、永くこの人生を。——二度とは生れ難い人間と生れて、勿体ないぞ)
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だが、それはそれとして、妻も「衣裳戸棚」の旅の話を知っていた。あのような奇怪な絶望のはての
娯
(
たの
)
しい旅へ出られたら、——それはこの頃二人に共通する夢でもあった。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
倹約
(
しまつ
)
な京都人は、
他
(
ひと
)
の
描
(
か
)
いてくれたものを、自分で
観
(
み
)
て
娯
(
たの
)
しむやうな贅沢な事はしない。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
只
(
ただ
)
には置かず
揚代
(
あげだい
)
請求の訴を法廷へ持ち出すと、ボッコリス王、ともかくもその男にトが欲するだけの金を鉢に数え入れ、トの眼前で振り廻さしめ、十分その金を見て
娯
(
たの
)
しめよとトに命じた。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
わたしの新しき女を見て
纔
(
わずか
)
に興を催し得たのは、自家の
辛辣
(
しんらつ
)
なる観察を
娯
(
たの
)
しむに
止
(
とどま
)
って、到底その上に出づるものではない。内心より同情を催す事は不可能であった。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
娯
常用漢字
中学
部首:⼥
10画
“娯”を含む語句
娯楽
娯樂
娯楽会
娯楽場
娯楽室
娯楽機関
娯楽街
娯楽遊戯
御娯
手娯
清娯
自娯集
遊娯