大名だいみょう)” の例文
「いったい、税金って何に使うか知ってる?」と十五歳の姪に尋ねると、「ほら、大名だいみょう旅行ってあるじゃない、あんなのじゃないの」
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
就中なかんずく疱瘡は津々浦々まで種痘が行われる今日では到底想像しかねるほど猛列に流行し、大名だいみょう高家こうけおろか将軍家の大奥までをも犯した。
九州きゅうしゅう総追捕使そうついほしというのは、九州きゅうしゅう総督そうとくという意味いみなのです。するとほか大名だいみょうたちは、これも半分はんぶんはこわいし、半分はんぶんはいまいましがって
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おれの親方のった矢の根は、南蛮鉄なんばんてつでも射抜いぬいてしまうってんで、ほうぼうの大名だいみょうから何万ていう仕事がきているんだ。おれはそこの秘蔵ひぞう弟子だ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徳川三〇〇年の幕府ばくふが倒れて多くの大名だいみょうが、それぞれ国境を撤廃てっぱいしてめいめいが持っていたさむらいすなわち、軍隊をやめ
私の思い出 (新字新仮名) / 柳原白蓮(著)
このあかりじゃはっきり見分みわけがつくめえが、よくねえ。お大名だいみょうのお姫様ひめさまつめだって、これほどつやはあるめえからの
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「大殿様は鰯をご存じなかったのでございます。大大名だいみょうはこうありたいものだと思いました。ところで若様」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今日の社会は大かた今僕が話したような状態ありさまで、ちょうどまた新しい昔の大名だいみょうが出来たようなものだ。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
ちょうどそのころ、中津なかつ家老かろう大名だいみょう小名しょうみょうのけらいのちょう)の奥平壱岐おくだいらいきというわかいさむらいが、砲術ほうじゅつ研究けんきゅうのためにやってきて、ここにとまっていたからです。
四月、燕兵大名だいみょうす。王、斉泰せいたい黄子澄こうしちょうとのしりぞけらるゝを聞き、書をたてまつりて、呉傑ごけつ盛庸せいよう平安へいあんの衆を召還せられんことをい、しからずんば兵をあたわざるを言う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「京お召でございます、あいに茶の大名だいみょうあわせ更紗染さらさぞめ縮緬ちりめんの下着と二枚重ね……」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
狂言「入間川いるまがわ」に、入間言葉のさかさまごとの滑稽から、自分で川の深みにはまり込んだ大名だいみょうが、「諸侍しょざむらい」に欲しくも無い水をくれた程に、「成敗せいばいするぞ」と大威張りに威張ったところがある。
そして意外にも、わずかに二歳であった保さんが、父に「武鑑」をもらってもてあそんだということを聞いた。それは出雲寺板いずもじばんの「大名だいみょう武鑑」で、鹵簿ろぼの道具類に彩色を施したものであったそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夫人はもと桐生家と同格の大名だいみょうである池鯉鮒信濃守ちりうしなののかみの息女である。
夕立ゆうだちにどの大名だいみょうか一しぼり
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すると為朝ためともしたがえられた大名だいみょうたちは、うわべは降参こうさんしたていせかけながら、はらの中ではくやしくってくやしくってなりませんでした。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
彼もいわゆる詩歌管絃かんげん式な大名だいみょうの子ではありませんから、たとえ御指南番仕込みの剣法といえ、まあ武芸といえる程度のことくらいは心得ています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うえはお大名だいみょうのお姫様ひめさまから、したはしした乞食こじきまで、十五から三十までのおんなのつくおんなかみは、ひとすじのこらずはいってるんだぜ。——どうだまつつぁん。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
正三君のところはおじいさんの代まで花岡伯爵はなおかはくしゃく家来けらいだった。もっともそのころは伯爵でない。お大名だいみょうだから、お殿様だった。いまでは伯爵のことをお殿様とよんでいる。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まるで、大名だいみょう東海道とうかいどうをとおって、宿屋やどやにとまるときとおなじような用意よういをしたわけでした。
かくて源頼朝が大成功をして、遂に天下の権を掌握することになりますと、その下に付いていた家人けにん、すなわち大宝令の制度から申さば賤民であるべき筈の者どもが、立派な大名だいみょうになってしまった。
駄目だめッてことよ。橘屋たちばなや若旦那わかだんなは、たとえお大名だいみょうから拝領はいりょう鎧兜よろいかぶとってッたって、かねァ貸しちゃァくれめえよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やわらかいぞやわらかいぞ、お大名だいみょう寝床ねどこだって、こんなに上等じょうとうじゃああるまいなあ、などとまきをとかれた山羊やぎみたいに、ワザとごろごろころがってみた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国々くにぐに方々ほうぼうめぐりあるいて、為朝ためともはとうとう九州きゅうしゅうわたりました。その時分じぶん九州きゅうしゅうのうちには、たくさんの大名だいみょうがあって、めいめいくにりにしていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「古来山に宿るものは山賊やまがつ山伏やまぶしたぐいにかぎります。豊臣秀吉公や徳川家康公が富士登山をしたという史実がございますか? 大名だいみょう狩座かりくらのほかに山野を跋渉ばっしょういたしません」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ばかをいえ、大名だいみょうの土蔵をかき廻したって、古渡りで、しかもウブなこんな珊瑚が生地きじのままであるなんていうことはない。何しろ、いい物が手にったよ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長袖の大名だいみょうそだちに似合わない、その無二無三流な意気だけは、愛すべきものであるやもしれません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふらちなやつだ。さてはきさまは、どこかの大名だいみょうの手先になって、諸国をうかがう、間諜いぬだな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柳生の大名だいみょう剣法とちがって、殺伐なる実戦的鍛錬を、ここでは目標としているからでもある。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身の安住を求めながら心の安住も求めてついに仏門に辿たどりついたのだが、熊谷殿などは、俺とは比較にならぬほどの武功もあり、時めく鎌倉の幕臣として、これから大名だいみょう暮しもできる身を、どうして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)